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Disease Atlas · 運動器 · 先天性疾患

二分膝蓋骨

Bipartite patella

別名
三分膝蓋骨multipartite patella二分膝蓋骨症候群
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 28:膝蓋骨骨折の診断と治療解剖学 6.3:膝関節・膝窩
鑑別疾患
膝蓋骨骨折
症状
疼痛

🧠 全体像:は、まず「病気ではない」ことを押さえる。のが癒合しなかっただけので、人口の2〜6%に存在し、大半は無症候のまま画像検査で見つかる1。臨床で問題になる場面は2つしかない——①急性骨折と見間違えて過剰治療する場面と、②外傷や反復する負荷を機に本当に痛み出す「症候性(症候群)」の場面である。この2つを分けて考えるのが本項の軸になる。

定義と発生

は、のが主と癒合しないまま残った状態である2。人口の約23%は成長過程で最大3つのをもつが、そのうち癒合せずに残るのはおよそ2%にとどまる3。より広い集団を対象にした報告では、2〜6%・男女比9:1(男性に多い)とされる1。

⭐ 典型的な位置は上外側である。 骨片が2つを超えて残る場合は「」と呼ぶが、機序と臨床的な扱いは同じである。

Saupe分類

付属骨片の位置により3型に分けられる1。

型 位置 頻度
Type 1 5%
Type 2 外側縁 20%
Type 3 上外側 70%(最多)

⭐ Type 3が圧倒的多数を占め、これが「といえば上外側」という臨床像の実体である。

急性骨折との鑑別——過剰治療を避ける

flowchart TD
    A["膝の外傷後X線で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='patella'>膝蓋骨</span>に骨片様の陰影"] --> B{"骨片の辺縁は?"}
    B -->|"滑らかな皮質に覆われる"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bipartite patella'>二分膝蓋骨</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='normal variant'>正常亜型</span>)を疑う"]
    B -->|"不整・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sharp'>鋭利</span>"| D["急性骨折を疑う"]
    C --> E["対側膝のX線を撮る"]
    E -->|"同じ位置に同様の所見(約50%)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bipartite patella'>二分膝蓋骨</span>と確定"]
    E -->|"対側に所見なし"| G["骨折の可能性を再検討"]

⚠️ は膝外傷後の単純X線で最もされやすい所見の一つである。 鑑別の核心は骨片の辺縁で、の骨片は滑らかな皮質縁に覆われているのに対し、急性は不整である2。

⭐ 迷ったら対側を撮る。 を有する例のおよそ50%で両側性に生じるため、対側膝の比較X線が鑑別に有用である23。片側にしか外傷歴がなくても、対側に同じ位置・同じ形の所見があればと確定できる。の治療(などの手術)を無症候性のに対して行ってしまう誤りを避ける意味は大きい。

症候性二分膝蓋骨(二分膝蓋骨症候群)

は典型的には偶発的な画像所見にとどまり、大半の患者で無症候性である1。一方で一部の例では、への直接外傷、あるいは走行・ジャンプなど反復する負荷を伴うスポーツ活動を契機に、付属骨片と主の間のの癒合部に炎症・微小不安定性が生じ、前として症状化する1。これを症候性(症候群)と呼ぶ。

⭐ 「見つけた=症状の原因」と即断しない。 無症候性のをもつ人は珍しくないため、痛みの原因が本当に付属骨片にあるかは、圧痛の局在や画像所見(癒合部のなど)と症状の対応を確認したうえで判断する。

治療

⚠️ 第一選択は保存治療であり、少なくとも3か月間は継続する。 ・安静・リハビリテーションによる保存治療で、76%が平均1.9か月で症状軽快する1。

  • 3か月を超えて症状が持続する難治例では手術介入(付属骨片の摘出術など)を検討でき、90.79%で部分的または完全な症状改善が得られている1。

鑑別

疾患 見分け方
骨片の辺縁が不整で急性外傷歴に一致する。は滑らかな皮質縁をもち、対側にも同様の所見が高率(約50%)でみられる

まとめ

  • ⭐ はのが癒合しなかったであり、疾患ではない。 2〜6%、Saupe分類Type 3(上外側)が70%と最多。
  • ⚠️ 膝外傷後の画像で最もされやすい所見の一つ。 骨片の滑らかな皮質縁と、約50%にみられる両側性(対側比較X線が有用)で急性骨折と区別する。
  • 大半は無症候性のだが、外傷や反復負荷を契機に前として症状化することがある(症候性=症候群)。
  • 治療は保存治療が第一選択(少なくとも3か月、76%が)。難治例のみ手術介入を検討する(90.79%で症状改善)。

出典

  1. 1.Treatment of symptomatic bipartite patella in patients <21 years of age: A systematic review and treatment algorithm(Journal of Children's Orthopaedics・2024)二分膝蓋骨が膝蓋骨の2つの未融合の骨化中心に由来する発達異常で発生率2〜6%・男女比9:1であること、Saupe分類でType 1(下極の付属骨片、5%)・Type 2(外側縁の付属骨片、20%)・Type 3(上外側の付属骨片、最も一般的で70%)に分けられること、二分膝蓋骨は典型的には画像検査で偶然発見され大半の患者で無症候性であること、症候性例では膝蓋骨への外傷または走行・ジャンプなど反復する外力を伴う活動で前膝痛が誘発される傾向があること、保存治療を少なくとも3か月間行うことが推奨され3か月を超えて症状が持続する場合に手術介入を検討できること、保存治療では76%が平均1.9か月で症状軽快したこと、手術治療では90.79%で部分的または完全な症状改善が得られたことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Patella Fractures(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)二分膝蓋骨が二次骨化中心の融合不全に起因し最も一般的には膝蓋骨の上外側で生じる解剖学的変異であること、骨片が滑らかな辺縁(smooth edges)を示すことが急性骨折との区別点であること、二分膝蓋骨を有する例のおよそ50%で両側性に生じること、判定に迷う症例では対側膝の比較撮影が鑑別に有用であることを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Current concepts review: Fractures of the patella(GMS Interdisciplinary Plastic and Reconstructive Surgery DGPW・2016)膝蓋骨骨折が全骨損傷の約1%を占めること、閉鎖骨折が大多数だが最大7%が開放骨折となりその約80%に大腿骨・寛骨臼の骨折や外傷性股関節脱臼・膝靱帯損傷などの多発損傷を伴うこと、膝蓋骨が人体最大の種子骨で骨膜に包まれない数少ない骨のひとつであり近位3/4が厚い軟骨に覆われ遠位極は関節適合に関与しないこと、膝蓋大腿靱帯を含む支帯が「予備の伸展機構」として働き骨折があっても一定の自動伸展を許すこと、膝蓋骨が完全伸展位で大腿四頭筋のモーメントアームを最大30%増大させること、膝蓋骨に加わる力が体重の4〜5倍にあたる3200 Nに達しうること、骨癒合に8〜12週を要しその間におよそ10万回の屈伸を経ること、人口の約23%が最大3つの骨化中心をもち2%で癒合せず二分膝蓋骨・三分膝蓋骨となり典型的には膝蓋骨上極に位置し50%で両側性であること、転位骨折では骨片間の触知可能な陥凹・局所血腫・急速な関節血症を認めること、完全に膝を伸展できないことは骨折に加えて内外側支帯の断裂があることを示す一方で自動伸展が可能でも骨折は十分には除外できないこと(転位の少ない骨折では支帯や腸脛靱帯・内転筋群が自動伸展を担いうるため)、2方向の単純X線が必須で急性期には疼痛と二次転位のため軸位像を避けるべきであること、骨折型を横・縦・粉砕・辺縁・骨軟骨に分けることを確認した閲覧 2026-09-03