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Drug Atlas · B2 Anticoagulants / 抗凝固薬 · 必修

遺伝子組換えトロンボモジュリン

recombinant thrombomodulin

分類
Anticoagulants / 抗凝固薬
商品名(日本)
リコモジュリン
科目
Pharmacology
トピック
B2: Drugs influencing blood coagulation II: Anticoagulant drugs
承認適応
播種性血管内凝固
副作用
出血

🧠 全体像は、ヘパリンやのように(AT)経路を介さず、トロンビンそのものに結合して性質を反転させるという唯一無二の機序を持つ抗凝固薬である。トロンビンは本来フィブリノゲンを切ってフィブリンを作る「凝固の実行者」だが、と複合体を作った瞬間、を活性化する「凝固の抑制者」に役割を変える。このの反転こそが、敗血症関連DICでと並びGrade 1B(強い推奨)を与えられている根拠になっている。

薬効群の中での位置づけ

DICを標的としたは、の違う3系統に分かれる。

分類 薬剤 標的 特徴
AT経路・間接阻害 ヘパリン AT活性化→IIa・Xa阻害 敗血症関連DICではエビデンス不足のため明確な推奨が示されていない。造血器腫瘍関連DICでは弱い非推奨(Grade 2C)1
AT基質を補充 消費されたAT自体を補う 敗血症関連DICでGrade 1B
特異性を反転 トロンビン- 敗血症関連DICでGrade 1B、造血器腫瘍関連DICでGrade 2B1

「DICだから抗凝固薬」ではなく、薬ごと・基礎疾患ごとに推奨の強さが違う。 敗血症関連DICでGrade 1B(強い推奨)を得ているのはの2剤だけで、ヘパリンと阻害薬はエビデンス不足を理由に明確な推奨が示されていない。さらに造血器腫瘍関連DIC(APL含む)になると、は弱い推奨(Grade 2B)に落ち、ヘパリンを含む他の抗凝固薬は弱い非推奨(Grade 2C)に転じる1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recombinant thrombomodulin'>遺伝子組換えトロンボモジュリン</span>を投与"] --> B["内因性トロンビンと複合体を形成"]
    B --> C["トロンビンの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='substrate specificity'>基質特異性</span>が変化する"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Protein C'>プロテインC</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='APC'>活性化</span>"]
    D --> E["APCがVa・VIIIaを分解し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombin generation'>トロンビン産生</span>をさらに抑制"]
    B --> F["トロンビンがフィブリノゲンを切断する作用が失われる"]
    F --> G["直接的な抗凝固作用"]
    A --> H["HMGB1などのDAMPsに結合"]
    H --> I["炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial injury'>血管内皮傷害</span>を抑制(抗炎症作用)"]

💡 「トロンビンを阻害する」のではなく「トロンビンの仕事を変える」薬という理解が本質。 など)がトロンビンの活性そのものを潰すのに対し、はトロンビンを捕まえて活性化酵素として働かせる。DAMPsへの結合による抗炎症作用も併せ持つため、単なる抗凝固薬以上の役割が期待されている。

薬物動態

急性を伴うDIC患者を対象とした試験では、率はと相関する一方、総体クリアランス自体は腎機能が著明に低下した患者でも比較的保たれも良好であったことが報告されている2型の薬剤でありながら腎機能低下例で必ずしも減量を要さない可能性がある点は、実臨床での判断に直結する知見である。

適応

領域 使いどころ
救急・ 敗血症関連DIC(Grade 1B推奨)1
血液内科 造血器腫瘍関連DIC(APLを含む、Grade 2Bの弱い推奨)1

用法・用量

1日1回、で投与する。国内では0.06 mg/kgを1日1回30分かけてし、6日間投与するという設計が用いられた3。実際の用量・投与期間・腎機能に応じた調整の要否は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 活動性の重大な出血がある患者では、抗凝固作用によって出血を助長するリスクを慎重に評価する
  • 造血器腫瘍関連DIC(APLを含む)では推奨の強さが敗血症関連DICより弱く、位置づけが異なる点に注意する1
  • 他の抗凝固薬・との併用では出血リスクがされる

副作用

頻度 内容
高頻度 出血(穿刺部出血、消化管出血など)
重篤・まれ 重篤な出血、過敏症反応

まとめ

  • トロンビンに結合し、そのを「フィブリノゲン切断」から「活性化」へ反転させる、AT経路を介さない唯一の抗凝固薬である。
  • (APC)がVa・VIIIaを分解して凝固をさらに抑制し、HMGB1などDAMPsへの結合による抗炎症作用も併せ持つ。
  • 敗血症関連DICではと並びGrade 1B(強い推奨)だが、造血器腫瘍関連DICでは弱い推奨(Grade 2B)にとどまり、基礎疾患ごとに推奨が異なる1
  • 第III相RCTではヘパリンと比較しDIC離脱率が有意に高く、出血関連有害事象もむしろ少なかった3
  • を伴うDIC患者でも総体クリアランスは比較的保たれることが報告されている2

出典

  1. 1.Clinical practice guidelines for management of disseminated intravascular coagulation in Japan 2024. Part 1: sepsis(日本血栓止血学会(JSTH)・2025)敗血症関連DIC(Part 1)ではアンチトロンビン濃縮製剤と遺伝子組換えトロンボモジュリンがいずれもGrade 1B(強い推奨)とされる一方、ヘパリンとセリンプロテアーゼ阻害薬はエビデンス不足のため明確な推奨が示されていないこと、造血器腫瘍関連DIC(Part 2)では遺伝子組換えトロンボモジュリンが弱い推奨(Grade 2B)、ヘパリンを含む他の抗凝固薬が弱い非推奨(Grade 2C)であり、基礎疾患によって推奨の強さが異なることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial(Journal of Thrombosis and Haemostasis・2007)造血器腫瘍関連・感染関連DIC患者234例を対象とした第III相二重盲検RCTで、ART-123(0.06 mg/kgを30分かけて1日1回、6日間)群のDIC離脱率が66.1%とヘパリン群(8単位/kg/時、24時間持続)49.9%より高く(差16.2%、95%信頼区間3.3〜29.1)、投与開始7日後までの出血関連有害事象もART-123群43.1%でヘパリン群56.5%より少なかった(P=0.0487)ことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Pharmacokinetics of recombinant human soluble thrombomodulin in disseminated intravascular coagulation patients with acute renal dysfunction(Thrombosis and Haemostasis・2017)急性腎機能障害を伴うDIC患者43例にART-123を反復投与した薬物動態試験で、尿中排泄率はクレアチニンクリアランスと相関する一方、総体クリアランス自体はクレアチニンクリアランスが著明に低下した患者でも比較的保たれ、忍容性も良好であったことを確認した閲覧 2026-08-10