Physiology

Physiology · 2.5

循環系の構成。体循環における各血管区分の血行動態的機能。血流の生物物理学的基礎。圧と流量の関係。

Organization of the circulatory system. Hemodynamic functions of different vessel segments in the systemic circulation. Biophysical basis of blood flow. Relationship of pressure and flow.

応用トピック
心臓カテーテル検査・血行動態評価・心周期

🧠 血管系は「(resistance vessel:動脈・細動脈)」と「(静脈)」の役割分担で読む。 動脈はの弾性を利用してを平滑化し(, Windkessel effect)、細動脈は平滑筋の収縮で抵抗の大半(=血圧の落差の大半)を作り、静脈は低い弾性・高いコンプライアンスで血液の6割以上を「貯蔵」する。抵抗が半径の4乗に反比例する(Hagen-Poiseuilleの法則, Hagen-Poiseuille’s law)という1つの物理法則が、細動脈の重要性のすべてを説明する。

循環系の全体構成

  1. 心臓: ポンプ
  2. ガス交換のため肺へ血液を送る
  3. 体循環: 末梢組織へO₂・栄養・ホルモンを運び、(CO₂)を除去する

その他の機能:栄養/輸送、、ホルモン輸送、

血管の分岐に伴う変化

指標 傾向
血管数 大動脈1本→細動脈約10⁷→毛細血管約4×10¹⁰、その後静脈側で再び合流し減少
大動脈25mmから毛細血管最小約2μmまで低下
ごとに娘血管の合計CSAは親血管を上回る。毛細血管で最大
血液量の分布 全血液量約5L。体循環85%・15%。動脈系13%・静脈系64%超(として機能)

💡 CSAが最大=流速が最小になる場所が毛細血管。 連続の式(continuity equation、IV=A×vI_V = A \times v = 一定)から、CSAが最大の毛細血管でが最も遅くなる——これはガス・に必要な滞留時間を確保するための構造的必然。

血管壁の構造

毛細血管を除き3層構造:①②中膜③外膜。構成要素は内皮細胞(を裏打ち)、弾性線維(伸展後の)、(強度・防止)、(血流の再分配)。

血管 直径 壁厚 弾性組織 平滑筋 血液量割合
大動脈 25mm 2mm +++ + 13%(動脈系合計)
動脈 4mm 1mm ++ ++
細動脈 20μm 2μm + +++
毛細血管 5–7μm 0.5μm 7%
20μm 1μm +
静脈 5mm 0.5mm + + 64%(静脈系合計)
大静脈 30mm 1.5mm ++ ++

血流の生物物理学

連続の式

IV=A1v1=A2v2=一定I_V = A_1 v_1 = A_2 v_2 = \text{一定}

CSAと流速は反比例——CSA最大の毛細血管で流速最小。

ベルヌーイの法則

Ps()=Pt(全圧)12ρv2P_s(\text{}) = P_t(\text{全圧}) - \frac{1}{2}\rho v^2

流速が上がるとは下がる。主要血管の狭窄(↑)は、分岐する側枝へのを減少させうる。

Hagen-Poiseuilleの法則

Q=IV=πr48ηlΔpQ = I_V = \frac{\pi r^4}{8\eta l}\Delta p

流量は半径の4乗に比例——血管径の変化が流量に与える影響は極めて大きい。

抵抗の式

の法則(Ohm’s law、Δp=Q×R\Delta p = Q \times R)とHagen-Poiseuilleの法則を組み合わせると:

R=8ηlπr4R = \frac{8\eta l}{\pi r^4}

抵抗は半径の4乗に反比例する。 これが血流調節(=抵抗調節)の主眼が細動脈の半径制御に置かれる理由——わずかな血管径の変化が抵抗・血流に劇的な影響を与える。

直列・並列抵抗

R=R1+R2+R31R並列=1R1+1R2+1R3R_{} = R_1+R_2+R_3 \qquad \frac{1}{R_{並列}} = \frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}

は各臓器のが並列に接続されているとみなして計算する:

1TPR=1R+1R+\frac{1}{TPR} = \frac{1}{R_{}}+\frac{1}{R_{脳}}+\cdots

レイノルズ数

Re=ρdvˉηRe = \frac{\rho \cdot d \cdot \bar v}{\eta}
Re 流れ
<2000 の可能性が高い
>3000 の可能性が高い

太い血管径・高流速・低粘度(低下)はを招く。

病態 の原因
貧血 低下→粘度低下
狭窄 血管径の減少
動脈瘤 壁の→径の増大

ラプラスの法則

T=P×r2×(壁厚)T = \frac{P \times r}{2 \times (\text{壁厚})}

は圧×半径に比例し壁厚に反比例する。動脈瘤 血管壁の膨隆→半径増大+壁厚減少→の急激な増大→

伸展性とコンプライアンス

指標 定義
透壁圧上昇あたりの容積変化率 D=ΔVV0ΔpD = \dfrac{\Delta V}{V_0 \Delta p}
コンプライアンス 圧-の接線の傾き C=ΔVΔpC = \dfrac{\Delta V}{\Delta p}

静脈のは動脈の8倍、コンプライアンスは動脈の25倍。動脈は圧が変化しても抵抗が比較的安定なため、静脈は少ない圧上昇で大量の血液を保持できるためと呼ばれる。

シェア(せん断)と粘度

血管壁近傍は血流が遅く、中心部(赤血球が多い)は速い——この速度差が。壁近傍ほどが大きく、中心ほど小さい。速い成分ほど中心に偏在する結果、細い血管では見かけのが低下する。

圧-流量関係:2種類の血管型

代表 機構 圧上昇への応答
弾性線維に富む血管 受動的 コンプライアンスが高く容積が圧に比例して増加→抵抗は減少
平滑筋に富む血管 能動的( 一定範囲で血流を一定に保つ()→圧上昇でが増し能動的に収縮→抵抗も上昇

の機序: 平滑筋の開口→脱分極→VDCC活性化→Ca²⁺流入→血管収縮→径減少→抵抗上昇。この現象はと呼ばれ、一定範囲の血圧で血流を一定に保つ(2-09-local-control-of-circulation-myogenic-humoral-control-mechanisms-functional-and参照)。

各血管区分の血行動態的機能

血管 機能
大動脈・大血管 :収縮期に弾性壁が血液を貯め弾性エネルギーを蓄積、拡張期にそのエネルギーで血液を末梢へ押し出し、に変換する
中・小動脈 細動脈へ血液を輸送。脈圧は減衰するがなお
細動脈(<300μm) 体循環で最大の抵抗を担う。の平滑筋。由来の持続的血管収縮(トーン myogenic tone+交感神経トーン sympathetic tone)でを維持
静脈 弾性組織が少なくコンプライアンスが高い。全血液量の約65%を保持し、主な機能は貯蔵

⚠️ 圧の最大の落差は細動脈で起こる。 大動脈(高圧、低コンプライアンス)から小動脈まではエネルギー損失が少ないが、細動脈で高抵抗のため圧が急落し、毛細血管でさらに低下、右房でほぼ0〜2mmHgに達する。

まとめ

  • 血管は分岐とともに数・総CSAが増大し半径は減少、毛細血管でCSA最大・流速最小になる。
  • 血流は連続の式・の法則・Hagen-Poiseuilleの法則に従い、抵抗は半径の4乗に反比例する(R1/r4R \propto 1/r^4)。
  • 動脈は低コンプライアンス・、静脈は(血液量の64%を保持)。
  • 細動脈が体循環最大の抵抗を担い、圧の最大の落差はここで生じる。)で血流を一定に保つ。