Medical Microbiology

Medical Microbiology · 3/11

アデノウイルス

Adenoviruses

微生物
Human adenovirus

🧠 は「同じウイルスが着地する場所ごとに全く違う病気になる」典型例として読む。 エンベロープを持たない頑丈な線状DNAウイルスは、や乾燥にも比較的強く、呼吸器・眼粘膜・消化管・膀胱のどこに付着するかで扁桃炎・炎・胃腸炎・という別々の疾患を起こす。さらに、感染した細胞がかによって、同じウイルスが「増えて壊す」か「居座って発がんに向かう」かの運命が分かれる——感染の対比を学ぶ好例になっている。

構造・分類

項目 内容
ゲノム 線状2本鎖DNA(linear double-stranded DNA, dsDNA)
エンベロープ なし(naked)
。頂点にがあり、そこから線維が突き出る
血清型/genotype 7つの種(species A〜G)に分類され、現在51血清型・116 genotypeが認められている。血清型は中和試験でのによる分類、genotype は全ゲノム配列に基づく分類で、53番以降は複数の型に由来する遺伝子を併せ持つ型間組換え体である。重症例で検出されやすいのは種B(B3・B7・B14・B21・B55)で、小児の重症入院例や免疫正常成人ので目立つ。B14は既存免疫の乏しい集団に入ると重症・致死的肺炎のを起こすが、検出頻度そのものは的である
宿主・保有源 ヒト・動物に普遍的に存在する(ubiquitous)

💡 線維はとして働く。 した線維単独でもを示す。この線維がに結合することが、後述する(扁桃・・消化管上皮など)の起点になる。

病原性・伝播

  • 伝播経路:感染感染直接接触

  • 好発集団:小児軍のプール利用者——集団生活・密接接触環境で流行しやすい

💡 かで運命が分かれる。 に感染するととなりウイルス粒子が産生されて細胞は破壊される。一方、に感染すると、ウイルス産生は起こらず化するか、細胞を形質転換しての性質を獲得することがある。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Adenovirus'>アデノウイルス</span>感染"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='permissive cell'>許容細胞</span><br>(permissive cell)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-permissive cell'>非許容細胞</span><br>(non-permissive cell)"]
  B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lytic infection'>溶解感染</span><br>ウイルス産生→細胞死"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic infection'>慢性感染</span> または<br>形質転換(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinogenicity'>発がん性</span>)"]

臨床像

疾患 特徴
扁桃炎 扁桃感染の原因として最多。発熱・扁桃腫脹・を呈する。S. pyogenesによる「」とは臨床的に扁桃のの有無である程度疑うが、確定診断は培養による
5〜15歳の男児に好発。主に血清型11・21が原因。血尿・を呈する。患者に多いによるとは対象患者が異なる点で鑑別する
炎(“pink eye”) プールでの集団感染と関連。非化膿性の充血を呈する。扁桃炎と炎の合併=が特徴的
気管支炎・肺炎・ 小児・大学生・軍に好発。主に血清型4・7・21。春〜冬に多く、乳児ではや百日咳様の発作性の咳を呈することがある
胃腸炎 保育施設の小児に関連(頻度はほど高くない)。主に血清型40・41

診断

  • 臨床診断が中心

  • 血清学:

治療・予防

  • 自然治癒傾向が強く、対症療法が基本

  • 生ワクチン:血清型4・7に対するものが存在するが、軍のにのみ使用可能——一般には流通していない

まとめ

  • は線状2本鎖DNA・エンベロープなし・で、7つの種(species A〜G)・51血清型・116 genotypeからなる。線維がとして働く。

  • 感染経路(・直接接触)と好発集団(小児・軍・プール利用者)が疾患の起こり方を決める。

  • ではではまたは形質転換という異なる転帰をとる。

  • 臨床像は着地部位で決まる:扁桃炎(#1原因)、(血清型11・21、男児)、炎(プール関連)、気管支炎/肺炎/ARDS(血清型4・7・21)、胃腸炎(血清型40・41)。

  • 治療は対症療法のみ。生ワクチンは血清型4・7限定で軍にのみ使用される。