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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

デング熱ほかアルボウイルス感染症(黄熱・ジカ熱)

Dengue fever and other arboviral infections (yellow fever, Zika)

別名
デング熱黄熱ジカ熱骨折熱
臓器系
感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 3/23:フラビウイルス(黄熱・デング)微生物学 3/24:フラビウイルス:ダニ媒介性脳炎・ウエストナイル・ジカウイルス
鑑別疾患
チクングニア熱レプトスピラ症腎症候性出血熱
原因微生物
Dengue fever virusYellow fever virusWest Nile virusTick-borne encephalitis virus
検査値
ヘマトクリット血小板数

🧠 全体像:Flavivirus属は「蚊やダニに刺されて起こる、標的臓器の異なる複数の病気」の集合として読む。同じから始まっても、は肝臓を狙って黄疸(jaundice=「」の名の由来)を来し、は骨髄を狙って血小板減少・()を来す。は成人には無害に近いが胎盤を越えて胎児の脳を狙う。この「同じ蚊、違う標的臓器」という対比軸に、ダニ媒介・鳥リザーバーで神経系を狙うTBEV・West Nile virusを加えると、Flavivirus属全体の見取り図が完成する。

構造・分類と伝播様式

項目 内容
ゲノム ssRNA、エンベロープあり、
分類 Flavivirus属はに属する一属。大半が節足動物媒介性(例外は=血液媒介性)
ウイルス ベクター 宿主・リザーバー 主標的臓器/系統
Yellow fever virus ヒト・サル 肝臓
Dengue virus ヒト・サル 骨髄
ヒト 胎盤・胎児脳()
West Nile virus (ウイルスにより死亡) 中枢神経系
Tick-borne encephalitis virus, TBEV マダニ(+の経口摂取) ヒト 中枢神経系
flowchart TD
  A["蚊/ダニ媒介性Flavivirus感染"] --> B["Yellow fever virus:肝臓"]
  A --> C["Dengue virus:骨髄"]
  A --> D["Zika virus:胎盤・胎児脳"]
  A --> E["West Nile virus / TBEV:中枢神経系"]
  B --> F["黄疸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='back pain'>背部痛</span>・血性下痢"]
  C --> G["高熱・関節痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='morbilliform rash'>麻疹様発疹</span>"]
  C --> H["重症化:血小板減少→出血熱・腎不全"]
  D --> I["成人:多くは無症状"]
  D --> J["妊娠中感染→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal microcephaly'>胎児小頭症</span>"]
  E --> K["脳炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flaccid paralysis'>弛緩性麻痺</span>・昏睡"]

デング熱——別名「骨折熱」

  • ウイルスは骨髄に感染する。症状:高熱・頭痛・・嘔吐・筋肉痛・関節痛。
  • :——圧迫するとする。
  • 重症化の機序:初感染では軽症だが、異なる血清型(DENV-1〜4)への時に、既存のがウイルスの取り込みを促進する(ADE)により重症化しやすい。

⚠️ 重症(デング出血熱/デングショック症候群)はと血小板減少によるが主体。 (腹痛、持続嘔吐、腹水/胸水、粘膜出血、、、上昇と急減の同時進行)の出現を見逃さず、輸液量を細かく調整する。💡 上昇と血小板減少が同時に進むことが重要で、これはによる血漿の(血球が濃縮される)を反映する。とアスピリンは出血・腎障害リスクを高めるため禁忌——にはを用いる。

黄熱

  • 症状:黄疸(jaundice、病名の由来)、、血性下痢、悪心、頭痛、嘔吐。
  • 重症例では肝不全・腎不全・を伴う「期」に至り致死率が上昇する。

ジカウイルス感染症

  • 感染者の多くは無症状。症状がある場合は急性発症の発熱+、関節痛、結膜炎、筋肉痛・頭痛を伴うことがある。
  • ⚠️ 妊娠中の感染はおよびその他の重篤な胎児脳障害の原因となる——先天性ウイルス感染症の代表例の一つで、への妊婦の渡航歴聴取が重要になる。詳細はとのノートに委ねる。
  • 💡 リスクはどの三半期の感染でも報告されているが、時期による勾配がある。 米国領で報告された、直近の感染を示すをもつ妊娠終了例2,549件では、児の5%(122例)にがみられた。核酸検査で感染が確定した例を感染の判明した時期別にみると、第1・第2・でそれぞれ8%・5%・4%である1。⚠️ この5%・8%・5%・4%はだけの割合ではない——のによる「ジカ関連」、すなわち①および/またはと、②それらを伴わない・眼異常・中枢神経機能障害の結果を合わせた割合である(該当した122例のうち89%は①に分類された)。⚠️ 原著自身は、どの三半期の感染でもが報告されたというこの所見についてさらなる検証を要すると但し書きしている。

参考:神経系指向性のFlavivirus(West Nile熱・ダニ媒介性脳炎)

  • West Nile熱:媒介、がリザーバー。多くは無症状〜軽症だが、脳炎・髄膜炎、、痙攣、昏睡に至ることがある。
  • (TBE):マダニ刺咬に加え(ヤギ・ヒツジ・の生乳・チーズ)の経口摂取でも感染しうる、の中では珍しい経路を持つ。発熱・倦怠感から髄膜炎・に進行することがあり、致死率は約1%。旅行者・ハイカー向けのワクチンが実用化されている。

診断

  • 血清学的検査:、、が中心。
  • では(発症早期)とIgM/IgG血清学(発症後期・既往鑑別)を組み合わせる。・の評価が重症化の早期発見に重要。

治療・予防

  • 治療:対症療法——十分な補液が中心。では/アスピリンを避ける。
  • 予防:
    • :が古くから存在し、渡航者向けに接種される。
    • :Qdenga(TAK-003)が2023年に SAGEから高度の6〜16歳児への導入を推奨され、血清判定不要(既感染・未感染いずれにも接種可)で使用が広がっている。旧世代のDengvaxia(CYD-TDV)は未感染者への接種でADEによる重症化リスクが問題となり既感染者限定の使用にとどまっていたが、需要低下により製造は終了した。
    • ・West Nile virus:実用化ワクチンはなく、が中心。
    • TBEV:が旅行者・ハイカー・屋外活動従事者向けに実用化されている。

鑑別:同じ蚊が運ぶ別の科のウイルス

⚠️ は本ノートが扱う属ではなく、Togaviridae科 Alphavirus 属である。 Aedes 属というとが重なるため同じ患者層で鑑別に上がるが、分類上は別系統でも無い。⭐ 分けるのは「関節痛の激しさ・持続」対「血小板減少と上昇」——チクングニアは激烈で遷延する対称性が主役では目立たず、は関節痛がそれほどでもない代わりにの低下とが重症化のになる。⚠️ 鑑別がつくまでとアスピリンを避け、はに限る。

まとめ

  • Flavivirus属はssRNA・エンベロープあり・で、大半が節足動物媒介性(例外は)。標的臓器の違いで臨床像が大きく分かれる。
  • (骨髄標的、、異なる血清型へのでADEによる重症化)と(肝臓標的、黄疸)はともに媒介。
  • は成人にはほぼ無害だが、妊娠中の感染はを含む「ジカ関連」の原因となる先天性ウイルス感染症の代表。はどの三半期の感染でも報告されており、核酸検査で感染が確定した例では第1三半期8%・5%・4%と第1三半期が最も高い。
  • West Nile virus(Culex蚊・リザーバー)とTBEV(マダニ・)は神経系を標的とし、脳炎・に至りうる。
  • 治療はいずれも対症療法(補液)が中心。予防は・デング(Qdenga)・TBEにワクチンが実用化されているが、ジカ・West Nileにはワクチンがなくに頼る。

出典

  1. 1.Pregnancy Outcomes After Maternal Zika Virus Infection During Pregnancy — U.S. Territories, January 1, 2016–April 25, 2017(CDC(MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report)・2017)PMC5657842でMMWRの全文を閲覧した。米国領で2016年1月1日〜2017年4月25日に報告された、直近のジカウイルス感染を示す検査所見をもつ妊娠終了例2,549件(生産児2,464件・妊娠喪失85件)のうち、児の5%(122例)に「ジカウイルス感染に関連しうる先天異常」がみられたこと、核酸検査で感染が確定した例を感染の判明した時期別にみると第1・第2・第3三半期でそれぞれ8%・5%・4%であったこと、該当した122例のうち108例(89%)が「脳形成異常および/または小頭症」に分類されたこと、原著が「どの三半期に感染が同定された妊娠でもジカ関連先天異常が報告された」ことを本報告の要点とする一方で、この妊娠期間を通じたリスクという所見は further study is needed to confirm this finding と但し書きしていることを確認した。⚠️ この割合は小頭症単独ではなく、CDCのサーベイランス基準による「ジカ関連先天異常」(脳形成異常および/または小頭症、ならびにそれらを伴わない神経管閉鎖不全・眼異常・中枢神経機能障害の結果)全体の割合である閲覧 2026-09-06