Molecular Cell Biology

Molecular Cell Biology · 49

G1期における細胞周期の調節、S期への移行

Regulation of the cell cycle in the G1 phase, transition to S phase

応用トピック
癌治療の原則化学療法の基礎同時化学放射線療法の基礎

🧠 細胞周期は「サイクリンという期間限定の鍵」が「Cdkという錠」に挿さることで初めて回るシステムであり、の物語は「pRbという門番をどうやって外すか」に尽きる。 Cdk4,6-複合体がpRbをリン酸化すると、これに縛られていたE2F転写因子が解放されS期遺伝子群を起動する——この「」を越えた瞬間、細胞はもう後戻りできず必ず分裂へ向かう。そして「阻害は常に」という原則が、CKIやWee1によるリン酸化がどれだけ活性化シグナルが強くても最終的に勝つことを保証している。

細胞周期の4相

真核生物の細胞周期は4つの明確な相からなる:G1・S・G2(まとめて、interphaseと呼ばれる)とM相(有糸分裂と)。周期全体の所要時間は約24時間であり、そのうち有糸分裂は約1時間を占める。

内容
成長期——転写の再プログラミング+活発なタンパク質合成、複製に向けた準備
S期 DNA合成——23対の染色体の倍加
G2期 DNAが完全に倍加し細胞が十分な大きさになるまで有糸分裂を制限する
2つの重要な出来事からなる——(1) 有糸分裂=核の分裂 (2) =細胞質の分裂、2つの娘細胞を形成する
G0期 ——が起こらない。この相から細胞は再び周期に入ることも、周期から離脱したままでいることもできる

チェックポイント

は、細胞が周期の進行を監視・調節するために用いる仕組みである。は損傷DNAの複製と、有糸分裂への早すぎる進入(あるいは退出)を防ぎ、DNA損傷が生じた場合には修復のための時間を与える。

は通常、細胞が各段階を通過する様子を監視・指示する調節タンパク質のネットワークからなる。

  1. 細胞周期を継続するか否かを決定する。「分裂促進刺激は十分に強いか?」
  2. G1/S移行期: 環境が好適か、DNA複製を開始する前に十分な栄養素があるかを確認する。「複製の準備はできているか?」
  3. G2/M移行期: 複製が完了しているか、有糸分裂に入るのに十分な大きさかを確認する
  4. 中期と後期の間に生じる。有糸分裂が形成され(に微小管が結合し)、全ての染色体が正しく結合しているかを、後期で2つの娘細胞へ分離する前に確認する

細胞周期制御系:サイクリンとCdk

  • 細胞周期制御系は、DNA複製・有糸分裂・を開始/調節するタンパク質を活性化・不活性化することで細胞周期を調節する——これらのタンパク質のリン酸化・により行われる
  • 細胞周期の異なるは、サイクリンと呼ばれるタンパク質によって細胞周期の異なる時期に活性化される→そのためこれらのキナーゼはとして知られる
  • サイクリンはCdkに結合し、それらが細胞周期のうち自身のに存在する間のみ活性化する。他の細胞周期では存在しない→異なるCdk-サイクリン複合体が細胞周期の異なるを引き起こす
相/移行期 キナーゼ サイクリン 主な機能
G1 Cdk4,6 分裂促進刺激に応じたpRbの進行的リン酸化——を通過するまで
G1/S Cdk2 サイクリンE pRbのリン酸化(正のフィードバック)、p27^KIP1のリン酸化を介したSPFの活性化
S Cdk2 サイクリンA SPF:DNA複製の開始・維持、前の特定成分のリン酸化
G2/M, M Cdk1 サイクリンB MPF:中期まで有糸分裂を指揮、・ヒストン・ラミン・微小管タンパク質・GM130のリン酸化、最終的にAPCの活性化
全相 Cdk7 サイクリンH CAK:一般的なCdk活性化キナーゼ

Cdk活性の決定因子

活性化:

  • サイクリンがCdkに結合すると、活性化補因子として働き、酵素の特異性にも影響する
  • Cdk上の残基のリン酸化もCdk活性に必要である。このリン酸化はCAK(Cdk活性化キナーゼ)により媒介される

阻害:

  • CKI(Cdk阻害タンパク質)の結合はCdk-サイクリン複合体を不活性化する
  • Cdk上の残基の阻害性リン酸化も生じる。このリン酸化はWee1キナーゼが媒介し、Cdc25がホスファターゼとしてCdkをする→阻害性を除去する

⚠️ 阻害は常に どれだけ活性化シグナルが強くても、CKIの結合やWee1による阻害性リン酸化があればCdk-サイクリン複合体は不活性のままである——これは細胞周期が「安全側に倒れる」よう設計されていることを意味する。

CKI(阻害因子)のファミリー:

ファミリー CKI 標的
CIP/KIP p21^CIP1/WAF1、p27^KIP1、p57^KIP2 Cdk4,6-(G1)、Cdk2-サイクリンE(G1/S)、Cdk2-サイクリンA(S)、Cdk1-サイクリンB(G2/M)
INK4 p16^INK4a、p15^INK4b、p18^INK4c、p19^INK4d Cdk4,6-(G1)

細胞周期の主要ステップとその調節

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>成長因子</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitogen'>マイトジェン</span>)が受容体に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='signal transduction pathway'>シグナル伝達経路</span>が始動(MAPキナーゼカスケード)"]
  B --> C["G1サイクリン・Cdkが誘導され細胞が成長"]
  C --> D["G1 Cdk-サイクリン複合体がCKIを克服(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restriction point'>制限点</span>)"]
  D --> E["pRbのリン酸化→E2F解放→S期遺伝子誘導"]
  E --> F["G1 CdkがS期CKI(p27)を不活性化→SPF解放"]
  F --> G["SPFが前<span class='jp-term jp-term-diagram' title='replication complex'>複製複合体</span>を活性化→DNA倍加開始"]
  1. )が受容体に結合する
    • は細胞の成長・増殖を刺激する細胞外シグナルである
    • 存在しない場合、細胞はG1で停止し最終的にG0期に入る(一生そこに留まることもある)
  2. が始動する(MAPキナーゼカスケード、44-structure-and-function-of-tyrosine-kinase-receptors-the-erkl-erk2-map-kinase参照)
  3. G1サイクリンとCdkが誘導され、細胞が成長する
    • Cdk、、E2F↑
    • CKI(Cdk阻害タンパク質)↓
  4. G1 Cdk-サイクリン複合体がに達し、CKIを克服する()。複製に必要なタンパク質とS期サイクリンの誘導につながる
    • G1 Cdk(4,6)-複合体がE2F転写因子を活性化する
    • の間、E2FはpRb質)の結合により不活性に保たれている
    • G1 Cdk(4,6)がpRbをリン酸化すると、E2FとDP(TF)が解放され、S期のためのS期サイクリンを誘導できるようになる
    • E2Fにより転写される遺伝子には:ヌクレオチド・DNA合成酵素、複製タンパク質(ORC、MCM2-7、Cdc6、Cdt1、DNAポリメラーゼα、PCNA、)、周期のさらなる進行に関わるタンパク質(Cdk1、サイクリンA・E、Cdc25)、転写因子(B-Myb、c-myc、E2F)が含まれる
  5. G1 CdkがS期CKIを不活性化し、SPF(S期促進因子)が阻害から解放される(リン酸化されたCKIはされ分解される)
    • G1/S Cdk(2)-サイクリンE複合体は、S Cdk(2)-サイクリンA複合体のCKI(p27)をリン酸化でき、これによりp27がされ最終的に分解される
    • 結果として活性型のS Cdk(2)-サイクリンA複合体=S期促進因子が生じる
  6. SPFが(すでにDNAに結合している)前を活性化する
  7. DNAが倍加を開始する
  8. MPF(促進因子)は複製と細胞成長が完了するまで不活性のままである(続きは50-regulation-of-the-cell-cycle-in-the-g2-and-m-phases参照)

まとめ

  • 周期はG1・S・G2・M(+G0)からなり、(G1)・G1/S・G2/M・(M)という4つのにより進行が監視される。
  • 細胞周期はとサイクリンの組み合わせ(G1:Cdk4,6-、G1/S:Cdk2-サイクリンE、S:Cdk2-サイクリンA=SPF、G2/M:Cdk1-サイクリンB=MPF)により駆動され、CAKによる活性化リン酸化とCKI/Wee1による阻害性リン酸化のバランスで制御される(阻害が常に優位)。
  • 刺激→G1 Cdk-の誘導→pRbリン酸化によるE2F解放→S期遺伝子転写→SPF活性化→前の起動という一連の流れがG1からS期への移行を駆動する。