Gynecology

Gynecology · 17

子宮頸癌の病因と前癌病変

Etiology and precancerous states of cervical cancer

前提:病態
パピローマウイルスとポリオーマウイルス(BK・JC)
前提:正常
女性生殖:子宮頸部・腟・外陰部
疾患
子宮頸癌

🧠 全体像は、における(high-risk human papillomavirus:hrHPV)のである。感染の多くは消失するが、からLSIL、L、浸潤癌へ進む経路を理解することが、ワクチン・検診・前を一本につなぐ。

子宮頸部の発生母地

  • 外子宮は扁平上皮、頸管側は腺上皮で覆われる。
  • 両者が接する周囲がである。
  • ではが活発で、子宮頸部・癌の大部分が発生する。
  • 主な組織型は扁平上皮癌で、腺癌が続く。

病因:hrHPV持続感染

そのものは一般的だが、発癌に重要なのはである。HPV 16・18が多くを占め、31、33、35、39、45、52、58なども発癌性を持つ。

flowchart TD
    A["hrHPVが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation zone (prostate: transition zone)'>移行帯</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>へ感染"] --> B["多くは免疫により自然排除"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"]
    C --> D["ウイルスDNAの宿主ゲノムへの組込み"]
    D --> E["E6によるp53抑制・E7によるRb抑制"]
    E --> F["上皮成熟障害と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant cell type'>異型細胞</span>増殖"]
    F --> G["HSIL"]
    G --> H["基底膜を越えて浸潤癌"]

進展を助ける因子

  • 喫煙
  • 免疫抑制、HIV感染
  • 検診未受診
  • 若年からの性的曝露や複数パートナーはHPV曝露機会と関連する
  • 高経産、長期経口避妊薬使用などはを含む関連因子として報告される

💡 や性行動を患者の責任として扱わず、ワクチン、検診アクセス、禁煙、免疫状態の管理という介入可能な要素へ結びつける。

HPV感染の臨床的な見え方

は、学習上は次のように整理できる。

状態 検査・病変
潜伏感染 HPV核酸を検出しても細胞診・に病変を認めない
肉眼では分かりにくいが、細胞診・で扁平上皮内病変を認める
、癌、などの臨床病変を形成する

低リスクHPVによる疣贅・呼吸器と、高リスクHPVによる子宮頸部発癌を区別する。

子宮頸部上皮内病変

細胞診と組織診の対応

は上皮の下層から全層へ拡大し、基底膜を破ると浸潤癌になる。

細胞診 上皮内の広がり 主な意味
LSIL CIN 1 下層約1/3 HPV産生性感染。が多い
L CIN 2 下層約2/3 真のを含む
L CIN 3 ほぼ全層、を含む 浸潤癌への進展リスクが高い
悪性細胞 浸潤癌 基底膜を越える 、転移能を獲得

細胞診結果と断は同義ではない。LSIL・Lは細胞診/扁平上皮内病変の用語、CINは生検組織の異型度である。

ウイルス増殖と上皮像

  • LSILでは感染細胞が上皮表層へ成熟しながらウイルス粒子を産生し、がみられる。
  • Lでは高リスクHPVのE6/E7発現が持続し、表層へ向かう正常成熟が失われる。
  • 基底膜より上に限局する間は上皮内病変で、基底膜を越えた時点で微小浸潤癌となる。

診断

  • CIN自体は通常無症状であり、HPV検査・細胞診の異常から発見される。
  • を観察し、最も疑わしい部位を生検する。
  • 細胞診、HPV型、年齢、過去の検査歴、免疫状態を統合したリスクベース管理を行う。

治療原則

病変 原則
CIN 1/LSIL相当 多くはするため、直ちに治療せず経過観察を基本とする
CIN 2 年齢、妊孕性希望、病変の可視性、持続期間により監視または治療を個別化
CIN 3/L 原則として治療。ループ式電気切除(loop electrosurgical excision procedure:/LLETZ)やで病理評価を得る
診断的切除で浸潤と断端を評価し、妊孕性希望を踏まえて追加治療
  • 切除療法は組織が得られ、浸潤の除外と評価ができる。
  • レーザー・などのは、病変全体とが観察でき、浸潤・腺病変が疑われない選択例に限る。
  • 妊娠中は不要なを避け、浸潤癌を疑わない限り前を産後へ延期する。

⚠️ 「Lの少なくとも35%が10年以内に浸潤癌」という旧来の固定値は、・病理定義・治療の有無で大きく変わる。CIN 3は未治療で長期進展リスクが高い一方、CIN 1は退縮しやすいという方向性を押さえる。

まとめ

  • hrHPVの一過性感染ではなく、におけるの必要因子である。
  • HPV DNA組込みとE6/E7による腫瘍抑制蛋白の阻害が、上皮成熟障害からL・浸潤癌へつながる。
  • LSIL/CIN 1は監視、L/CIN 3は治療が基本であり、細胞診・・患者背景を統合して管理する。