組織学

組織学 · 0.4

組織学的手法・顕微鏡:顕微鏡法

Techniques & microscopy — Microscopy

🧠 顕微鏡法は「何で見るか(光か電子か)」と「どう見るか(か蛍光かか)」の掛け合わせとして整理する。 を決めるのは光源の波長で、は可視光よりずっと波長が短いため(EM)は(LM)よりはるかに高い分解能をもつ——この一点さえ押さえれば、なぜの詳細観察にEMが必須なのかが導ける。

光学顕微鏡と分解能

顕微鏡の性能を決める最も重要な指標は分解能=2点を別々のものとして識別できる最小距離であり、これは主に使用する光(または)の波長によって決まる。

顕微鏡の種類 光源 おおよその分解能 主な用途
可視光 〜0.2μm H&E標本など一般組織標本の観察
可視光(を利用) 〜0.2μm 無染色の生細胞・の観察
可視光() 〜0.2μm (00-3-immunolabeling-molecular)の観察
レーザー光 〜0.2μm(Z軸分解能に優れる) 化による3D
超解像顕微鏡(STED、PALM/STORM) レーザー光 20〜100nm 回折限界を超えた蛍光観察(細胞骨格・タンパク質集合体の配置)
〜0.2nm(LMの約1000倍) の微細構造観察
クライオ (急速凍結した含水試料) 1〜2Å タンパク質分子の原子分解能構造
flowchart TD
  A["分解能を決めるもの=光源の波長"]
  A --> B["可視光(波長が長い)→ LM系:分解能 約0.2μm"]
  B --> B2["蛍光分子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quenching'>消光</span>・点滅を使えば回折限界の下へ<br>超解像顕微鏡:20〜100nm"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electron beam'>電子線</span>(波長が極めて短い)→ EM:分解能 約0.2nm"]

💡 「なぜではリボソームや膜の詳細が見えないのか」という疑問への答えは、光の波長そのものがそれらの構造よりも大きいから、という一点に尽きる。は波長が桁違いに短いため、はじめての内部構造(01-2-membranous-organelles)を「見る」ことができる。

⚠️ 「約0.2μmが光の限界」は、いまは光学系そのものの限界であって、蛍光観察の限界ではない。 回折限界は「1点を1点として結像できるか」の話なので、蛍光分子を時間的にずらして光らせればその下に潜れる。焦点の周縁だけをで消してスポットを絞るSTEDは直径90〜110nmの蛍光スポットを実現し(共焦点の18分の1の体積)1、一度に一部の分子だけを光らせて位置を精密に決め多数の像を重ね合わせるPALM/STORMは20nm級の分解能を示した2。これら超解像顕微鏡は2014年のノーベル化学賞の対象になっている。上の表でを「約0.2μm」と書いているのは通常の共焦点にはこの仕掛けが無いからであって、光を使うかぎり0.2μmが上限、という意味ではない。

電子顕微鏡

には大きく2種類があり、観察したい情報(内部構造か表面形態か)によって使い分ける。

種類 観察対象 得られる情報
極片(超片, ultrathin section)をが透過 細胞内部の微細構造(膜系・細胞骨格など)
試料表面をで 立体的な表面形態(元的な凹凸)

⚠️ EM標本は通常の法(00-1-tissue-preparation)よりはるかに厳密な固定(固定など)と、樹脂・極片化を必要とする——H&E用の固定条件をそのままEM観察に流用することはできない点に注意。

💡 TEM/SEMの二分に、いまは「凍らせる」と「積む」という2つの軸が加わっている。 ひとつはクライオで、化学固定も染色もせず試料を急速凍結(ガラス化)したまま観察するため、固定・脱水による変形を受けない状態の分子を見られる。多数の粒子像を計算で平均する単粒子解析は1.7Å級、すなわちタンパク質中の個々の原子が見える水準に達しており3、構造生物学の主要手法になった(2017年ノーベル化学賞)。もうひとつは体積で、の試料室内でとブロック表面の撮像を自動で繰り返すSBF-SEMなどにより、数百μmの組織を最も細い細胞突起やまで追える分解能で元できる4。「EM=2次元の極片1枚」という枠は現在では当てはまらない。

標識との組み合わせ

・は(00-3-immunolabeling-molecular)と組み合わせることで、特定分子の局在を細胞内・組織内で高いで可視化できる。は焦点面以外からの光をピンホールで除去することでを得られるため、厚みのある試料でも鮮明な像が得られ、複数のを重ねて元することも可能である。

まとめ

  • 顕微鏡の分解能は主に光源(光かか)の波長によって決まり、は可視光よりはるかに波長が短いためEMはLMよりずっと。
  • LM系には・・蛍光・があり、目的(染色標本か生細胞かの局在か)に応じて使い分ける。
  • EMにはTEM(内部微細構造)とSEM(表面の立体形態)があり、専用の固定・法が必要。
  • 回折限界(約0.2μm)は超解像顕微鏡(STED・PALM/STORM、20〜100nm)で越えられ、EM側もクライオ(原子分解能)と体積EM(元)へ広がっている。
  • は化により3Dが可能で、との相性がよい。

出典

  1. 1.Fluorescence microscopy with diffraction resolution barrier broken by stimulated emission(Proceedings of the National Academy of Sciences・2000)誘導放出(STED)で焦点周縁の励起分子を消光することで回折限界を破り、直径90〜110nmのほぼ球形の蛍光スポット(体積は共焦点の18分の1)を得た閲覧 2026-08-24
  2. 2.Sub-diffraction-limit imaging by stochastic optical reconstruction microscopy (STORM)(Nature Methods・2006)光スイッチング可能な蛍光分子を一度に一部だけ光らせて位置を高精度に決め、多数の撮像サイクルを重ね合わせることで20nmの分解能を実証した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Single-particle cryo-EM at atomic resolution(Nature・2020)新しい電子源・エネルギーフィルター・カメラにより、単粒子クライオ電子顕微鏡でヒト膜タンパク質の1.7Å分解能再構成が得られ、タンパク質中の個々の原子を可視化できる水準に達した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Serial block-face scanning electron microscopy to reconstruct three-dimensional tissue nanostructure(PLoS Biology・2004)走査型電子顕微鏡の試料室内で連続薄切とブロック表面撮像を自動で繰り返すことで、数百μmにわたる組織を、最も細い細胞突起やシナプス小胞まで追える分解能で三次元再構築できる閲覧 2026-08-24