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Disease Atlas · 精神 · 疾患

短期精神病性障害

Brief psychotic disorder

臓器系
精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 A-08:統合失調症:病因・診断基準・歴史的亜型・経過・予後・鑑別診断
鑑別疾患
統合失調症統合失調症様障害
治療薬
リスペリドンオランザピンクエチアピン
症状
妄想幻覚

🧠 全体像の核心は、症状の重さではなく「1か月未満で消え、病前の機能水準へ完全に戻る」という経過そのものにある。・まとまりのないのいずれかを含むが突発的に出現し、1日以上1か月未満で完全寛解するという時間軸だけが診断を成立させる。多くは診断が確定するのが回復した後(あるいは1か月を超えてへ切り替わった後)という「振り返って初めて確定する」性質を持つ点も特徴的である。

概要・定義

は、・まとまりのない・著しく奇妙な行動またはカタトニアのうち少なくとも1つを含むが突発的に出現し、1日以上1か月未満持続したのち、病前の機能水準へ完全に回復する病態である12。1か月を超えて症状が続いた場合、またはへ完全に戻らなかった場合は、など他の診断への切り替えを検討する。

⚠️ 「完全な寛解」が定義に組み込まれているため、診断は多くの場合事後的・回顧的に確定する。発症直後の時点では、この先1か月未満で治まるのか、それともへ移行するのかを確定的に予測できない。

下位分類

-TRは誘因の有無と発症時期によってを付ける。

定義
著明なストレス因を伴う 明らかなストレス因の直後に発症する(「短期反応性精神病」とも呼ばれる)
著明なストレス因を伴わない 明確な誘因を特定できない
発症 産後4週間以内に発症する1

予後

良好な予後を示唆する所見として、突然の発症、明確な誘因(ストレス因)の存在、持続期間が短いこと、またはがいないことが挙げられる1。再発はまれではないが、エピソードとエピソードの間は病前に近い機能を保ち、症状も乏しいことが多い2。一方で、スペクトラムの他の障害へ進展するリスクが増すという指摘もある2

持続期間で並べる:統合失調症スペクトラムの精神病性障害

は、の基準Aを満たした精神病エピソードを持続期間だけで区切る連続体のうち、最も短い側に位置する。

診断 持続期間 への回復
1日以上1か月未満 完全に回復する(定義上必須)
1か月以上6か月未満 定義上問わない(結果的に約33%は回復)
6か月以上 しばしば陰性・が残存する

は、の基準Aの他症状を満たさない別枠の診断であり、この持続期間の連続体には含まれない。

flowchart TD
    A["突発的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychosis'>精神病症状</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delusion'>妄想</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hallucination'>幻覚</span>・まとまりのない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='speech (verbalization)'>発語</span>など)"] --> B{"持続期間"}
    B -->|"1日以上1か月未満"| C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premorbid functioning'>病前機能</span>へ完全に回復したか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brief psychotic disorder'>短期精神病性障害</span>"]
    C -->|"いいえ・進行中"| E["1か月を超えるまで経過観察"]
    B -->|"1か月以上6か月未満"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schizophreniform disorder'>統合失調症様障害</span>を検討"]
    E --> F
    D --> G{"誘因・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='puerperium'>産褥期</span>発症の有無を確認"}
    G -->|"著明なストレス因あり"| H["短期反応性精神病として特定"]
    G -->|"産後4週間以内"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='puerperium'>産褥期</span>発症として特定"]

鑑別診断

疾患 区別の鍵
症状が1か月を超えて持続する、またはへ完全に回復しない
全経過が6か月以上持続する
を伴う が躁病・の期間中に限られる
物質・薬剤誘発性精神病 ・覚醒薬・ステロイドなどの使用と明確な時間関係がある
せん妄 の変動、注意の障害、身体疾患・薬剤による急性の脳機能障害を示唆する所見を伴う

治療

第2世代抗精神病薬が第一選択であり、症状が寛解した後もさらに1〜3か月投与を継続することが提案される1を土台に、必要に応じて抗精神病薬を追加するという位置づけである2のリスクが高い急性期には、入院を含む安全確保を優先する。

への完全な回復が定義上の要件であるため、寛解後も再発予防としての経過観察が重要になる。特にへの進展リスクを念頭に置き、症状のを早期に捉える。

まとめ

  • は、が突発的に出現し1日以上1か月未満持続したのち完全に回復する病態で、診断は事後的に確定することが多い。
  • として、著明なストレス因を伴う型(短期反応性精神病)、伴わない型、発症型(産後4週間以内)がある。
  • 良好な予後を示す所見は突然の発症、明確な誘因、短い持続期間、家族歴がないことだが、確定的な予測因子ではない。
  • (1か月以上6か月未満)・(6か月以上)と持続期間の連続体をなす一方、は別枠の診断である。
  • 治療は第2世代抗精神病薬を第一選択とし、を併用する。寛解後も再発・進展への経過観察を続ける。

出典

  1. 1.Brief Psychotic Disorder(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)DSM-5診断基準の核心(妄想・幻覚・まとまりのない発語のうち少なくとも1つを含む精神病症状が突発的に出現し1日以上1か月未満持続したのち完全寛解すること)、著明なストレス因の有無・産褥期発症(産後4週間以内)による下位分類、突然の発症・明確な誘因の存在・短い持続期間・統合失調症または短期精神病性障害を持つ血縁者がいないことが良好な予後の指標であること、第2世代抗精神病薬を第一選択として症状寛解後さらに1〜3か月投与を継続することを提案していること閲覧 2026-08-12
  2. 2.Brief Psychotic Disorder(Merck Manual Professional Edition・2025)妄想・幻覚・まとまりのない発語・著しく奇妙な行動またはカタトニアのいずれかが1日以上1か月未満持続し病前機能へ完全に回復するという診断定義、著明なストレス因を伴う場合が「短期反応性精神病」と呼ばれること、再発は珍しくないがエピソード間はおおむね良好に機能し症状が乏しいこと、心理社会的支援と必要時の抗精神病薬という治療方針閲覧 2026-08-12