微生物学

微生物学 · 5/32

血清型別とファージ型別

Sero-typing and phage-typing

🧠 とは、同じ問い「この菌株はの中でもどのか」に、それぞれ「の違い」と「感染するファージの好みの違い」という別の切り口で答える手法である。 どちらものさらに一段階下、レベルの識別に用いる——5/29の検査室ワークフローでいう「型別」のステップに相当する。

血清型別

  • 血清型:特定の抗原セットによって区別される、近縁微生物の一群。
  • :血清型に基づいて微生物を分類する手法。
  • 細菌の型別:由来の異なる菌株を識別すること全般を指す概念。
  • 分類は()・()・(莢膜抗原)などのに基づく。
  • これにより、菌種・ウイルス・細胞をレベルまで分類できる。
  • 代表的な検出法は・。

💡 を体系化した代表例が、Salmonella属のKauffmann-Whiteスキームである。 (菌体)と(鞭毛、2つの位相をとる)の組み合わせで2,000種を超える血清型(serovar)に分類され、この抗原式の体系はKauffmann-Whiteスキームとしてパスツール研究所の協力センターが維持している1。血清型は種ではないため学名のように斜体にはせず語頭を大文字で書く(例:Salmonella Typhimurium)という特殊な規約を持つ——詳細はSalmonella属の回(2/9)を参照。

手法 原理 特徴 例
既知の抗体を用いて血清中の抗原を検出する 定性的診断(陽性/陰性) E. coliの(例:O157:H7)、
抗原を粒子上に固定する より高い視認性・感度 —

ファージ型別

  • 細菌に感染するウイルスを(略して“phage”)と呼び、その一部は単一の菌株にしか感染しない高い特異性を持つ。
  • この特異性を利用して、同一菌種内の異なる株を識別する。
flowchart TD
    A["対象株を寒天培地上に塗布し培養・乾燥させる"] --> B["シャーレの底面にグリッド線を引き<br>区画を作る"]
    B --> C["各区画に異なるファージを<br>1種類ずつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dribbling'>滴下</span>する"]
    C --> D["ファージ液を乾燥させたのち培養する"]
    D --> E{"各区画の結果は?"}
    E -->|"そのファージに感受性あり"| F["円形の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clearing'>溶菌斑</span>が出現<br>=菌が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>された"]
    E -->|"そのファージに感受性なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plaque (clear zone)'>溶菌斑</span>なし"]
    F --> H["感受性パターン(=ファージ型)から<br>株を識別する"]
    G --> H

⚠️ ・は、的な手法に置き換わりつつある。 米国のPulseNetは長年PFGE()による分子サブタイピングで食品由来を検出してきたが、全ゲノム(WGS)導入後はの検出件数が36%増加し、解決件数は3倍以上に増えた2。WGSは1回の解析で菌種・血清型・・の情報までまとめて得られるため、な血清凝集法やファージ感受性パターンによる型別を置き換えうる技術として位置づけられている。ただし・は設備を要さず迅速・安価であるため、資源の限られる現場では今も使われ続けている。

まとめ

  • ・はいずれもよりさらに下のレベルの識別手法である。
  • はO・H・などのの違いを、または(より高感度)で検出する。
  • は、株にしか感染しないへの感受性パターン(グリッド上のの有無)を利用して株を識別する。
  • どちらも検査室ワークフロー(5/29)における「型別」ステップに位置づけられる。

出典

  1. 1.Salmonella nomenclature(Journal of Clinical Microbiology・2000)Salmonella属の血清型(O抗原・H抗原の組み合わせ)は当時2,463型が知られ、その抗原式はKauffmann-Whiteスキームとしてパスツール研究所のWHO協力センターが維持していること、血清型は種ではないため学名の斜体にせず語頭を大文字で書く規約であることを確認した閲覧 2026-08-26
  2. 2.Next-generation sequencing technologies and their application to the study and control of bacterial infections(Clinical Microbiology and Infection・2018)米国のPulseNetサーベイランスは長年パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)による分子サブタイピングを用いてきたが、全ゲノムシークエンス(WGS)に基づくリアルタイムサーベイランス導入後、リステリア症のアウトブレイク検出件数は36%増加し解決件数は3倍以上に増えたこと、WGSは1回の解析で菌種・血清型・病原因子・薬剤耐性の情報をまとめて得られるため、伝統的な表現型に基づく型別(血清凝集法など)の作業を置き換えうる技術であることを確認した閲覧 2026-08-26