Surgery

Surgery · S-29

鼠径ヘルニアと大腿ヘルニア

Inguinal and femoral hernias

前提:正常
腹部:筋と筋膜(腹壁)
疾患
鼠径ヘルニア

🧠 全体像より上、は下に出る。は小さくても絞扼しやすく、無症候の男性に許される経過観察をそのまま適用しない。

解剖と分類

との位置 経路・特徴
外側 からへ。開存など先天要素
内側 の後壁脆弱部から突出
より下 から突出。女性に多く、頸部が狭いため絞扼リスクが高い

は内側を外縁、外側を、下方をで囲まれる。の外下方に触れる。

症候と合併症

  • 立位・咳嗽・腹圧で増大する膨隆、重だるさ、牽引痛。
  • なら臥位や用手で腹腔内へ戻る。
  • 嵌頓は、閉塞は腸管通過障害、絞扼は血流障害を伴う状態である。
  • 急な持続痛、圧痛、皮膚発赤、嘔吐、腹部膨満、全身毒性は絞扼・腸壊死を疑う。

診断

立位と臥位で・触診し、咳嗽衝撃、、反対側、陰嚢、大腿部を確認する。診察で明らかな場合、な画像検査は不要である。

状況 画像
・診断不確実 動的超音波を第一選択にしやすい
肥満、閉塞、絞扼、他疾患との鑑別 CT
慢性鼠径痛・運動時痛で超音波陰性 を選択的に検討

診察だけで内鼠径・外鼠径を確実に区別できないことがあり、術式決定上も無理な分類は不要である。

治療選択

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>ヘルニア"] --> B{"急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irreducible'>還納不能</span>・閉塞・絞扼疑い"}
    B -->|"あり"| C["蘇生・緊急外科評価"]
    C --> D["緊急修復±非生存腸管切除"]
    B -->|"なし"| E{"大腿型または女性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>ヘルニア"}
    E -->|"はい"| F["早期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機</span>修復"]
    E -->|"いいえ"| G{"男性・無症候または軽症"}
    G -->|"はい"| H["十分な説明下で経過観察可"]
    G -->|"いいえ"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機</span>修復"]

待機と手術適応

  • 症候性、増大、生活制限を伴う手術を勧める。
  • 無症候または軽症の男性は、急性事故リスクが低いため経過観察を選べる。ただし多くは症状進行で後に手術となる。
  • 女性ではの見逃しが多く、適時の修復を勧め、可能なら後方からも観察できる修復を検討する。
  • は絞扼リスクが高く、無症候でも修復を勧める。
  • 急性有痛性の腸閉塞、絞扼疑いは緊急手術の対象である。

術式

方法 特徴
前方アプローチの平坦メッシュ修復。も可能
TEP 腹腔内へ入らずで修復
TAPP 腹腔内からへ入り修復。対側・を観察しやすい
組織縫合法 メッシュ不適、患者希望、専門技術がある場合。が代表

2023年改訂のHerniaSurgeガイドラインでは、の技量・設備が十分であれば、両側・再発・女性に限らず片側初発のでも修復をより優先する(術後疼痛・慢性疼痛の減少を根拠とする強い推奨)よう改められた。ただし手術時間・コストは同等かやや高く、TEPの習熟曲線はLichtensteinより長い(50〜100例程度)。前立腺手術など骨盤前方手術後は前方修復が適する場合がある。術式は一律ではなく、患者背景、ヘルニア型、麻酔リスク、経験で選ぶ。

絞扼例でも、汚染度と腸管切除の有無だけでメッシュをとせず、清潔・か高度汚染かを評価して個別化する。

まとめ

  • 外鼠径は外側、内鼠径は内側、大腿は下方である。
  • 無症候男性は経過だが、女性・には同じ方針を適用しない。
  • 急性、閉塞、絞扼徴候は緊急評価・修復を要する。
  • 前方・修復は、解剖、既往、両側性、再発、経験で選択する。