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Microbe Atlas · ウイルス

Yellow fever virus

黄熱ウイルス

分類
フラビウイルス / Flaviviruses
性状
エンベロープあり Enveloped(+)ssRNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/23: Flaviviruses (yellow fever, Dengue)5/21: Causative agents of arthropod-borne viral infections (list)
原因となる疾患
デング熱ほかアルボウイルス感染症(黄熱・ジカ熱)

🧠 全体像:はFlavivirus属(“flavus”=ラテン語で黄色、属名自体がこのウイルスの黄疸症状に由来する)のであり、と同じ媒介・ヒトとサルを宿主とするが、標的臓器が肝臓である点が病像を決定づける。もう一つの核心は、他の多くのと違い()という極めて有効な予防手段が古くから確立している点——単回接種でが得られるため、流行地への渡航には接種証明()が入国要件になっている国も多い。

微生物学的な特徴

Flavivirus属・に属するで、エンベロープを持つをとる。属名の由来そのものとなった代表種であり、と近縁だが標的臓器・臨床像は大きく異なる。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Aedes aegypti'>ネッタイシマカ</span>刺咬"] --> B["局所リンパ節での初期複製"]
    B --> C["ウイルス血症(感染期:発熱・筋肉痛)"]
    C --> D{"寛解して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resolution'>終息</span>するか<br>(大半)"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resolution'>終息</span>"| E["回復"]
    D -->|"感染者の約15%が重症化"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic phase'>中毒期</span>:肝細胞への直接感染"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular necrosis'>肝細胞壊死</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midzonal'>中帯域</span>優位)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='clotting factor synthesis'>凝固因子合成</span>障害"]
    G --> H["黄疸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic diathesis'>出血傾向</span>・腎不全<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='black vomit'>黒色嘔吐</span>を伴うことがある)"]

💡 臨床経過は古典的に3相(感染期→→)で説明される。 初期症状は発熱・頭痛・全身の痛み・悪心・嘔吐・脱力で、通常3〜4日で消える。多くの患者はそのまま回復するが、感染した人の約15%が重症化し、高熱のとともにによる黄疸・による(口・鼻・眼・胃からの出血)・臓器障害・ショックが進行する。この段階に至った患者の約50%が7〜10日で死亡する1。潜伏期は3〜6日。

⭐ 黄疸は初期症状ではなく重症化の指標である。 は黄疸を重症の指標と位置づけ、を含む入院の根拠としている1。

⚠️ は禁忌。 では著明なを伴うため、診断目的のは致死的な出血を招きうる——組織学的診断は原則として剖検でのみ行う。

感染経路と疫学

  • :サル↔Aedes属(アフリカではAedes africanus、南米ではHaemagogus属など)の樹冠での感染環——森林作業者・狩猟者が偶発的に感染する
  • :(Aedes aegypti)を介したヒト→蚊→ヒトの感染環——人口密集地での流行を起こしうる
  • アフリカ・中南米に分布する一方、が生息するアジアでは発生がみられない(歴史的な渡航・ワクチン接種要件・免疫の背景など複合的な理由が推定されているが、明確な単一の説明はない)という疫学的な特異点がある
  • 高リスクに分類されているのはアフリカの27か国と中南米の13か国。アフリカと米州で年間に推計6万7000〜17万3000件の重症感染と3万1000〜8万2000人の死亡が生じ、負担の大半はアフリカにある1
  • 流行地への渡航者はワクチン接種証明()を入国要件とされることが多い(国際保健規則に基づく)1

起こす疾患

病型 特徴
不〜軽症 多くはこの段階でする
感染期 発熱、頭痛、全身の痛み・、悪心、嘔吐、脱力。通常3〜4日で消える1
(重症型、感染者の約15%) 高熱のとともに黄疸(病名の由来)・肝不全・(口・鼻・眼・胃からの出血、血性下痢、)・腎不全・ショックが同時進行。この段階の患者の約50%が7〜10日で死亡する1

ほか(・)も参照。

診断

  • 時期で使い分ける:早期は血液の、後期はまたはPRNTによる1
  • ⚠️ は出血リスクのため禁忌——他の(・・など)や他の出血熱との鑑別は・渡航歴・血清学で行う
  • の上昇・凝固異常・腎機能悪化をに評価する

治療と予防

  • 治療は支持療法が中心——特異的な抗ウイルス薬はない。休息と補水、肝不全・腎不全・発熱の管理、への抗菌薬からなる。ソホスブビルとTY014は研究の場に限って推奨される段階にとどまる1
  • ⭐ ()は単回接種で生涯にわたるを与え、追加接種を要さない2。免疫は10日以内に80〜100%、30日以内に99%超で成立する1。の中では例外的に確立された予防手段であり、渡航者向けに広く接種されている
  • WHOが接種を推奨していないのは次の4群1。まれに重篤な有害事象(YEL-AVD、YEL-AND)が報告されている
接種を推奨しない対象 補足
生後9か月未満の乳児 月齢9か月に達してから接種する
妊婦 ⚠️ ただし流行時は除く——な禁忌ではなく、流行下では接種しうる
重度のがある人 鶏卵由来の製法による
または胸腺疾患のある人 のため
  • 60歳を超える場合は禁忌ではなく、接種の利益とリスクの比を慎重に検討する1
  • 予防のもう一つの柱は。⚠️ は日中に吸血するため、蚊帳の効果は相対的に低い1

まとめ

  • はFlavivirus属ので、媒介・ヒトとサルを宿主とする点はと共通するが、標的臓器は肝臓(デングは骨髄)。
  • (サル-蚊)と(ヒト-蚊-ヒト)の2つの感染環を持ち、アフリカ・中南米に分布するがアジアでの発生はみられない。
  • 臨床経過は感染期→→感染者の約15%が至る(黄疸・・腎不全)という3相を取り、の患者の約50%が7〜10日で死亡する。黄疸は初期症状ではなく重症化の指標で、入院の根拠になる。
  • は出血リスクのため禁忌——診断は早期は、後期は・PRNTによると臨床経過で行う。
  • ()は単回接種で生涯免疫を与え追加接種を要さない点が最大の特徴で、渡航者には(接種証明)が要件となる国も多い。
  • ワクチンを推奨しないのは生後9か月未満・妊婦(流行時は除く)・重度の・または胸腺疾患。60歳超は禁忌ではなく利益とリスクを慎重に検討する。

出典

  1. 1.Yellow fever(World Health Organization・2025)2025年10月20日付のファクトシート本文で確認した。初期症状が発熱・頭痛・全身の痛み・悪心・嘔吐・脱力で通常3〜4日で消えること、黄熱に感染した人の約15%が重症化し、症状が高熱の再燃・黄疸・嘔吐・口鼻眼と胃からの出血・臓器障害・ショックであること、この段階に至った患者の約50%が7〜10日で死亡すること、潜伏期が3〜6日であること、黄疸が重症の指標であって集中治療室を含む入院の根拠になること、アフリカの27か国と中南米の13か国が高リスクに分類されること、アフリカと米州で年間に推計6万7000〜17万3000件の重症感染と3万1000〜8万2000人の死亡が生じ負担の大半がアフリカにあること、特異的な抗ウイルス薬が無く臨床管理はおおむね支持療法であり2025年の臨床管理ガイドラインが手順化された方針を示していること、投与しうる2つの抗ウイルス薬であるソホスブビルと単クローン抗体TY014は研究の場に限って推奨されること、診断が早期には血液のRT-PCR、後期にはELISAまたはPRNTによる抗体検出で行われること、ワクチンは単回接種で生涯免疫を与え追加接種を要さず、10日以内に80〜100%、30日以内に99%超で免疫が成立することを確認した。接種が推奨されないのは生後9か月未満の乳児・妊婦(ただし流行時は除く)・重度の卵アレルギーがある人・重度免疫不全または胸腺疾患のある人で、60歳を超える場合は接種の利益とリスクの比を慎重に検討すべきとしている。国際保健規則のもとで各国は渡航者に接種証明を求めうること、蚊は日中に吸血するため殺虫剤処理蚊帳の効果が相対的に低いことも確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Vaccines and vaccination against yellow fever: WHO Position Paper, June 2013--recommendations(Vaccine(World Health Organization / Strategic Advisory Group of Experts on Immunization)・2015)Europe PMCの抄録で確認した(全文は未取得)。黄熱ワクチンの単回接種が黄熱に対する持続的で生涯にわたる防御免疫を与えるのに十分であり追加接種は必要でないこと、この文書が2003年の見解表明を置き換えたものであり、SAGEの2013年4月会合での議論を反映していることを確認した。閲覧 2026-09-27