産科学

産科学 · 44

出生直後の新生児管理

Management of the newborn after delivery

前提:正常
心血管系:胎児循環呼吸器系:喉頭・気管・気管支・肺(肺の成熟)

🧠 全体像:出生直後は「か、筋緊張は良いか、呼吸・はあるか」を迅速に確認する。状態が良ければ、保温、を優先し、無呼吸・または心拍数100/分未満なら、最初の1分以内に有効な(positive-pressure ventilation:PPV)を開始する。

最初の判定

flowchart TD
    A["出生"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='term birth (full term)'>正期産</span>・良好な筋緊張・呼吸または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crying (infant cry, clinical sign)'>啼泣</span>"}
    B -->|"すべて良好"| C["少なくとも60秒の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed cord clamping'>遅延臍帯結紮</span>を検討"]
    C --> D["保温・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-to-skin contact'>皮膚接触</span>・授乳開始"]
    B -->|"いずれか不良"| E["保温・体位・乾燥・刺激・必要時気道確保"]
    E --> F{"無呼吸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gasping respiration'>あえぎ呼吸</span>または心拍数100未満"}
    F -->|"はい"| G["有効なPPV"]
    F -->|"いいえ"| H["呼吸と酸素化を観察"]
    G --> I{"肺を換気後も心拍数60未満"}
    I -->|"はい"| J["胸骨圧迫3対1・100%酸素・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='umbilical veins'>臍静脈</span>路"]
    I -->|"いいえ"| K["換気継続後に段階的に離脱"]

状態が良い新生児

  • 多くの・早産児では、直ちに蘇生を要しなければ臍帯を少なくとも60秒遅らせる12。は感染妊婦・感染状況不明の妊婦であってもを推奨している。
  • 母体胸部でし、乾燥・保温、呼吸・筋緊張・皮膚色を観察する。
  • 母児が安定していれば出生後1時間以内の授乳開始を支援する。
  • 体重・身長・測定や沐浴は、体温維持と母児接触を妨げない時期に行う。

初期処置と換気

  • 保温し、頭部をにして気道を開き、乾燥・刺激を行う。
  • 口腔・鼻腔のは行わない。分泌物が気道を閉塞する、またはPPVを妨げる場合だけ吸引する。
  • ・胎便があっても、活気のない児に一律のを行わず、換気を優先する2。
  • 無呼吸、、または心拍数100/分未満ならPPVを開始し、胸郭挙上と心拍数上昇で有効性を確認する。
  • 心拍数が上がらなければ、マスク密着、頭位、吸引、口を開く、圧上昇、代替気道の順に換気を是正する。

心拍数に基づく蘇生

心拍数 対応
100/分以上 自発呼吸と酸素化を観察。不要なPPVを中止
60〜99/分 有効なPPVを継続し、換気手技を修正。必要時または
60/分未満 肺を十分換気しても持続する場合、胸骨圧迫と100%酸素を開始
  • 胸骨圧迫は両母指圧迫法で胸郭の約1/3を押し、圧迫3:換気1、1分間に90回の圧迫と30回の換気を目安とする。
  • 60秒の協調した圧迫・換気後も心拍数60/分未満なら、を投与し、や気胸などを検討する。
  • 右手または右のと心電図を用い、酸素を目標範囲へ調整する。

Apgarスコア

項目 0点 1点 2点
外観:皮膚色 蒼白・全身チアノーゼ 体幹ピンク・ 全身ピンク
Pulse:心拍 なし 100/分未満 100/分以上
Grimace:反射 なし 顔をしかめる 咳・くしゃみ・
Activity:筋緊張 弛緩 四肢軽度屈曲 活発な運動
Respiration:呼吸 なし 緩徐・不規則 良好な呼吸・

1分・5分で記録し、5分値が7未満なら通常5分ごとに20分まで再評価する。は出生後の移行と蘇生反応を記録するもので、を開始するか決めるために待つ指標ではない。単独で仮死の診断や個々の児のに用いるべきではない3。

安定後の標準ケア

  • ビタミンK筋注でを予防する。経路・用量は国により異なり、経口法は筋注に比べ有効性・性の面でがあるとされる4。
  • 予防は国・地域の法令と疫学に従う。
  • B型肝炎ワクチンを地域の計画に従って行い、母体HBs抗原陽性なら免疫グロブリンを含む出生時予防を急ぐ。
  • 体温、呼吸、皮膚色、哺乳、血糖リスク、出生外傷、を評価する。
  • 蘇生後は、低血糖、、感染を監視し、の適応を時間内に判断する。

まとめ

  • 良好な児では、保温、、早期授乳を優先する。
  • は行わず、無呼吸・または心拍数100/分未満ではPPVが最重要である。
  • 有効な換気後も心拍数60/分未満なら、3:1の胸骨圧迫、100%酸素、血管路・アドレナリンへ進む。

出典

  1. 1.Guideline: Delayed Umbilical Cord Clamping for Improved Maternal and Infant Health and Nutrition Outcomes(World Health Organization・2014)WHOは正期産・早産を問わず出生後1分より早く臍帯結紮しないこと(遅延臍帯結紮)を推奨しており、この推奨はHIV感染妊婦・HIV感染状況不明の妊婦にも同様に適用される。早期結紮は新生児が仮死状態で直ちに蘇生のため移動させる必要がある場合を除き推奨されない。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Part 5: Neonatal Resuscitation: 2020 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care(2020)新生児蘇生における初期処置、換気開始、ルーチン吸引の回避、体温管理、遅延臍帯結紮の原則を確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Committee Opinion No. 644: The Apgar Score(2015)Apgarスコアは出生直後の状態と蘇生への反応を記録する指標であり、単独で仮死の診断や個人の神経学的予後予測には使えないことを確認した。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Vitamin K and the Newborn Infant(2022)新生児のビタミンK欠乏性出血予防では出生後の筋肉内投与が標準であり、経口法には有効性と完遂性の制約があることを確認した。閲覧 2026-08-26