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唾液腺細胞診ミラノシステム

Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology

別名
ミラノシステムMilan SystemMSRSGC
臓器系
腫瘍耳鼻咽喉科
科目
Otorhinolaryngology
トピック
耳鼻咽喉科 50:唾液腺の良性・悪性腫瘍
適用疾患
唾液腺腫瘍

🧠 全体像:は、唾液腺腫瘤の(FNA)の結果を6つのカテゴリー(IVはaとbに分かれ、表では7行)に標準化し、各区分に悪性リスク(ROM)と次の対応を対応させて報告する様式である。甲状腺のと同じ発想で、細胞診の言葉を臨床医が行動に変換できるようにする。の適応基準であるとはまったく別物なので、混同しない。1

目的と適用場面

内容
目的 唾液腺FNAの診断用語を統一し、カテゴリーごとの悪性リスクと対応を結びつける
対象 FNAを行った唾液腺腫瘤(主にの耳下腺・)
使う場面 細胞診の報告、手術の要否との併用の判断。欧州の診療ガイドラインは、結果をこの分類で報告し、悪性リスクと推奨される対応を併記するよう勧めている2
評価しないもの 組織型の確定診断(の組織診断)、病期(TNM)、FNAを行うかどうかの判断

構成要素とカテゴリー

点数を足し上げる式ではなく、細胞診所見で1つの区分を選ぶ。第2版(2023年)での悪性リスクと対応の目安を示す。3

区分 意味 悪性リスク 対応の目安
I 細胞が乏しく診断できない。嚢胞では上皮細胞を欠く蛋白性の背景のみのことが多い 15% 臨床・画像との対比、または再FNA
II 非腫瘍性 炎症性・・反応性の病変 11% 臨床・画像による経過観察
III (AUS) 非腫瘍性とも腫瘍とも自信をもって言えない 30% 再FNAまたは手術
IVa 腫瘍:良性 良性腫瘍(、など) 3%未満 または経過観察
IVb 腫瘍:(SUMP) 腫瘍とは言えるが良悪性を区別できない。の細胞所見は伴わない 35% を併用する手術
V 悪性を強く疑うが断定できない 83% を併用する手術
VI 悪性 悪性のがある 98%超 病変に応じた手術または

第2版では系統的レビューとに基づいて悪性リスクが見直され、I(15%)・II(11%)・V(83%)の値は改訂値と記されている。唾液腺の画像診断の章、補助検査の進歩、用語の更新も加わった。14

💡 IVの二分が重要。 IVaは「良性の腫瘍」と言い切れる所見、IVb(SUMP)は「腫瘍だが良性とも悪性とも決められない」群で、後者は様の所見が優位だと悪性リスクが高く(の例がある)、の所見が優位だと低いとされる。4

解釈とカットオフ

  • I〜III(確定できない群):Iは臨床・画像と突き合わせて再FNA、IIは臨床・画像で経過を追い、IIIは再FNAか手術を個別に決める。IIIは全FNAの10%未満にとどめることが勧められており、安易に使わない。34
  • IV:IVaは経過観察か、IVbは悪性を含みうるためを併用した手術を前提にする。
  • V・VI:手術(または病変に応じた)を前提に、で切除範囲を決める。VIは98%超のため、悪性として治療計画を立てる。3

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 悪性リスクは手術に回った症例から計算されるため、過大に出うる。 手術されるのは腫瘍が疑われた症例に偏る、という指摘がある。カテゴリーVのリスクは研究により50〜100%、IVbは最大100%と報告され、施設間の差が大きい。数値は固定値でなく目安として扱う。4

⚠️ II(非腫瘍性)は「腫瘍でない」の保証ではない。 の強いが蛋白性の背景のみとしてIIに入った例があり、悪性リスク11%の一部は標本採取の誤りや臨床・画像との対比の不足による。臨床経過の追跡が必要である。4

⚠️ 検体の質が診断を決める。 嚢胞では腫瘍の別の部位から複数回採取し、超音波ガイドや迅速評価でI()を減らす。第1版の「60個以上の細胞」という適正基準は、根拠が不十分として第2版では推奨されなくなった。4

⚠️ 細胞診は組織診断の代わりにならない。 のような低悪性度の癌は悪性を示す所見が目立たず、III(AUS)として報告された例や偽陰性がありうる。分類は・画像と合わせて解釈する。4

⚠️ 名称が似る(の適応)や、甲状腺のとは、対象臓器も判定内容も異なる別のツールである。

まとめ

  • 唾液腺FNAの結果を7区分(I〜VI、IVはaとb)に標準化し、悪性リスクと対応を結びつける報告様式。
  • 第2版の悪性リスクはI 15%、II 11%、III 30%、IVa 3%未満、IVb 35%、V 83%、VI 98%超。
  • IVbは「腫瘍だが良悪性不明」で、を併用する手術が前提になる。
  • IIは腫瘍の否定ではなく、IIIは全FNAの10%未満にとどめる。
  • 悪性リスクは施設間で幅があり、手術症例に偏るため過大に出うる。臨床・画像と統合して読む。

出典

  1. 1.Second edition of the Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology: Refining the role of salivary gland FNA(Cancer Cytopathology(Rossi ED, Baloch Z, Barkan G, et al.)・2024)抄録で確認した。第1版が2018年に刊行され、6つの穿刺吸引細胞診カテゴリーに悪性リスクと臨床的・外科的な対応を結びつける枠組みであること、2023年7月刊行の第2版で、系統的レビューとメタ解析に基づく悪性リスクの見直し、唾液腺画像の新しい章、補助検査の進歩、用語の更新が加わったこと。カテゴリーごとの数値は抄録に無い。閲覧 2026-10-30
  2. 2.Salivary gland cancer: ESMO–European Reference Network on Rare Adult Solid Cancers (EURACAN) Clinical Practice Guideline for diagnosis, treatment and follow-up(ESMO Open(European Society for Medical Oncology・EURACAN;van Herpen C, Vander Poorten V, Skalova A, et al.)・2022)Europe PMCの全文XML(PMC9808465)で確認した。超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診が耳下腺・顎下腺腫瘍の術前評価として確立しており、経験のある病理医なら約90%で良悪性を区別できること、結果はMilan分類で報告し、定義された悪性リスクと推奨される治療アプローチを併記すべきとされること(推奨度[IV, A])。閲覧 2026-10-30
  3. 3.The evolving landscape of salivary gland tumors(CA: A Cancer Journal for Clinicians(Steuer CE, Hanna GJ, Viswanathan K, et al.)・2023)Europe PMCの全文XML(PMC10980170)のTable 2で確認した。Milan Systemが2018年に確立された6つの診断カテゴリー(IVはaとbに細分)の報告様式であること、カテゴリー別の悪性リスクと推奨される対応(I 15%:臨床・画像との対比または再穿刺、II 11%:臨床・画像による経過観察、III 30%:再穿刺または手術、IVa 3%未満:保存的手術または経過観察、IVb 35%・V 83%:術中迅速診断を併用する手術、VI 98%:病変に応じた手術または全身療法)。閲覧 2026-10-30
  4. 4.The Second Edition of the Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology: System Application, Outcome, and Cytohistological Correlation(Journal of Cytology(Onyszczuk M, Drozdzowska B)・2025)Europe PMCの全文XML(PMC11896119)で確認した。248例の再分類研究(組織学的追跡101例)で、第2版のカテゴリーの定義、第2版の悪性リスク(I 15%、II 11%、III 30%、IVa 3%未満、IVb 35%、V 83%、VI 98%超)を再掲した二次資料であること、第1版の「60個以上の細胞」という検体適正の基準が第2版で推奨されなくなったこと、III(AUS)は全穿刺の10%未満にとどめるべきとされること、悪性リスクは手術された症例に偏るため過大評価されうること、II群にも嚢胞変性の強いワルチン腫瘍が含まれて悪性リスクが11%とされる理由が標本採取の誤りや臨床・画像との対比の不足であること、上皮筋上皮癌のような低悪性度の癌が明らかな悪性所見を欠いて偽陰性になりうることを確認した。閲覧 2026-10-30