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LEMON法

LEMON airway assessment

別名
LEMON criteriaLEMON score
臓器系
呼吸器耳鼻咽喉科
科目
Intensive Therapy and Anesthesiology
トピック
麻酔科学 B-14:周術期管理とリスク評価

🧠 全体像:LEMON法は、緊急のの前に「が難しいか」を短時間で見積もるための5つの視点の頭文字である。Look externally(見た目)、Evaluate 3-3-2(指で測る)、Mallampati(口の奥の見え方)、Obstruction(気道の閉塞)、Neck mobility(頸部の動き)の順に、見た目、指での測定、口の奥の観察、閉塞の有無、頸部の動きを一通り確かめる。目的は難しさを「当てる」ことではなく、難しいかもしれないと分かった時点で、・熟練者・代替の気道確保器具を先に手元へ置くことにある。⚠️ 日本のでは感度が高く特異度が低かったが、成績は研究や定義で変わる。「陰性だから安心」とも「陽性だから挿管できない」とも読まない。

目的と適用場面

内容
目的 の前に、や挿管が難しくなる可能性を見積もり、準備の手厚さを決める1
対象 救急外来・蘇生室・緊急手術など、時間がなく患者の協力が得にくい場面でを行う患者
使う場面 挿管の直前。を使わず、見た目と指の幅で短時間に評価する
評価しないもの の難しさ(別の覚え方がある)、実際のの視野(挿管後に付けるCormack-Lehane分類)

英国の研究は、蘇生室で挿管された156例にLEMON法に基づく基準を当てはめ、点数が高い患者ほどの視野が悪かったと報告した(p<0.05)1。

構成要素

⭐ 5つの視点それぞれに該当するかを見て、該当した項目を数えて合計する使い方が研究で用いられている。ただし配点と合計点の区切りは研究ごとに違う(後述)。

文字 見るもの 該当の目安
L:見た目 困難な・挿管・換気を起こす外見 顔面外傷、大きな門歯、あごひげ・口ひげ、大きな舌23
E:3-3-2の評価 口腔・咽頭・喉頭の軸の並びを指の幅で測る 開口が3未満、から舌骨までが3未満、舌骨からまでが2未満2
M:Mallampati 口を開けたときの口の奥の見え方 段階III・IV()。患者の協力が要る
O:閉塞 や換気を妨げる病態 腫瘤、血腫、大量出血、感染(、)、睡眠時無呼吸、上気道外傷23
N: 頸部を動かせるか の低下、カラーによる固定2

💡 3-3-2は、口腔・咽頭・喉頭の軸がの視線にそろうかを、なしに患者自身の指の幅で見積もる手順である。3つの距離のどれかが基準より小さければ、該当として数える2。

Mallampatiを除いた修正版

Mallampatiの評価は患者に開口して舌を出してもらう必要があり、外傷や重症患者では難しい。このためを除いた修正版(LEON、一般に修正LEMONと呼ばれる)が救急で使われている2。タイの救急外来の研究も、Mallampatiは患者の協力が要り重症患者では限られるとして記録しなかった3。

flowchart TD
    A["緊急の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endotracheal intubation'>気管挿管</span>が必要"] --> B{"患者は指示に従って<br>開口・舌の突出ができるか"}
    B -->|"できる"| C["LEMONの5項目を評価"]
    B -->|"できない"| D["Mallampatiを除いた4項目を評価<br>(修正LEMON)"]
    C --> E["該当した項目を数える"]
    D --> E
    E --> F{"困難を疑う項目があるか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='video laryngoscope'>ビデオ喉頭鏡</span>・熟練者・代替の気道確保器具を<br>先に準備してから挿管する"]
    F -->|"なし"| H["通常の準備で挿管する<br>(困難は除外できない)"]

この流れは本ノートの整理であり、実際の準備の手順は施設の気道管理アルゴリズムに従う。

解釈とカットオフ

⭐ 決まった合計点の基準は1つに定まっていない。 研究ごとに区切りが違うので、論文や施設の基準を読むときは、どの版(Mallampatiを含む版か、除いた修正版か)で、何点以上を陽性としたかを確かめる。

研究 対象 結果
初期の評価研究(英国)1 蘇生室で挿管された156例 視野グレード1が114例・2が29例・3が11例・4が2例。大きな門歯、の減少、からまでの距離の減少がそれぞれ視野不良と関連(p<0.001〜0.05)
修正LEMON(日本)4 救急外来13施設で挿管された4,034件。は2回以上の試行 で感度85.7%・特異度47.6%・98.2%。で94.9%・40.3%・99.0%
修正LEMON(韓国)2 緊急手術を受けた外傷114例 困難群の点数の中央値3、非困難群の2(p=0.017)。3点以上での可能性

日本のでは、がで5.4%、で7.4%と少なかった4。このためが98%台と高くても、は低い。の群の感度・特異度・の割合から当ノートで計算すると、陽性だった患者のうち実際に困難だったのは約8.5%にとどまる。

項目の重みは同じではない

タイの救急外来617例(が困難だったのは83例、13.45%)では、独立して困難なを予測した因子は、、大きな舌、の低下、気道閉塞、の短縮の5つだった。係数に比例して点数を付けると、が1点、大きな舌が2点、の低下が3点、気道閉塞が4点、の短縮が5点(0〜15点)で、AuROCは89%だった3。

💡 項目を数えるだけの合計では、係数の大きかった所見(の短縮、気道閉塞、の低下)も軽い所見も同じ1点になる。 この点数はLEMONそのものではなく別の予測モデルだが、該当数が少なくても、閉塞や頸部の固定があれば備えを手厚くする。外傷患者の研究でも、独立した予測因子はの低下だけだった(6.15)2。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 陰性でもは除外できない。 日本ので、ののうち修正LEMONが陽性だったのは85.7%で、残る約14%は陰性のまま困難だった4。陰性でも挿管の失敗に備えた計画(補助者・代替器具・救済手順)を持っておく。

⚠️ 陽性でも「挿管できない」とは限らない。 は低く、特異度も47.6%にとどまる4。陽性は準備を手厚くする合図であり、挿管を断念する根拠ではない。

⚠️ 患者の協力が要る項目がある。 Mallampatiは患者の協力が要り、重症患者では限られる3。意識がない、興奮しているなどで開口や舌の突出ができなければ評価できず、がカラーで固定されていればは「低下」に数えるほかない。評価できない項目は「正常」とせず、評価できなかったと記録する。

⚠️ 結果は定義と状況で変わる。 の定義(2回以上の試行か、の視野か)、評価者、使う(直接かビデオか)で成績が違う4。小規模・後ろ向き・単施設の研究が多く、すぐに気道確保が要る最重症例は含まれていない2。

⚠️ の予測であり、の予測ではない。 の困難は別の覚え方(MOANS:マスクの密着、肥満、高齢、歯がない、硬さ)で評価する3。

まとめ

  • LEMON法は、緊急挿管の前にの難しさを見積もる5つの視点で、Look externally(見た目)、Evaluate 3-3-2(開口3・舌骨間3・舌骨甲状間2)、Mallampati、Obstruction(閉塞)、Neck mobility()の頭文字である。
  • 患者の協力が要るMallampatiを除いた修正版が、外傷や重症患者の救急で使われる。
  • 日本のでは、修正LEMONの感度は85.7%、は98.2%と高いが、特異度は47.6%にとどまり、は低い。
  • 項目は同じ重みではない。別の予測モデルでは、の短縮・気道閉塞・の低下の係数が大きかった。該当数が少なくても、閉塞や頸部の固定があれば備えを手厚くする。
  • 陰性でも困難は除外できず、陽性でも挿管できないとは限らない。結果は「・熟練者・代替器具を先に用意する」合図として使う。

出典

  1. 1.Can an airway assessment score predict difficulty at intubation in the emergency department?(Emergency Medicine Journal(Reed MJ, Dunn MJ, McKeown DW)・2005)PMCの抄録ページで確認した。英国の教育病院の蘇生室で気管挿管された156例(2002年6月〜2003年9月)に、LEMON法に基づく基準で気道を評価し、喉頭展開時のCormack-Lehane分類を記録した。グレードは1が114例・2が29例・3が11例・4が2例。大きな門歯(p<0.001)、開口距離の減少(p<0.05)、甲状軟骨から口腔底までの距離の減少(p<0.05)が、それぞれ喉頭展開時の視野不良(グレード2〜4)と関連した。気道評価の合計点が高い患者は低い患者より視野不良が多かった(p<0.05)。LEMON法に基づく点数が救急外来での挿管の難しさの層別化に使えると結論している。全文はPDFのみで、各項目の配点と合計点の区切りは未確認。閲覧 2026-10-28
  2. 2.Correlation between modified LEMON score and intubation difficulty in adult trauma patients undergoing emergency surgery(World Journal of Emergency Surgery(Ji SM, Moon EJ, Kim TJ, et al.)・2018)PMC6057047の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。LEMON法はLook・Evaluate・Mallampati・Obstruction・Neck mobilityの評価で、Mallampati分類を除いた修正版(LEON)があること。LEONの構成は、Lookが顔面外傷・大きな門歯・あごひげや口ひげ・大きな舌の4項目、Evaluate 3-3-2が咽頭・喉頭・口腔の軸の並びの評価(開口とオトガイ舌骨間が3横指未満、舌骨甲状間が2横指未満)、Obstructionが気道閉塞を起こしうる病態(喉頭蓋炎・扁桃周囲膿瘍・睡眠時無呼吸・上気道外傷など)、Neck mobilityが頸部可動性の低下または硬性カラーによる固定であること。緊急手術を受けた成人外傷114例の後ろ向き研究で、挿管困難尺度(IDS)が5を超える群(18例)の修正LEMON点数の中央値が3(四分位範囲2〜5)で、非困難群(96例)の2(1〜3)より高く(p=0.017)、点数とIDSは有意に相関した(p<0.001)。単独の独立予測因子は頸部可動性の低下(オッズ比6.15、p=0.002)で、LEON点数3以上で困難挿管の可能性があるとしている。Mallampatiの評価が外傷患者で難しいことも述べている。後ろ向き・単施設・小規模で、すぐに気道確保が要る重症例を含まない。閲覧 2026-10-28
  3. 3.Difficult Laryngoscopy Prediction Score for Intubation in Emergency Departments: A Retrospective Cohort Study(Open Access Emergency Medicine(Savatmongkorngul S, Pitakwong P, Sricharoen P, et al.)・2022)PMC9250787の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。タイの大学病院の救急外来で挿管された15歳以上617例の後ろ向きコホートで、喉頭展開の困難(Cormack-Lehaneグレード3以上)は83例(13.45%)。LEMONの各項目(Lookは顔面外傷・大きな門歯・あごひげ・大きな舌、3-3-2は開口3横指未満・オトガイ舌骨間3横指未満・甲状舌骨間2横指未満、Obstructionは腫瘤・血腫・大量出血など、Neck mobilityはカラー固定など)を評価したが、Mallampatiは患者の協力が要り重症患者では限られるため記録しなかった。難しいマスク換気の評価ツールとしてMOANS(Mask seal, Obesity, Age, No teeth, Stiffness)も併用した。多変量解析で独立した予測因子は開口制限・大きな舌・頸部可動性の低下・気道閉塞・オトガイ舌骨間距離の短縮の5つで、ロジスティック回帰の係数に比例して配点すると開口制限1点・大きな舌2点・頸部可動性低下3点・気道閉塞4点・オトガイ舌骨間距離の短縮5点(0〜15点)、AuROCは89%(95%信頼区間0.860〜0.926)、4点を超えると困難な喉頭展開の尤度比が7.62倍だった。LEMONの各項目が同じ重みでは寄与しないことを示す。単施設の後ろ向き研究。閲覧 2026-10-28
  4. 4.Prospective validation of the modified LEMON criteria to predict difficult intubation in the ED(American Journal of Emergency Medicine(Hagiwara Y, Watase H, Okamoto H, Goto T, Hasegawa K; Japanese Emergency Medicine Network Investigators)・2015)抄録で確認した。日本の救急外来13施設の前向き観察研究(第2次Japanese Emergency Airway Network研究)で、2012年2月〜2014年9月に救急外来で挿管された4,034件(捕捉率96%)のうち、直接喉頭鏡が3,313件(84%)、ビデオ喉頭鏡が610件(16%)。困難挿管は「救急専門医または麻酔科医による2回以上の試行」と定義した。困難挿管の割合は直接喉頭鏡で5.4%・ビデオ喉頭鏡で7.4%。修正LEMON基準の感度は85.7%・94.9%、特異度は47.6%・40.3%、陰性的中率は98.2%・99.0%だった。感度と陰性的中率が高く、救急外来で困難挿管を見つけるのに役立ちうると結論している。陽性的中率は抄録に無く、修正LEMON基準の構成の定義も抄録には無い。全文は購読誌のため未確認。閲覧 2026-10-28