Biochemistry

Biochemistry · 5/4

リポタンパクリパーゼ(LPL)の組織特異的側面;LPL欠損症

Tissue-specific aspects of lipoprotein lipase (LPL); LPL deficiency — S I

症状
発疹性黄色腫
検査値
脂質検査

🧠 は「に係留され、・VLDLのTAGを分解する門番」で読む。 は似た働きだが別の脂質を扱い、を含む3者は構造的に同族(structurally homologous、Ser-His-Asp)だが補因子が異なる。LPL欠損は劇的な(hypertriglyceridemia、)を起こすが、動脈硬化リスクは意外にも上昇しないというが理解の核心。

LPLとHLの役割分担

酵素 基質 局在 補因子
・VLDLのTAG(sn-1, sn-3を優先的に加水分解)。TAG分解活性の約1/20の活性も持つ 末梢(心・筋・脂肪組織) apoCII・VLDL表面)
(HL) ・HDL2のTAG+表面リン脂質
(PL) 食事TAG( (膵産生)
  • 3酵素はだがをもつ同族で、Ser-His-Aspに特徴的)を共有する。
  • 成人肝ではLPLは発現しない(HLが代わりに働く)。HLはの肝取り込み/LDLへの変換や、HDL2→HDL3の変換にも関与。

症例:カイロミクロン血症症候群

11歳男児、繰り返す重度腹痛の既往( appendectomyでも改善せず)。脂肪の多い食事(豚肉・フライドポテト・・生添えアイス)の4時間後に発症。空腹時採血(前夜から絶食)にもかかわらず血漿が「」で、後に状の層が浮く。皮膚には・肘の紅斑を伴う黄白色結節)肝脾腫を認めた。で軽快。

💡 正常なら空腹時血漿には存在しない。 前夜の夕食由来のは朝までに正常なら血中からクリアされる。空腹時血漿がを強く示唆する所見。臨床検査室では(電気泳動的易動度 electrophoretic mobilityがほぼゼロ=原点に留まる)で確認する。

カイロミクロン血症症候群

空腹時血漿TG ≥1000 mg/dL200 mg/dL未満)で診断。以下の症状のいずれかを伴えばと呼ぶ。

症状 内容
・肘に多い黄色丘疹。にTAGが蓄積
が白色化、網膜がサーモン
腹部症状 腹痛、(±肝脾腫)。膵炎はが活性化されて膵組織をし、致死率約50%の重篤な合併症

はTG<500 mg/dLで、膵炎リスクを抑える。 膵炎の確率は血漿TG値と相関するため、この値を治療の閾値とする。原因は続発性(secondary、二次性、ホルモン異常・癌・自己免疫・薬剤)と原発性(primary、一次性、家族性LPL欠損・apoCII欠損など遺伝性)に分かれる。

家族性LPL欠損

  • 稀な疾患(頻度<100万分の1)。のクリアランス低下により空腹時TG上昇(VLDLは蓄積しない点に注意)。
  • は正常〜軽度上昇のみで症状に乏しい。
  • 意外にも動脈硬化リスクは高くない。 一般にTG上昇は動脈硬化の危険因子とされるが、家族性LPL欠損患者は心血管疾患リスクが上昇しない。

ヘパリンによる診断

LPLは血中を循環せずに係留されているため、活性測定にはヘパリン投与が必要。ヘパリンへの親和性がLPLではの約40倍高いため、ヘパリンがLPLを血漿中に遊離させる(これはヘパリンのであり、生理的補因子ではない)。

  • ヘパリン後血漿のは2種の酵素に由来:や1M NaClに耐性)とLPLや1M NaClで阻害される、)。通常、ヘパリン後活性の45–90%は由来。
  • apoCII欠損でもLPL活性は低下して見える(酵素自体は正常)。患者血漿に正常血漿(正常apoCIIを含む)を加えるとLPL活性が正常化することで鑑別できる。

💡 Ser447X多型はむしろ心血管保護的。 Framingham Offspring Studyで見つかったLPLのSer447X変異体はLPL活性を高め、TG低下・HDL-コレステロール上昇・心血管疾患発症率低下と関連する。

家族性LPL欠損の治療

唯一の危険な症状はなので、はTG<500 mg/dL。最も簡便な方法はも併用しうる。

まとめ

  • LPL(、apoCII依存)は・VLDLのTAGを、HL()は・HDL2を、PL(膵、依存)は食事TAGを分解。3者はSer-His-Asp三残基を共有する同族。
  • はTG≥1000 mg/dLで、を伴う。膵炎リスクからTG<500 mg/dLが
  • 家族性LPL欠損はTGだが、意外にも動脈硬化リスクは上昇しない。
  • LPL活性測定にはヘパリン投与が必要(ヘパリンはLPLの生理的補因子ではなく薬理的遊離剤)。/高でHLと鑑別。
  • Ser447X多型はLPL活性を高め心血管保護的に働く。