発生学

発生学 · 6.2

胚子期(器官形成):中胚葉由来組織

The Embryonic Period, Weeks 3–8 — Mesoderm derivatives

🧠 は正中から外側へ「傍軸→中間→側板」の3列に分かれ、それぞれ異なる臓器群を作る、と覚える。 は体節→骨格・筋・真皮、は、は体壁・体腔の膜と。この「正中から外側への3レーン」という空間的な整理が中胚葉由来組織を覚える最短ルート。

中胚葉の3区分

から陥入した(05-1-gastrulation-primitive-streak)は、正中のを挟んで左右対称に、内側から外側へ3列に組織化される。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraembryonic mesoderm'>胚内中胚葉</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='notochord'>脊索</span>の両側)"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paraxial mesoderm'>傍軸中胚葉</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='notochord'>脊索</span>のすぐ外側"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate mesoderm'>中間中胚葉</span>:中央"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral plate mesoderm'>側板中胚葉</span>:最外側"]

傍軸中胚葉

して体節を形成する(09-1-skull・10-1-skeletal-striated-muscleで詳述)。体節はまずとに分かれ、からさらに筋節とが分化する。1

区分 由来する構造
椎骨・肋骨などの(09-1-skull)
筋節(骨格筋, 10-1-skeletal-striated-muscle)+(背部の真皮)

⚠️ 頭蓋顔面の骨格筋と心筋は未分節のから、体幹・四肢の骨格筋は分節して体節になるから生じる(10-2-head-limb-body-wall-muscles)。2 ただし「頭部のは一切分節しない」と閉じて書かない——口腔顔面の筋は咽頭弓の中胚葉との2領域から発生し、舌の筋は=分節した体節に由来する(16-2-tongue-thyroid)。3

💡 somitomere(体節分節)という語は用法が割れている。 分節時計を扱う現行の文献では未分節中胚葉の前端の細胞が上皮性の球になった、体節になる直前の単位を指す。21 一方、ニワトリ胚の頭部中胚葉に見いだされた「体節の痕跡」をこの語で呼ぶ用法(Meier 1979)が別にあり、そちらは追試で同じ形態構造が検出されず遺伝子発現もそのパターンに合わなかったため、頭部が分節するか否かは決着していない。4 詳しくは 10-1-skeletal-striated-muscle。

中間中胚葉

との間に位置し、体幹に沿って様の構造を経て、腎・尿管・・などの主要なを作る(15-1-urinary-system)。56

  • 腎臓(・・)、()、(・)の起源。

側板中胚葉

の内部に腔所(, 11-1-intraembryonic-coelom)が生じることで、と臓側の2層に分かれる。

層 覆う位置 由来する構造
外胚葉の内面に接する 体壁の結合組織・胸骨、四肢の骨・結合組織(骨格筋自体は由来)、漿膜の(11-1-intraembryonic-coelom)
内胚葉の外面に接する 消化管・呼吸器の壁の結合組織・平滑筋、漿膜の、心臓・血管系(心筋を含む)

は・血液・平滑筋系・四肢骨格など、広範な体壁・内臓系の前駆細胞を生じる。7

⭐ 「+外胚葉=体壁」「+内胚葉=(消化管・呼吸器の壁)」という組合せは体腔・消化管の構造を理解する基本単位(11-1-intraembryonic-coelom・14-1-gut-tube-divisions)。

その他の中胚葉由来組織

体節・・の3区分に加え、中胚葉全般から派生する組織として以下も重要。

構造 由来
血液細胞・血管内皮 ・。マウスでは胚齢7.5日に卵黄嚢の層で造血が始まり、造血細胞は卵黄嚢の血管網が確立するまでという細胞集塊として見られる。で作られる主なは原始赤芽球 8
脾臓 の間葉(内胚葉性ではない点に注意)。ヒトではCarnegie stage 14(受精後4.5〜5週)にの左側の単一の膨隆として現れ、CS20(受精後7.5週)から分離が始まってCS23でができる 9
副腎皮質 後方ののが両側で肥厚した副腎生殖——と共通ので、ヒトでは受精後5週(CS15/16)までに独立した副腎が分かれる(副腎髄質は神経堤由来、対比が頻出) 10
結合組織・軟骨・骨全般 体幹部は中胚葉、頭頸部の多くは神経堤由来(間葉の起源は部位で異なる)

💡 副腎皮質とが同じから分かれることは、両者がの系列として並んで発生し(15-1-urinary-system)、ステロイド合成という機能を共有することの発生学的な裏づけになる。初期の副腎は一括のトランスームで見ると当初は腎(中胚葉)に近く、の割合が減って副腎固有の細胞の割合が増えるにつれて次第に離れていく。10

⚠️ 脾臓のを「分葉したの名残」と読まない。 脾臓が複数のの癒合でできるという古い仮説に立つと、成人のはの遺残——英語文献でいう「persistent foetal lobulation」——と説明されることになる。しかしヒト胚22例のでは脾は全例で単一の間葉性凝集であり、の数は胎児で0〜6・成人で0〜5と分布に差が無かった。多中心性の起源や分葉したの形態学的な証拠は得られておらず、原著はを数や位置によらず正常変異として扱い「persistent foetal lobulation」の語を用いないよう提案している。9

まとめ

  • は正中から外側へ・・の3列に分かれる。
  • は体節を作り、()とに分かれ、は筋節(骨格筋)と(背部真皮)へ分化する。
  • 頭蓋顔面の骨格筋と心筋は未分節のから生じるが、頭部側にもがあり、舌の筋はそこから生じる。
  • は腎・尿管・・などの主要なを作る。
  • は体壁性(体壁・四肢骨格・漿膜)と臓側性(・・漿膜)に分かれる。
  • 脾臓・副腎皮質・血球なども中胚葉由来で、副腎髄質(神経堤由来)との対比が試験で頻出。
  • 脾臓はに生じる単一の間葉性凝集で、副腎皮質はと共通の副腎生殖(後方のの)から分かれる。

出典

  1. 1.Understanding paraxial mesoderm development and sclerotome specification for skeletal repair(Experimental & Molecular Medicine・2020)傍軸中胚葉は体節形成を経て硬節を生じ、椎柱などの軸骨格へ分化する閲覧 2026-08-22
  2. 2.Location, Location, Location: Signals in Muscle Specification(Journal of Developmental Biology・2018)頭蓋顔面の筋と心筋は未分節(unsegmented)の傍軸中胚葉に由来し、体幹と四肢の骨格筋は体節を生じる分節した傍軸中胚葉に由来すると本文冒頭で述べる。ただし同総説の図2の説明は「Tongue and neck muscles arise from the medial-dorsal and lateral-ventral domains of the occipital and cervical somites」と書いており、舌筋・頸筋を未分節傍軸中胚葉の側には置いていない。また5.1節「Somitogenesis」で、somitomere とは未分節中胚葉の前端の細胞が形態変化して上皮性の球になったものを指す、と定義している閲覧 2026-09-06
  3. 3.Orofacial Muscles: Embryonic Development and Regeneration after Injury(Journal of Dental Research・2020)「Orofacial Muscle Development」節が、口腔顔面の筋は咽頭弓の中胚葉と後頭部体節という胚頭部の2つの領域から発生し、「The occipital somites give rise to the muscles of the tongue」と述べる閲覧 2026-09-06
  4. 4.Ultrastructure of the lamprey head mesoderm reveals evolution of the vertebrate head(iScience・2023)導入が、頭部が分節するか否かの論争は決着していないとしたうえで、「vestiges of somites, known as somitomeres, have been discovered in the head mesoderm of early chicken embryos」(Meier 1979)と述べ、続けて「However, replication studies of somitomeres did not detect such morphological structures, nor did gene expression profiles of head mesoderm fit well with somitomere patterns」と、追試で同じ形態構造が検出されなかったことを記す閲覧 2026-09-06
  5. 5.Turning mesoderm into kidney(Seminars in Cell & Developmental Biology・2019)中間中胚葉は前腎・中腎・後腎へ寄与する腎前駆細胞を生じる閲覧 2026-08-22
  6. 6.Pax-2 controls multiple steps of urogenital development(Development・1995)中間中胚葉由来の管上皮と腎原性間葉が腎・尿管・生殖管の主要構造を形成する閲覧 2026-08-22
  7. 7.The lateral plate mesoderm(Development・2020)側板中胚葉は心血管系・血液・平滑筋系・四肢骨格などの前駆細胞を形成する閲覧 2026-08-22
  8. 8.Mouse Yolk Sac Hematopoiesis(Frontiers in Cell and Developmental Biology・2018)「Primitive erythropoiesis」節で、マウス胚では胚齢7.5日という早い時期に卵黄嚢の胚外中胚葉層で造血が観察されること、造血細胞は卵黄嚢の血管網が確立するまで血島(blood islands)と呼ばれる細胞集塊として見られること、そこで作られる主要な系譜は原始赤芽球であることを述べる閲覧 2026-09-06
  9. 9.Morphological variations of the human spleen: no evidence for a multifocal or lobulated developmental origin(The British Journal of Radiology・2023)ヒト胚22例の組織切片で、脾原基がCarnegie stage 14(受精後4.5〜5週)に背側胃間膜の左側の単一の膨隆として初めて現れ、全例で単一の間葉性凝集として観察されたこと、背側胃間膜からの分離がCS20(受精後7.5週)に始まりCS23で脾門を形成することを報告する。切痕の数は胎児で0〜6・成人で0〜5と差が無く、多中心性の起源や分葉した発生段階の形態学的な証拠は得られなかったため「persistent foetal lobulation」の語を用いないよう提案している閲覧 2026-09-06
  10. 10.An integrated single-cell analysis of human adrenal cortex development(JCI Insight・2023)導入で、ヒトの副腎皮質は体腔上皮(後方の中間中胚葉)が両側で肥厚した「副腎生殖原基(adrenogonadal primordium)」から発生し、独立した副腎原基は受精後5週(Carnegie stage 15/16)までに形成されると述べる。考察では受精後4週ごろの中間中胚葉/間葉の凝集から副腎が生じること、初期の副腎の一括トランスクリプトームが当初は腎(中胚葉)に近いことを自らの空間トランスクリプトーム解析の結果として示している閲覧 2026-09-06