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Drug Atlas · B2 Anticoagulants / 抗凝固薬 · 必修

アンチトロンビン濃縮製剤

antithrombin concentrate

分類
Anticoagulants / 抗凝固薬
商品名(日本)
ノイアート献血ノンスロンアコアラン
科目
Pharmacology
トピック
B2: Drugs influencing blood coagulation II: Anticoagulant drugs
承認適応
播種性血管内凝固
副作用
出血

🧠 全体像は、ヘパリンのように酵素の働きを「間接的に強める」薬ではなく、DICので減ってしまった基質そのもの()を直接補充する薬である。ヘパリンはの阻害速度を数千倍に加速する触媒だが、その触媒が働く相手である自体がDICで枯渇していれば、ヘパリンをいくら足しても効果は頭打ちになる。この「触媒を足すヘパリン」と「基質を足す」という役割分担を押さえると、敗血症関連DICでだけがGrade 1B(強い推奨)を得て、ヘパリンはエビデンス不足で明確な推奨が示されていない、という推奨の非対称が理解できる1。さらにヘパリンを併用せず、かつDICを合併しているという部分集団に限って生存上の利益が示唆されている点が実務上の要点になる2

薬効群の中での位置づけ

分類 薬剤 標的 特徴
AT経路・間接阻害(触媒を足す) ヘパリン ATの阻害速度を数千倍に加速 敗血症関連DICではエビデンス不足のため明確な推奨が示されていない1
AT基質そのものを補充 消費されたAT活性を直接回復 敗血症関連DICでGrade 1B。ヘパリン非併用のDIC合併例で生存上の利益が示唆される12
トロンビンの特異性を反転 トロンビン- 敗血症関連DICでGrade 1B

KyberSept試験は全体としては陰性だったが、「ヘパリン非併用+DIC合併」という部分集団だけを見ると生存上の利益が浮かび上がった。 ヘパリンを併用しなかった563例のうち、DICを合併していた229例では28日死亡率が群40.0%に対し群で14.6ポイント低かった(P=0.02)のに対し、DICを合併していない例では両群の差がほぼ消える(0.1ポイント、P=1.0)2「ヘパリン非併用」と「DIC合併」の両方が揃って初めて差が出るという限定つきの結果であり、この事後解析が「はヘパリンと併用しなくてよい(むしろ併用しない方がよい可能性がある)」という実務上の理解の根拠になっている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombin concentrate'>アンチトロンビン濃縮製剤</span>を投与"] --> B["血漿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombin'>アンチトロンビン</span>(AT)濃度を補充"]
    B --> C["AT自体がトロンビン(IIa)・Xaなどの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='serine protease'>セリンプロテアーゼ</span>を直接阻害"]
    C --> D["DICで消費され低下したAT活性を回復"]
    D --> E["過剰な凝固活性化を抑制"]
    B --> F{"ヘパリンを併用しているか"}
    F -->|"併用あり"| G["ヘパリンがAT阻害速度をさらに促進(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synergism'>相乗効果</span>)"]
    F -->|"併用なし"| H["AT単独でも消費されたAT活性を補充し抗凝固効果を発揮"]

💡 は本来ヘパリンの「」だが、DICでは主役が入れ替わる。 生理的にはヘパリン様物質がATの阻害能力を引き出す関係だが、DICで枯渇しているのはAT自体であるため、治療の主眼は「枯渇した基質を補う」ことに移る。ヘパリン併用は必須ではなく、むしろ出血リスクをするだけになりうる。

適応

領域 使いどころ
救急・ 敗血症関連DIC活性が低下した例(Grade 1B推奨)1
産科・外科 産科的・外科的DICなどでの緊急補充3
血液内科(先天性) 先天性に基づく傾向

用法・用量

日本の添付文書では、活性が正常の70%以下に低下したDICに対し、通常成人へ1日1,500国際単位(30単位/kg)を投与する。産科的・外科的DICなどでの緊急処置では1日1回40〜60単位/kgを投与する3。ヘパリンとの併用は必須ではなく、実際の投与量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分によるショックの既往3
  • 血漿由来製剤(一部)では感染症伝播リスクを完全には排除できず、感染の可能性が指摘されている3
  • ヘパリンを併用する場合は出血リスクのに注意する

副作用

頻度 内容
高頻度 出血
重篤・まれ ショック、アナフィラキシー、過敏症反応(発疹、蕁麻疹)3

まとめ

  • は、ヘパリンのように酵素反応を触媒するのではなく、DICで消費されたそのものを補充する薬である。
  • 敗血症関連DICでGrade 1B(強い推奨)とされ、と並ぶDIC標的の柱の一つ1
  • RCT(KyberSept試験)の事後解析では、ヘパリンを併用しないDIC合併例(229例)に限り28日死亡率が群40.0%より14.6ポイント低く、生存上の利益が示唆された。DICを合併しない例では差がほぼ無い2
  • 日本の添付文書ではAT活性70%以下のDICに30単位/kg、緊急時は40〜60単位/kgを投与する3
  • 禁忌は本剤成分によるショックの既往で、重大な副作用にショック・アナフィラキシーがある。

出典

  1. 1.Clinical practice guidelines for management of disseminated intravascular coagulation in Japan 2024. Part 1: sepsis(日本血栓止血学会(JSTH)・2025)敗血症関連DIC(Part 1)においてアンチトロンビン濃縮製剤と遺伝子組換えトロンボモジュリンがいずれもGrade 1B(強い推奨)とされる一方、ヘパリンとセリンプロテアーゼ阻害薬はエビデンス不足のため明確な推奨が示されていないことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Treatment effects of high-dose antithrombin without concomitant heparin in patients with severe sepsis with or without disseminated intravascular coagulation(Journal of Thrombosis and Haemostasis・2006)大規模RCT(KyberSept試験)のうちヘパリンを併用しなかった563例(プラセボ277例・アンチトロンビン286例)を対象とした事後解析で、そのうちDICを合併していた229例(40.7%)に限ると28日死亡率はプラセボ群40.0%に対し高用量アンチトロンビン群で14.6ポイント低く(約25.4%、P=0.02)、DICを合併していない例では差がほぼ無かった(0.1ポイント、P=1.0)ことを確認した。ヘパリン非併用かつDIC合併という部分集団に限って生存上の利益が示唆された解析である閲覧 2026-08-10
  3. 3.ノイアート静注用500単位/1500単位 医薬品情報(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII)(一般社団法人日本血液製剤機構 / KEGG MEDICUS)日本の添付文書上、DICでの用法・用量はアンチトロンビン活性が正常の70%以下に低下した場合にヘパリン持続点滴下で1日1,500国際単位(30単位/kg)、産科的・外科的DICなど緊急時は1日1回40〜60単位/kgであること、禁忌が本剤成分によるショックの既往であること、重大な副作用としてショック・アナフィラキシーが記載されていることを確認した閲覧 2026-08-10