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Disease Atlas · 精神 · 病態

素行症

Conduct disorder

別名
行為障害素行障害
臓器系
精神小児
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 A-16:乳幼児期・児童期・青年期に明らかとなる精神疾患
鑑別疾患
間欠爆発症自閉スペクトラム症注意欠如・多動症(ADHD)
続発疾患
パーソナリティ症群
原因となる疾患
反抗挑発症

🧠 全体像は「反抗的な子ども」ではなく、他者の基本的人権や年齢相応の社会規範を反復して侵害する行動パターンである。診断は18歳未満に限られ、同じ行動パターンが18歳以降も続けばの診断へ引き継がれる——この年齢の接続こそがを理解する軸になる。もう一つの核心は、症状の重さそのものより「向な情動が限られた」(罪悪感の欠如・性の欠如・冷淡さ)の有無が予後を大きく左右するという点で、治療は薬物療法ではなくが中心に据えられる。

疫学・背景

は一般人口の2〜10%とされ、人種・民族間で大きな差はない1。単一の原因ではなく、気質的な・情動制御の弱さ、・虐待や、学習障害、ADHDの併存、養育環境の一貫性の乏しさなどが複合的に関与する。として先行することもあるが、すべてのへ進行するわけではない。

診断

は、次の4分類にまたがる行動が反復・持続することで診断する1

分類 具体例
人・動物への攻撃性 いじめ・脅迫、けんかの先導、凶器の使用、人や動物への身体的な残虐行為
所有物の破壊 故意の器物損壊、放火
虚偽・窃盗 頻繁な虚言、住居・自動車への侵入、万引き、偽造
重大な規則違反 夜間の外泊、家出の反復、学校の無断欠席

発症年齢による2型

定義 特徴
小児期発症型 10歳未満で症状が出現 身体的攻撃性が強く、予後不良
青年期発症型 10歳未満の問題行動を欠く 身体的攻撃性は少なく、予後は比較的良好

18歳未満で用いる診断名であり、18歳以降は(15歳以前からのの証拠を要件とする)へ移行する。 の前段階として位置づけられており、この年齢の接続を欠いたまま両者を別個の病態として覚えない。

flowchart TD
    A["18歳未満で人・動物への攻撃性/<br>所有物破壊/虚偽・窃盗/重大な規則違反<br>が反復・持続"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conduct disorder'>素行症</span>"]
    B --> C{"18歳以降も<br>同じパターンが持続するか"}
    C -->|"はい(15歳以前の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conduct disorder'>素行症</span>歴が要件)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antisocial personality disorder'>反社会性パーソナリティ症</span><br>(診断名が移行)"]
    C -->|"いいえ・寛解"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conduct disorder'>素行症</span>の診断は維持しない"]

「向社会的な情動が限られた」特定用語

では、次の4項目のうち2項目以上が12か月以上にわたり、複数の・状況で認められる場合に「向な情動が限られた」を付す。

  • 罪悪感・後悔の欠如
  • 性の欠如(冷淡さ)
  • 成績・成果への
  • 感情の平板さ・浅薄さ

3〜5歳の地域コホート1839例を11〜13歳まで追跡した縦断研究では、このに該当する小児はの症状に加えて無謀さ、・ADHD症状などの併存問題がより多く、3年後の追跡でもその後の状・不良な適応のリスクが有意に高かった2。💡 同じ「」という診断名の中でも、このの有無で長期のが大きく異なる——発症年齢の型と並んで、予後を左右する最重要の層別化因子である。

鑑別

疾患 区別の要点
怒り・、口論・反抗、執念深さが中心で、他者の権利侵害・所有物破壊・虚偽窃盗というの中核は伴わない
ADHD が中心。と高頻度に併存し、併存例では双方を評価する
の持続的困難とが中心。規範違反や虚偽・窃盗はでない
間欠爆発症 誘因に不釣合いな反復性の攻撃的爆発だが、計画的な利益目的や継続的な規範侵害パターンを伴わない

治療

⚠️ 薬物療法はそのものの第一選択ではない。 に対するルーチンの薬物療法は推奨されず、が治療の主軸となる3

  • プログラム:3〜11歳でリスクが高い、または診断された小児の養育者に集団プログラムを提供する。一貫したしつけの確立を目標とする13
  • マルチシステミックセラピー:11〜17歳の治療に用いる多面的介入で、家族・学校・個人を対象に家族機能の改善に焦点を当てる13
  • 併存症の治療ADHDを併存する場合はまたはを適応内で用いる。ADHD症状の改善が行動症状全体の改善につながりうる3
  • 薬物療法の位置づけは、に反応しない重度の攻撃性・情動制御不全を伴う例に限り、短期的な管理として検討する。そのものへの長期薬物療法という発想は取らない3

まとめ

  • は人・動物への攻撃性、所有物の破壊、虚偽・窃盗、重大な規則違反という4分類の行動が反復・持続する病態で、18歳未満で診断し、18歳以降はの診断へ移行する。
  • 発症年齢(小児期発症型 vs 青年期発症型)と、⭐「向な情動が限られた」(罪悪感・性の欠如、冷淡さ)の有無が予後を左右する最重要の層別化因子である。
  • ・ADHD・・間欠爆発症との鑑別を要する。
  • 治療は薬物療法ではなく、プログラム(3〜11歳)とマルチシステミックセラピー(11〜17歳)などのが第一選択で、併存するADHDの治療が行動症状の改善につながりうる。

出典

  1. 1.Conduct Disorder(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)素行症の中核症状はDSM-5の4分類(人・動物への攻撃性、所有物の破壊、虚偽・窃盗、重大な規則違反)で構成されること。発症年齢により小児期発症型(10歳未満に症状出現、より身体的攻撃性が強く予後不良)と青年期発症型(10歳未満の問題行動を欠き、身体的攻撃性が少なく予後良好)に分けられること。生涯有病率は一般人口の2〜10%で人種・民族間で大きな差はないこと。治療の心理社会的介入として親訓練プログラム(一貫したしつけの確立が目標)とマルチシステミックセラピー(家族・学校・個人を対象に家族機能の改善に焦点)が挙げられ、薬物療法は併存する精神疾患(ADHDに対する刺激薬・非刺激薬など)を標的とすること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Antisocial Behaviour and Conduct Disorders in Children and Young People: Recognition and Management (NICE Clinical Guideline CG158)(National Institute for Health and Care Excellence (NICE)・2013)3〜11歳で素行症・反抗挑発症のリスクが高い、または診断された小児の養育者には集団の親訓練プログラムを提供すること(推奨9.5.1.1)。11〜17歳の素行症の治療にはマルチシステミックセラピーなどの多面的介入を提供すること(推奨9.5.1.13)。行動上の問題に対するルーチンの薬物療法は行わないこと(推奨9.6.1.1)。併存するADHDにはメチルフェニデートまたはアトモキセチンを適応内で提供すること(推奨9.6.1.2)。リスペリドンは、心理社会的介入に反応しない重度の攻撃性・情動制御不全を伴う例に限り、短期的な管理として検討すること(推奨9.6.1.3)閲覧 2026-08-11
  3. 3.The DSM-5 Limited Prosocial Emotions Specifier for Conduct Disorder: Comorbid Problems, Prognosis, and Antecedents(Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry・2021)3〜5歳から地域コホート1839例を11〜13歳まで追跡した縦断研究で、「向社会的情動が限られた」特定用語(罪悪感・後悔の欠如、共感性の欠如、成績・成果への無関心、感情の平板さの4項目のうち2項目以上が12か月以上・複数の関係/状況で持続)に該当する小児は、素行症の症状・併存問題(無謀さ、反抗挑発症・ADHD症状)がより多く、3年後の追跡でも素行症症状の再燃・不良な適応のリスクが有意に高いこと閲覧 2026-08-11