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多汗症疾患重症度スケール

Hyperhidrosis Disease Severity Scale

別名
HDSS
臓器系
皮膚神経
科目
Pharmacology
トピック
薬理学 A1:コリン作動性・アドレナリン作動性伝達とそのシナプス前調節

🧠 全体像:Hyperhidrosis Disease Severity Scale(HDSS)は、発汗量そのものを測るのではなく、発汗が日常生活をどれだけ妨げているかという患者本人の実感だけを1〜4の4段階に振り分ける、単一質問・自己記入式のスケールである。項目はただ一つ、「あなたの発汗は日常生活にどの程度支障を来しますか」という問いだけで、点数がそのまま治療開始の閾値になる——3点以上(ほとんど我慢できない〜耐えられない、しばしば〜常に支障)を重症とし、治療の対象とする1

目的と適用場面

内容
目的 と診断された患者の重症度を、患者本人の実感に基づいて4段階に分類する
対象 腋窩・手掌・足底・頭部顔面のいずれかに・左右対称性の過剰発汗があり、を満たした患者
使う場面 診断確定後の重症度判定との決定、治療前後での効果判定(・日常診療の双方)
評価しないもの 発汗の原因が原発性か続発性かの鑑別そのもの、発汗量のな定量、腋窩以外の部位を含めた全身の総合評価

HDSSはKowalskiらが2004年に開発した尺度で2、Canadian Hyperhidrosis Advisory Committeeが原発性局所の重症度に応じた治療推奨を組み立てる際の主要なツールとして用いたことで広く普及した3。日本学会のガイドラインでも同様にHDSSを重症度評価に用いる1。原版の心理測定特性は、r=0.82、構成概念r=0.35〜0.77と報告されている2

HDSSはあくまで重症度の判定に使うツールであり、原発性か続発性かを見分けるそのものはの項に譲る。

構成要素と配点

HDSSは項目が1つだけの尺度で、患者自身が次の4段階から自分の発汗に最も当てはまるものを選ぶ2

発汗が日常生活に与える支障の程度(唯一の評価項目)

スコア 定義
1点 発汗はまったく気にならず、日常生活に支障を来したことがない
2点 発汗は我慢できる程度だが、時に日常生活に支障を来す
3点 発汗はほとんど我慢できず、しばしば日常生活に支障を来す
4点 発汗は耐えられず、常に日常生活に支障を来す

⭐ 4段階のうち1・2が軽症〜中等症、3・4が重症という2分法がそのままの判断につながる1

は腋窩・手掌・足底・頭部顔面と部位ごとに独立して評価されるため、複数部位に症状がある患者では部位ごとに別々にHDSSを採点する。ある部位では2点、別の部位では4点というように、部位間で点数が一致しないことは珍しくない。

解釈とカットオフ

スコア 重症度 治療の目安
1〜2点 軽症〜中等症 ・経過観察が中心。希望があれば外用治療から開始してよい
3〜4点 重症 治療対象。部位別に外用外用・局所注射・内服など)へと段階的に進める

💡 点数の変化そのものが治療効果の指標にもなる。 HDSSの1点の改善はグラビメトリー法で測った発汗量のおよそ50%減少に、2点の改善はおよそ80%減少に相当するとされ、などのでは「ベースラインから2点以上の改善」がしばしばの判定基準として用いられる3

部位別の具体的な治療の進め方(第一選択〜難治時、保険適用の範囲、の位置づけ)はの対症療法の項に譲る。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 発汗量そのものを定量する尺度ではない。 HDSSは患者のな支障感だけを測るため、な発汗量が知りたい場合はグラビメトリー法(一定時間の発汗を吸収紙などで重量測定する方法)のような定量法を別に用いる。

⚠️ 原発性か続発性かを見分ける診断ツールではない。 HDSSはを満たした後に重症度を判定するためのものであり、これ単独で全身性・続発性の発汗(甲状腺機能亢進症・・悪性腫瘍のB症状・感染症など)を除外できない。

⚠️ もとはを対象に開発・検証された尺度である。 手掌・足底・頭部顔面など他部位にも項目の文言を読み替えて広く使われているが、心理測定特性の検証は腋窩ほど蓄積されていない。

⚠️ 単一項目のため、評価者間ではなく患者本人の主観に左右される。 同じ発汗量でも、患者の生活様式や仕事内容によって「支障」の感じ方は変わりうる。詳細なQOL評価が必要な場面では、Dermatology Life Quality Index(DLQI)などの多項目尺度を併用する。

まとめ

  • HDSSは、発汗が日常生活に与える支障の程度を患者本人が1〜4の4段階で自己評価する、単一項目のスケールである。
  • 1・2点は軽症〜中等症、3・4点は重症で、3・4点が治療対象になる。
  • 2004年にKowalskiらが開発し、Canadian Hyperhidrosis Advisory Committeeが重症度別の治療推奨を組み立てる主要ツールとして用いたことで普及し、日本学会のガイドラインでも重症度評価に用いられている。
  • 1点の改善はグラビメトリー法での発汗量のおよそ50%減少、2点の改善はおよそ80%減少に相当し、の効果判定基準としても使われる。
  • 発汗量そのものの定量や原発性・続発性の鑑別はできず、もとはで検証された尺度である点に注意する。

出典

  1. 1.原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂)(日本皮膚科学会・2023)原発性局所多汗症の重症度評価にHyperhidrosis Disease Severity Scale(HDSS、1〜4の4段階)を用い、3・4点を重症として治療対象とすることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Diagnosis and qualitative identification of hyperhidrosis(Shanghai Chest(AME Publishing)・2019)HDSSの4段階それぞれの定義(1:我慢できる/支障なし、2:我慢できる/時に支障、3:ほとんど我慢できない/しばしば支障、4:耐えられない/常に支障)と、3・4がいずれも重症を示すこと、Canadian Hyperhidrosis Advisory Committeeが重症度に基づく治療推奨を組み立てる際にHDSSを主要なツールとして用いたこと、グラビメトリー法(発汗量の重量測定)との相関が良好であること、1点の改善が発汗量のおよそ50%減少に、2点の改善がおよそ80%減少に相当することを確認した。本論文はHDSSの開発者・開発年には言及していない閲覧 2026-08-10
  3. 3.Arabic Translation, Cultural Adaptation, and Validation of the Hyperhidrosis Disease Severity Scale (Ar-HDSS)(Healthcare(MDPI)・2025)HDSS原版の4段階それぞれの定義文(英語原文)、Kowalskiらによる2004年の開発であること、単一項目・自己記入式であること、スコア3・4が重症を示すこと、原版の心理測定特性(test-retest信頼性r=0.82、構成概念妥当性r=0.35〜0.77)を確認した閲覧 2026-08-10