Biochemistry

Biochemistry · 5/5

脂肪組織における脂肪酸の動員とその調節;血中輸送

Mobilization of fatty acids in adipose tissue and its regulation; transport in the circulation — L I

🧠 は「インスリンでブレーキ、グルカゴン/カテコールアミンでアクセル」の経路で読む。 空腹時、脂肪組織はTAGを脂肪酸+グリセロールに分解し血中へ放出する。脂肪酸はアルブミンに結合して運ばれ、グリセロールは肝で糖新生に使われる。放出された脂肪酸の一部はされ、これがになる。

脂肪分解のホルモン調節

インスリンと(グルカゴン・カテコールアミン)が、脂肪組織のTAG分解を逆方向に調節する。

flowchart TD
  A["空腹・ストレス(グルカゴン・アドレナリン↑)"]
  A --> B["cAMP↑ → PKA活性化"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HSL'>ホルモン感受性リパーゼ</span>活性化"]
  B --> D["脂肪滴表面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perilipin'>ペリリピン</span>リン酸化"]
  D --> E["HSLが脂肪滴にアクセス可能に"]
  C --> F["TAG → 脂肪酸 + グリセロール"]
  G["摂食後(インスリン↑)"] --> H["HSL・ATGL阻害、LPL活性化"]
  H --> I["脂肪組織へのTAG取り込み・貯蔵"]
状態 主な酵素活性 正味の流れ
空腹・ストレス ↑、 TAG分解(
摂食後(インスリン↑) HSL・ATGL阻害。LPL活性化、・DGAT活性化 TAG合成(脂肪蓄積)

インスリン作用の障害(糖尿病、diabetes mellitus)は「が優位」に傾く。 インスリンシグナル障害があると脂肪組織でHSL・ATGLによるが優勢になり、が上昇する。肝ではこの脂肪酸がアシルCoAとなりPAPH・DGATを活性化してTAG合成・VLDL分泌を促進する(05-11-risk-factors-associated-with-cholesterol-homeostasis-in-atherosclerosisの機序)。

循環での脂肪酸輸送

脂肪組織で分解された脂肪酸は水に溶けないため、アルブミンに結合して血中を運ばれる(アルブミン1分子あたり最大約10個の脂肪酸)。グリセロールは水溶性で、そのままほぼ全量が血中に遊離し、肝でによりリン酸化されて糖新生・解糖の中間体になる。

グリセロネオゲネシス

空腹時、動員された脂肪酸の約30%は、脂肪組織内でされてTAGに戻る。このにはグリセロール-3-リン酸(G3P)が必要だが、脂肪組織は活性が乏しいため、ピルビン酸・乳酸・一部のアミノ酸などのからG3Pを作る経路=を使う。

  • PEPCK-C(肝の糖新生と同じ酵素)で、空腹により活性が上昇する。
  • 全身のTAG回転(分解とのサイクル)をする役割をもつ。

(グリタゾン glitazone)はを標的にする。 2型糖尿病では血中高値が筋のグルコース利用を妨げインスリン抵抗性を助長する。PPARγを活性化してPEPCK-C発現を誘導し、を促進、脂肪組織でのTAG再合成を増やして血中を低下させる。

長期調節:PPARによる転写制御

PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)は脂肪酸をリガンドとする・転写因子で、酵素の長期的な発現調節を担う。

主な発現組織 誘導する遺伝子
PPARα 肝・筋・心筋・腎皮質 脂肪酸活性化・ミトコンドリア輸送(CPT I・II)・酵素(β-oxidation enzyme、
PPARγ 主に脂肪組織 、TAG合成・貯蔵関連遺伝子
  • 空腹・にPPARαが誘導され、能力を高める。
  • の心臓の主要燃料はグルコース・乳酸だが、以降は脂肪酸利用へ移行する(PPARαを介した代謝転換、metabolic switch)。
  • 持続的な運動でも骨格筋のPPARα発現が上昇し、能力を高める。

まとめ

  • はインスリンで抑制、グルカゴン/カテコールアミン→cAMP→PKAでHSL・をリン酸化し促進される。
  • 動員された脂肪酸はで血中輸送、グリセロールは肝で糖新生の基質になる。
  • 動員脂肪酸の約30%は(PEPCK-C依存)で脂肪組織内でされる。
  • はPPARγ→PEPCK-C誘導でを促進し、血中を下げる。
  • PPARα(肝・筋)とPPARγ(脂肪組織)が、それぞれ酸化と貯蔵に関わる遺伝子群を長期的に調節する。