Biophysics

Biophysics · 28.10

身体診察の生物物理II―触診

Biophysics of physical examination II — palpation

応用トピック
呼吸器の身体診察

🧠 触診は、検者が力を加えたときの組織変形、反発、、振動を触覚で読み取る能動的な測定である。 見た目だけでは分からない硬さや深さを評価できる一方、加える力と速さをそろえなければ所見も変わる。

力を入力して応答を測る

指で組織へ力を加えると接触面には応力が生じ、組織は変位・変形する。硬い組織は同じ力に対する変形が小さく、軟らかい組織は大きい。これはにつながるが、生体組織は単純な弾性体ではない。

触診で感じる情報には、表面温度、圧痛、境界、可動性、脈動、呼吸や発声に伴う振動が含まれる。それぞれ発生源が異なるため、「硬い」という一語だけでなく、どの力学的応答を観察したかを明確にする。

組織の粘弾性

を用いるモデルでは、弾性成分と成分を次のように表す。

Fspring=kx,F=ηdxdtF_{spring}=kx,\qquad F_{}=\eta\frac{dx}{dt}

の力は変位 xx に、の力は変形速度 dx/dtdx/dt に比例する。このため同じ深さまで押しても、急速に押すとより大きな抵抗を感じることがある。押した状態を保つとが起こり、力を除いた後の回復にも時間がかかる。

圧痕性浮腫を力学的に読む

flowchart TD
  A["指で一定時間押圧"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial fluid'>間質液</span>が周囲へ移動"]
  B --> C["組織基質が変形"]
  C --> D["指を離す"]
  D --> E["液体の再移動と基質の回復"]
  E --> F{"回復時間"}
  F -->|"短い"| G["圧痕が目立たない"]
  F -->|"長い"| H["圧痕が持続"]

では、押圧によってが移動し、解除後も圧痕が残る。深さとは液体量だけでなく、押圧の強さ・時間、液体の移動、組織基質のに依存する。したがって左右で同じ部位を同程度に押し、条件をそろえて比較する。

振動を触れる

触診は静的な変形だけでなく振動も捉える。胸壁上のは発声で生じた振動が気道・肺・胸壁を伝わった信号であり、伝達経路の密度や境界条件で強さが変わる。これは内部音を検出すると共通の発生源をもちうるが、触診はの機械振動を皮膚の受容器で感じる点が異なる。

まとめ

  • 触診は既知の力を入力し、変形・反発・回復・振動を測る能動的な診察である。
  • 生体組織は弾性とを併せもつため、応答は押す速さと時間にも依存する。
  • の移動と組織回復が遅いことの力学的な表れである。
  • 部位、力、時間をそろえた比較が解釈の前提となる。