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Hinchey分類

Hinchey classification

別名
Hinchey stagemodified Hinchey classification改変Hinchey分類
臓器系
消化器
科目
Surgery
トピック
外科学 O/19-20:大腸ポリープ・ポリポーシス症候群・憩室症の外科的側面外科学 S-19:大腸憩室症・憩室炎外科学 G/11:消化管ストーマ(種類と適応)
適用疾患
憩室症・憩室炎

🧠 全体像:は、の穿孔・膿瘍がどこまで広がったかを4段階に分け、重症度と対応(抗菌薬で様子をみる/ドレナージ/緊急手術)の目安にする分類である。結腸周囲の限局した膿瘍(I)、骨盤内・腹腔内・後腹膜の膿瘍(II)、の(III)、の(IV)の順に重くなる。もとは手術所見に基づく分類だが、CTが普及してからは画像所見の版が多く使われる。⚠️ どの分類も転帰予測で優れていると証明されておらず、分類だけで治療を決めない。

目的と適用場面

内容
目的 (特に合併性)の進行度を共通の言葉で表し、の検討と報告に使う1
対象 急性の左側(S状結腸)で、膿瘍・穿孔・腹膜炎を疑う、または確認した患者
使う場面 緊急手術の所見の記載、CT所見の病期づけ、症例報告・研究での重症度の層別
評価しないもの 全身状態(血行動態、併存症、免疫状態)。これらは分類とは別に判断する

構成要素と病期

⭐ 点数を足す形式ではなく、膿瘍と腹膜炎の広がりで決める順序分類である。

原法(手術所見に基づく4段階)

病期 所見 範囲
I 結腸の近くに限る
II 骨盤内・腹腔内・後腹膜の膿瘍 結腸から離れた部位の限局した膿瘍
III の 腹膜全体
IV の 腹膜全体(便の汚染を伴う)

原法は、手術で膿瘍と腹膜炎が確認された患者の重症度をこの4段階に分けた1。

CT所見で組み替えた版

CTで膿瘍や遊離ガスを描出できるようになってから、原法をCT所見で運用しやすくした分類が複数提案された1。

(Kaiser、2005年)

病期 所見
0 軽症の臨床的
Ia 結腸周囲に限局した炎症(蜂窩織炎)
Ib 結腸周囲に限局した膿瘍
II 骨盤内または遠隔の
III の
IV 受診時の

WSESのCT分類(2015年)

区分 病期 CT所見
非合併性 0 憩室、の肥厚、結腸周囲のの上昇
合併性 1A 結腸周囲のまたは少量の結腸周囲液体貯留で、膿瘍はない(炎症のある腸管から5cm以内)
合併性 1B 膿瘍が4cm以下
合併性 2A 膿瘍が4cmを超える
合併性 2B 遠隔のガス(炎症のある腸管から5cmを超える)
合併性 3 びまん性の液体貯留で、遠隔の遊離ガスはない
合併性 4 びまん性の液体貯留と遠隔の遊離ガスがある

💡 そのほかNeff(1989年、0〜4期)やAmbrosettiの中等症・重症の2群分け(2002年。壁肥厚5mm以上と結腸周囲のが中等症、膿瘍・管外ガス・管外造影剤が重症)などがある1。病期の呼び方は版によって違うので、論文ではどの版かを確認する。

進行と対応

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute diverticulitis'>急性憩室炎</span>"] --> B["I:結腸周囲の膿瘍"]
    B --> C["II:骨盤内・腹腔内・後腹膜の膿瘍"]
    C --> D["III:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized (diffuse)'>汎発性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purulent peritonitis'>膿性腹膜炎</span>"]
    D --> E["IV:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized (diffuse)'>汎発性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal peritonitis'>糞便性腹膜炎</span>"]
    B -.-> F["膿瘍:小さければ抗菌薬単独<br>大きければ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous drainage'>経皮ドレナージ</span>+抗菌薬"]
    C -.-> F
    D --> G["緊急手術<br>重症・併存症が多ければ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hartmann procedure'>Hartmann手術</span><br>安定していれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary resection and anastomosis'>一期的切除吻合</span>"]
    E --> G

解釈とカットオフ

対応の目安は次のとおり(WSES 2020のガイドライン)。膿瘍は病期よりも大きさで対応が分かれる1。

状態 推奨される対応
小さな膿瘍(4〜5cm未満) 抗菌薬単独の試行(弱い推奨、質の低いエビデンス)
大きな膿瘍 と抗菌薬の併用。ドレナージが不可能なら抗菌薬単独、または手術(弱い推奨、質の低いエビデンス)
、重症または併存症の多い患者 (強い推奨、質の低いエビデンス)
、循環が安定して併存症のない患者 (の有無を問わない。弱い推奨、質の低いエビデンス)
への・ドレナージ 第一選択とはみなさず、ごく限られた症例に

詳しい術式の選び方はの外科的側面にある。

手術の選択を比べた試験:Ib〜IVの7件(個別患者データ595例。III期76.3%、IV期12.1%で大半を占める)のでは、の院内・30日死亡率がより1000人あたり42人、より45人多かった。また、はより1年後の率が1000人あたり539人少なかった。いずれもエビデンスの確実性は「低い」と評価されている2。

膿瘍の予後情報:入院した511例のでは、膿瘍が19.4%にあり、膿瘍も穿孔もない例の保存的治療の失敗は6.8%、膿瘍のある例では22.2%が緊急切除を要した。(II期)を保存的に治療した例の再発率は41.2%だった(軽症例は13%)3。著者らは、膿瘍を認めた後はを強く検討すべきとした。ただし2005年の単施設のであり、現在のの判断は、再発の重症度・併存症・患者の希望などを併せて個別に行う。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 転帰予測で優れた分類とは証明されていない。 WSES 2020は、どの分類法も転帰予測で優れていると証明されておらず、特定の分類を推奨できないと明記している1。は最も使われているが、分類の格付けだけで手術の要否や術式を決めない。

⚠️ 原法は手術で確認した所見に基づくため、手術前の評価には使いにくい。 手術前の評価には、CT所見で運用する版(、WSESのCT分類など)が使われる1。

⚠️ 版によって病期の名前が違う。 原法はI〜IVの4段階、は原法のIをIa(蜂窩織炎)とIb()に分け、WSESのCT分類は0、1A〜4と別の数え方をする。「Hinchey I」と書かれていても蜂窩織炎を含むのか膿瘍だけなのかは文献ごとに確認する。

⚠️ 治療は病期だけでなく全身状態で決まる。 でも、重症例や併存症の多い例は、安定した併存症のない例はが提案される。病期は同じでも術式が変わる1。

まとめ

  • はの膿瘍・腹膜炎の広がりをI〜IVに分ける分類:I=、II=骨盤内・腹腔内・後腹膜の膿瘍、III=、IV=。
  • 原法は手術所見に基づく。CT時代にはIa・Ibを区別するやWSESのCT分類など、画像所見の版が使われ、版によって病期の呼び方が違う。
  • 対応の目安:小さな膿瘍は抗菌薬、大きな膿瘍は+抗菌薬、は緊急手術(重症・併存症が多ければ、安定していれば)。は一部の症例に限る。
  • どの分類も転帰予測で優れているとは証明されておらず、全身状態と併せて判断する。

出典

  1. 1.2020 update of the WSES guidelines for the management of acute colonic diverticulitis in the emergency setting(World Journal of Emergency Surgery(World Society of Emergency Surgery)・2020)PMC7206757の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。Hinchey分類は過去30年で国際文献に最も使われてきた分類で、手術所見で膿瘍と腹膜炎のある患者の重症度をI(結腸周囲膿瘍)、II(骨盤内・腹腔内・後腹膜膿瘍)、III(汎発性膿性腹膜炎)、IV(汎発性糞便性腹膜炎)に分けたものと述べる。CT普及後にNeff(1989)、Ambrosetti(2002)、Kaiserの改変Hinchey(2005)、Mora Lopez(2013)、WSESのCT分類(2015)などが提案されたが、どの分類も転帰予測で優れると証明されておらず特定の推奨はできないとする。WSESのCT分類(0、1A、1B、2A、2B、3、4)の定義、Kaiserの改変Hinchey(0、1a、1b、2、3、4)の定義を表で確認した。治療は、小さな膿瘍(4〜5cm未満)は抗菌薬単独の試行(弱い推奨2C)、大きな膿瘍は経皮ドレナージと抗菌薬の併用(弱い推奨2C)、汎発性腹膜炎では重症患者と併存症の多い一部の患者にHartmann手術(強い推奨・質の低いエビデンス2B)、安定して併存症のない患者には一期的切除吻合(ストーマの有無を問わない、弱い推奨・質の低いエビデンス2B)で、腹腔鏡下洗浄は第一選択とはみなさず一部の症例に限る。閲覧 2026-10-27
  2. 2.Surgical management of complicated diverticulitis: systematic review and individual patient data network meta-analysis(Surgical Endoscopy(Huo B, Ortenzi M, Anteby R, et al.)・2025)抄録で確認した。Hinchey分類Ib〜IVの憩室炎でHartmann手術、一次切除吻合、腹腔鏡下腹腔洗浄を比べた無作為化比較試験7件の個別患者データネットワークメタ解析で、個別データは678例中595例で得られ、Hinchey分類はI 1.2%、II 1.0%、III 76.3%、IV 12.1%だった。院内・30日死亡率は腹腔鏡下腹腔洗浄がHartmann手術より1000人あたり42人多く、一次切除吻合より1000人あたり45人多かった(いずれも中等度の効果、確実性は低い)。4試験417例では、一次切除吻合のほうが腹腔鏡下腹腔洗浄より1年後のストーマ率が1000人あたり539人少なかった(大きな効果、確実性は低い)。全文は購読誌のため、抄録の範囲で使った。閲覧 2026-10-27
  3. 3.The management of complicated diverticulitis and the role of computed tomography(American Journal of Gastroenterology(Kaiser AM, Jiang JK, Lake JP, et al.)・2005)抄録で確認した。急性憩室炎の臨床像を、蜂窩織炎(Ia)、限局性膿瘍(IbとII)、遊離穿孔を伴う膿性腹膜炎(III)または糞便性腹膜炎(IV)と段階づける改変Hinchey分類で病期を評価した、入院した急性憩室炎511例の後ろ向き研究(1994〜2003年、単施設)。99例(19.4%)に膿瘍があり、膿瘍も穿孔もない例の保存的治療の失敗は6.8%だったのに対し、膿瘍のある例の22.2%が緊急切除を要し、骨盤内膿瘍(II期)を保存的に治療した例の再発率は41.2%(軽症例は13%)だった。CTで膿瘍が示されることは非手術的管理の失敗リスクと相関する予後情報であり、膿瘍を認めた後は待機手術を強く検討すべきと結論した。全文は購読誌のため未確認。閲覧 2026-10-27