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包括的合併症指数

Comprehensive Complication Index

別名
CCI
臓器系
全身
科目
Surgery
トピック
外科学 G-08:術後管理と術後合併症

🧠 全体像:Comprehensive Complication Index(CCI)は、1人の患者に起きたすべての術後合併症を、0〜100の1つの数字にまとめる指標である。は合併症1つ1つに等級を付けるが、患者単位で報告するときは最も重い等級だけが残りやすく、軽い合併症が積み重なった経過は見えなくなる。CCIは等級ごとの重みを足し合わせて平方根を取ることで、軽い合併症の積み重ねも数字に反映する。0は合併症なし、100は死亡を表す。⚠️ 略称が同じ「」とは別物で、こちらは術後に起きた合併症を測る事後の指標である。

目的と適用場面

内容
目的 1人の患者の術後合併症のした負担を、連続した0〜100の尺度で表す1
対象 手術を受け、合併症をで等級づけできる患者(外科全般。泌尿器外科でも検証されている)
使う場面 外科のの評価項目、術式や施設間の合併症の比較、複数の合併症を持つ患者の経過の要約
位置づけ の上に載る集計法。合併症ごとの等級づけは変わらず、それを患者単位にまとめ直す
評価しないもの 手術前のリスク(などの役割)、合併症の原因

原著は、合併症の重みを472人が30種の合併症を評価した中央値から決め、1299例で検証した。試験の治療効果を従来の指標より鋭敏に検出できた1。

構成要素と計算

⭐ 点数表から選ぶ形式ではなく、合併症ごとのの等級から重みを引き、式で合算する。患者に起きた合併症の数だけ重みが入る。

等級 重み(wC) その合併症が単独で起きたときの指数
I 300 8.7
II 1750 20.9
IIIa 2750 26.2
IIIb 4550 33.7
IVa 7200 42.4
IVb 8550 46.2
V(死亡) 計算に入れない 常に100

値は泌尿器外科での検証報告に記載された数字である2。

全体の指数は次の式で求める2。

CCI = √(各合併症の重みの合計)÷ 2

単独の合併症では √重み ÷ 2 がそのまま上の表の右の列になる(たとえば等級IIは √1750 ÷ 2 = 20.9)。等級Vの患者は式を使わず100とする。

flowchart TD
    A["患者に起きた合併症を全部挙げる"] --> B["合併症ごとに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clavien-Dindo classification'>Clavien-Dindo分類</span>の等級を決める"]
    B --> C{"死亡(等級V)があるか"}
    C -->|"はい"| D["CCI=100"]
    C -->|"いいえ"| E["等級ごとの重みを表から引く"]
    E --> F["全部の重みを足し合わせる"]
    F --> G["平方根を取り、2で割る"]
    G --> H["CCI(0〜100)"]

計算例

下の値は上の式から当ノートで計算した例示で、報告された実測値ではない。

合併症の組み合わせ 重みの合計 CCI
等級IIが1件 1750 20.9
等級I+等級II 2050 22.6
等級IIが2件 3500 29.6
等級I+等級II+等級IIIa 4800 34.6
等級IIIbが1件 4550 33.7
等級I+等級II+等級IIIb 6600 40.6

💡 平方根を取るので、合併症が増えても指数は足し算のようには伸びない。 等級IIが2件(29.6)は等級IIIaの1件(26.2)より高く、等級IIIbの1件(33.7)には届かない。一方で等級IIIbに等級IIと等級Iが加わっても40.6にとどまる。重い合併症が1件あるとそれが指数を支配し、軽い合併症の積み重ねは補助的に効く。

解釈とカットオフ

連続した尺度なので、等級のような境目は設けず、群の平均・中央値を比べる使い方が基本である。

場面 取り扱い
1人の指数 0は合併症なし、100は死亡。死亡以外の合併症が1件だけのとき取りうる最大値は等級IVbの46.2なので、これを超え100未満の値は複数の合併症の重なりを意味する(死亡は100)
群の比較 では平均の差で比べる。腹部外科では、治療群間の平均12点の差を臨床的に意味のある差とする提案がある(の推定は大腸外科で6.1〜22.2点、で6.2〜13.8点)3
症例数の見積もり 泌尿器外科の仮想の試験(仮定に基づく試算)では、合併症の有無を比べる設計に対し、CCIでは必要症例数がで−25%、で−74%、で−80%になった2
何を計算に入れるか 関連の有無にかかわらず、個々の合併症をすべて入れる4

泌尿器外科682例の検証(入院中または術後30日以内の合併症)では、複数の合併症を持つ患者が9.4〜46.6%あり、して評価するとでの評価が上がる患者が2.4〜32.4%だった。指数の平均はで26.3、に基づく値は20.4で、でも8.4対7.0と差があった。は合併症が少なく、5.8対5.3で差が出なかった(p=0.102)2。

⭐ される情報の量は手術が大きいほど、観察が長いほど増える。一般外科1,212例のうち合併症があった24%(290例)の44%が退院までに複数の合併症を持ち、これらでは従来の等級づけより多くの情報が得られた。観察は術後3か月まで延ばすほど価値が増す4。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ の弱点をそのまま引き継ぐ。 等級は治療の強さで決まるので、全身麻酔かかで同じ処置の等級が動く。病態の重さが違っても、全身麻酔下の処置であればどちらも等級IIIbになる。指数はこの等級を入力にするため、等級づけの揺れは指数の揺れになる2。

⚠️ 記録の漏れがあると過小評価になる。 軽い合併症が記録されない、退院後の外来での合併症が拾われない、といった漏れがあると、指数は実際の負担より低く出る。指数の利点は合併症が複数ある患者で最もよく表れるので、すべての合併症を漏らさず記録することが前提になる2。

⚠️ 観察期間と計算に入れる範囲をそろえる。 観察が長いほど指数にされる情報が増える。退院時と術後3か月では拾われる合併症が違うので、比較するときは観察期間と、関連のない合併症も入れるかどうかをそろえる4。

⚠️ 手術前のリスク評価には使えない。 起きた合併症に対して付ける事後の指標であり、術前の全身状態の評価には使えない。

⚠️ 平均の差には使えるが、1人の指数の意味づけは慎重に。 の12点は群間のについての提案で、個々の患者の重症度の線引きではない。腹部外科のをもとにした推定で、他の術式にそのまま当てはめない3。

まとめ

  • Comprehensive Complication Indexは、1人の患者の全術後合併症を、の等級ごとの重みから0〜100の1つの値にまとめる。0は合併症なし、100は死亡。
  • 式は「各合併症の重みの合計の平方根を2で割る」。重みは等級I 300、II 1750、IIIa 2750、IIIb 4550、IVa 7200、IVb 8550で、等級Vは常に100とする。
  • 平方根のため、合併症が増えても足し算ほどには伸びず、重い合併症が1件あるとそれが指数を支配する。
  • 連続尺度なので群の平均で比べるのが基本で、腹部外科では平均12点の差を臨床的に意味のある差とする提案がある。
  • 等級づけの揺れと記録の漏れがそのまま指数に出る。観察期間と、計算に入れる合併症の範囲をそろえて比較する。

出典

  1. 1.The comprehensive complication index: a novel continuous scale to measure surgical morbidity(Annals of Surgery(Slankamenac K, Graf R, Barkun J, Puhan MA, Clavien PA)・2013)抄録で確認した。多くの研究が最重症の合併症だけを報告し軽い事象を無視するという問題に対し、Clavien-Dindo分類で整理した合併症を重症度で重み付けして、1人の患者の全合併症を0〜100の連続尺度にまとめる指標を作った。重みは472人が30種の合併症を評価した中央値から得て、1299例で検証した。ランダム化試験での治療効果を従来の罹患率指標より鋭敏に検出し、術後の健康状態と負に、合併症の組み合わせに対する患者の評価点と強く相関した。標準化された臨床試験の主要評価項目になりうると結論している。全文は購読誌のため、重みの数値と式は抄録に無く、別の資料(kowalewski-worldjurol-cci-2021)で照合した。閲覧 2026-10-28
  2. 2.The comprehensive complication index (CCI): proposal of a new reporting standard for complications in major urological surgery(World Journal of Urology(Kowalewski KF, Müller D, Mühlbauer J, et al.)・2021)PMC8166677の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。等級ごとの重みwCがI=300・II=1750・IIIa=2750・IIIb=4550・IVa=7200・IVb=8550で、単独で起きたときの指数が順に8.7・20.9・26.2・33.7・42.4・46.2、等級Vは常に100であること、全体の指数が「各合併症の重みの合計の平方根を2で割った値」であることを確認した(式はMathMLの分数・平方根で確認し、重みと単独値の対応も計算で照合した)。泌尿器外科682例(根治的膀胱全摘172・前立腺全摘297・腎部分切除213)で、入院中または術後30日以内の合併症について、複数の合併症を持つ患者は9.4〜46.6%、累積して評価するとClavien-Dindo分類での評価が上がる患者が2.4〜32.4%だった。指数の平均は膀胱全摘でCCI 26.3(標準偏差20.8)に対しClavien 20.4(16.7)、腎部分切除で8.4対7.0、前立腺全摘で5.8対5.3(p=0.102)。膀胱全摘では在院日数の予測でClavien-Dindo分類より正確だった(p<0.001)。仮想の臨床試験の必要症例数はCCIで膀胱全摘−25%・腎部分切除−74%・前立腺全摘−80%と見積もられた。限界として、Clavien-Dindo分類の弱点(全身麻酔か局所麻酔かで等級が動く、病態の重さが違っても同じ等級になる)がそのまま持ち越されること、軽い合併症や退院後の情報が漏れると過小評価になることを挙げている。閲覧 2026-10-28
  3. 3.Beyond P Values: Novel Minimal Important Difference of the Comprehensive Complication Index That Reflects a Meaningful Outcome for Patients Undergoing Major Abdominal Surgery(Annals of Surgery(Abbassi F, Pfister M, Braun J, et al.)・2025)抄録で確認した。30日後の指数と、最小重要差が既知の患者報告アウトカム尺度を測った3件のランダム化試験と1件の前向き観察研究(腹部大手術1,583例)の個票を統合し、アンカー法で指数の最小重要差を推定した。大腸外科で6.1〜22.2点、肝胆膵外科で6.2〜13.8点となり、著者らは腹部外科の治療群間で平均12点の差を臨床的に意味のある差と提案している。全文は購読誌のため、各アンカー尺度の詳細は未確認。閲覧 2026-10-28
  4. 4.The Comprehensive Complication Index (CCI®): Added Value and Clinical Perspectives 3 Years "Down the Line"(Annals of Surgery(Clavien PA, Vetter D, Staiger RD, et al.)・2017)抄録で確認した。1年間に前向きに集めた一般外科1,212例のうち24%(290例)に合併症があり、その44%(127例)が退院までに複数の合併症を持ち、これらでは指数が従来の等級づけ以上の情報を加えた。上乗せされる情報は手術が大きいほど、観察が術後3か月まで長いほど多い。複雑・議論のある症例を世界の外科医90人に示して重みづけの合意を探り、関連の有無にかかわらず個々の合併症をすべて指数の計算に入れることを勧めている。全文は購読誌のため、Methods・Resultsの詳細は未確認。閲覧 2026-10-28