Medical Microbiology

Medical Microbiology · 4/20

トリパノソーマ・クルーズ

Trypanosoma cruzi

微生物
Trypanosoma bruceiTrypanosoma cruzi

🧠 T. bruceiが「注射器」で感染するなら、T. cruziは「汚染」で感染する。 (reduviid bug、通称kissing bug)は刺した直後にその場で排便し、掻いた傷やなどの粘膜から便中のtrypomastigoteが侵入する——ハエの唾液から直接注入されるT. bruceiとは感染様式が根本的に違う。さらにT. cruziは血中のtrypomastigoteだけでなく、細胞内で鞭毛を失ったという第3の形態を持ち、心筋・脳髄膜・神経節に住みつく。急性期を生き延びても、寄生虫が誘導するが数年〜数十年かけて心臓・消化管を破壊し続ける——これがを「治療の勝負が急性期にしかない」病気にしている。

形態・生活環

項目 内容
分類 ——T. bruceiと同じ血液・組織
形態① 栄養型——血液・リンパ・臓器の組織腔・CNS内
形態② ——組織内の細胞内寄生形態、卵形でtrypomastigoteより小型、鞭毛・を欠く
形態③ ——媒介動物の・培養培地内
疫学 ラテンアメリカで高頻度
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='assassin bug'>サシガメ</span>が吸血し排便<br>便中にメタサイ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='click'>クリック</span>trypomastigote"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='curettage'>掻爬</span>・粘膜(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>など)から侵入"]
  B --> C["細胞に侵入し鞭毛を失う<br>amastigoteに変化"]
  C --> D["細胞内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binary fission'>二分裂</span>増殖"]
  D --> E["trypomastigoteに再変化"]
  E --> F["他の細胞に感染 or 細胞を破壊し血流へ"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='assassin bug'>サシガメ</span>が吸血しtrypomastigoteを摂取"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midgut'>中腸</span>でepimastigoteに変化・増殖"]
  H --> A

感染経路・媒介動物

  • 媒介動物:(reduviid bug、通称kissing bug)——口の近くを痛みなく刺すためこの通称がある。
  • 感染経路は刺咬そのものではなく、の糞に含まれるtrypomastigoteが、掻いた傷や粘膜(など)から侵入するである。

臨床像:Chagas病

急性期:

  • 5歳未満の小児で最も重症——CNS病変のため。
  • 最初の徴候:の炎症性・紅斑性結節=
  • 眼周囲の浮腫=(Romaña’s sign)
  • その他:発熱、感、皮疹、
  • 回復する場合、慢性期に移行する場合、死亡する場合がある。

慢性期:

⚠️ Chagas心筋症——遅発性・不可逆的な自己免疫破壊。 T. cruziが患者自身のに類似した抗原を産生し、これに対する自己抗体が正常組織を攻撃し続ける(, molecular mimicry)。数年〜数十年かけて肝脾腫、——いずれもの破壊による——、、脳内腫などを引き起こし、多臓器の破壊により死に至ることがある。

診断

  • :患者の血液をに吸わせ、30〜60日後に糞便中の寄生虫を確認する。
  • (厚層・薄層):急性期に運動性のtrypomastigoteを確認する。
  • 生検(リンパ節・肝・脾):相の検出。
  • 血清学的検査、培養、

治療

  • 急性期:
  • 慢性期:有効な治療法はない

予防

  • 媒介動物()の個体数制御、防虫ネットの使用など。

T. bruceiT. cruziの比較

項目 T. brucei4/19 T. cruzi
媒介動物 (刺咬時に唾液から直接注入) (排便、
特有の形態 trypomastigote・(2形態) 左記+(細胞内寄生、3形態)
主要な標的臓器 血液・リンパ・CSF→CNS 心筋・消化管平滑筋・神経節
慢性期の病態機序 による 自己免疫による慢性臓器破壊
急性期治療
慢性期治療 (CNS移行例) 有効な治療法なし

まとめ

  • T. cruziの糞に含まれるtrypomastigoteが、刺咬部の掻き傷や粘膜から侵入するで伝播する(唾液から直接注入されるT. bruceiとは対照的)。
  • 生活環はtrypomastigote・(細胞内、無鞭毛)・の3形態を行き来する。
  • 急性期は・発熱・で、5歳未満の小児で最重症となる。
  • 慢性期は自己免疫機序による心筋・消化管の不可逆的破壊()が特徴で、有効な治療法がない。
  • 診断は(急性期)・生検・血清学/PCRで行う。
  • 治療は急性期ののみが有効で、慢性期には効果的ながないことが最大の臨床的課題である。