微生物学

微生物学 · 5/31

医学微生物学における実験動物の利用

The use of laboratory animals in medical microbiology

🧠 実験動物は「培養できない病原体を増やす」「毒素のを生体で測る」「を作る」という3つの異なる目的で使われる。 目的ごとに動物種と手技がほぼ一対一で決まっているため、「どの動物が」「何を」「どうやって」検出するのかをセットで覚えると整理しやすい。

⚠️ には3R原則という上の枠組みがある——ただし国・地域で法的拘束力が違う。 Replacement(動物を使わない方法への置き換え)・Reduction(使用数の削減)・Refinement(苦痛の軽減)の3R原則は、では指令2010/63/のもとで法的要件となっており、の許可申請では3Rの考慮状況の明示が義務づけられ、倫理審査委員会がこれを確認できなければ審査そのものが成立しない1。3Rという理念自体は世界的に共有されているが、どこまでを法律で強制するかは国・地域ごとに異なる点に注意する。

培養不能病原体の増殖

一部の病原体は人工培地での通常培養が不可能であり、動物やその特殊な部位に接種して増殖させる。

病原体 接種する動物・部位
Clostridium botulinum マウス接種
Mycobacterium leprae マウス接種、または——ヒトより低い体温を好む菌の性質を利用する
Treponema pallidum 内接種

💡 これらの菌にが必要なのは、がそもそも「培養できる」ことを前提にしているためである。 培養できない・難培養性の病原体はの古典的な適用に抵抗し、による増殖や、あるいは配列基盤の(in situ hybridization・等)が疾病因果関係を証明する代替アプローチとして用いられてきた2。M. leprae・T. pallidumはいずれも人工培地で通常培養できない代表例であり、は「培養に代わる増殖法」として今なお使われている。

毒素の検出・毒性の生体内測定

試験 動物・手技 検出内容
Römer試験 への皮下接種 Corynebacterium diphtheriaeの毒素産生の検出
Serény試験 ウサギ眼球への接種 Shigellaの検出——の有無で判定する
(試験名の記載なし) 患者血清をマウスに接種 Clostridium botulinum毒素産生の検出

発熱物質(パイロジェン)の検出:LAL試験

  • LAL(Limulus amebocyte lysate, 血球溶解物)はの血球から抽出される試薬。
  • LALはグラム陰性菌の膜成分である内毒素LPS(lipopolysaccharide, )と反応する。
  • LAL試験:の血液はLPSの存在下で凝固する——このを利用して(パイロジェン)の混入を検出する(・検査全般の文脈は1/10も参照)。

💡 LAL試験自体もというの試薬に依存しており、動物を使わない代替法への置き換えが進んでいる。 モノサイト活性化試験(MAT)は検査における(ウサギ試験・LAL試験)の倫理的な代替法として上の受け入れが進んでいる3——LAL試験そのものが3RのうちReplacement(代替)の対象になりつつある。

異種免疫グロブリンの産生

  • ・ウマ・ウサギなどの動物に抗原を接種して抗体を産生させ、得られるを治療用に用いる(例:血清)。
  • は受動免疫の一形態であり、詳細は1/33を参照。

まとめ

  • 実験動物は「」「」「」という3つの目的で使われる。
  • にはC. botulinum(マウス)、M. leprae(・)、T. pallidum()が代表例。
  • にはRömer試験(、C. diphtheriae)、Serény試験(ウサギ眼球、Shigella)、マウス接種によるC. botulinumがある。
  • LAL試験は血球溶解物とグラム陰性菌のLPSとのを利用し、を検出する。
  • のは受動免疫(1/33)としてされる。

出典

  1. 1.Approved Ambiguities: An Analysis of Applications for the Ethical Review of Animal Research in Sweden—Focusing on Harm, Benefit, and the 3Rs(Animals (MDPI)・2025)EU指令2010/63/EUのもとでは動物実験の倫理審査に際し、Replacement(代替)・Reduction(削減)・Refinement(洗練)の3R原則の考慮状況を申請者が明示することが法的要件であり、審査委員会(AEC)はこれと危害-便益分析(HBA)を確認できなければ倫理審査の法的要件を満たせないことを確認した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Sequence-based identification of microbial pathogens: a reconsideration of Koch's postulates(Clinical Microbiology Reviews・1996)培養できない・難培養性の微生物病原体はコッホの原則の適用に抵抗すること(Whipple病・ヒトエールリキア症・C型肝炎・ハンタウイルス肺症候群などが例)、in situ hybridization・PCR・representational difference analysisなどの配列基盤技術が疾病因果関係を証明する新しいアプローチを提供することを確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Monocyte activation test (MAT) as an ethical alternative to animal testing(BMB Reports・2025)動物実験に伴う倫理的課題を背景に代替法の模索が広がっており、モノサイト活性化試験(MAT)が発熱物質検査における動物実験の代替として規制上の受け入れが進んでいることを確認した。閲覧 2026-08-26