組織学

組織学 · 1.2

細胞・細胞小器官・核:膜性細胞小器官

Cytology — Membranous organelles

疾患
成人Refsum病
検査値
フィタン酸

🧠 膜性は「タンパク質ライン」として一直線につながっていると覚える。 で合成→で加工・仕分け→として放出、という流れ(, secretory pathway)が幹。・ミトコンドリア・リソソーム・はこの主要ラインに付随する専署(・・分解・解毒)として位置づける。

小胞体

表面 リボソームが付着(ザラザラ=粗面) リボソームなし(滑らか)
主な機能 分泌タンパク質・の合成 脂質・の合成、解毒、Ca²⁺貯蔵
染色性 好塩基性— リボソームのによる(00-2-staining) 好酸性寄り、H&Eでは目立たない
発達が顕著な細胞 線維芽細胞(03-1-cells)、漿液性腺細胞(02-5-glands)、形質細胞 副腎皮質細胞、肝細胞、

⭐ 「好塩基性の強い細胞質=rERが豊富=タンパク質分泌が盛ん」という対応は、H&E標本の色調から細胞の機能を推測する最頻出パターン。線維芽細胞の活動型(03-1-cells)や漿液性(02-5-glands)を見分ける際の手がかりになる。

ゴルジ体

扁平な膜性のが重なった構造で、rERで合成されたタンパク質を受け取り、修飾(など)・選別・濃縮したのち、として細胞外への放出経路(, secretory pathway)に送り出す。

flowchart TD
  A["核でmRNA合成"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rough endoplasmic reticulum (rER)'>粗面小胞体</span>(rER)でタンパク質合成"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Golgi apparatus'>ゴルジ体</span>で修飾・選別・濃縮"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secretory granules'>分泌顆粒</span>として細胞質内に貯留"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exocytosis'>開口分泌</span>で細胞外へ放出"]

ミトコンドリア

二重膜構造をもち、内膜がと呼ばれるひだを形成することで表面積を増やし、によるATP産生を行う「細胞の」。エネルギー需要の高い細胞(、の部、精子の中片部など)ほどミトコンドリアが密に配列する。

💡 ミトコンドリアが独自の・リボソームをもち、二重膜構造であることは、太古の好気性細菌がの祖先に取り込まれてした「」の根拠——この由来を知っておくと、なぜミトコンドリアだけがの中で自己増殖・独自遺伝情報をもつのか説明がつく。

リソソームとペルオキシソーム

リソソーム
由来 から出芽 既存のの成長と分裂による自己複製が主。分は小胞体由来の膜+細胞質からのタンパク質取り込みで、ではミトコンドリア由来の前駆小胞との融合体として生じる1
含有酵素 :多種類 カタラーゼ、酸化酵素
主な機能 細胞内消化:貪食物・老廃の分解(オートファジー)。加えてを感知しmTORC1を膜表面に載せる代謝シグナルの拠点2 の、フィタン酸の、プラズマローゲン(エーテルリン脂質)と胆汁酸の合成、(H₂O₂)の分解・解毒3
関連する細胞 マクロファージ(03-1-cells)、好中球など 肝細胞、など代謝・解毒が盛んな細胞

💡 リソソームもも「ごみ処理場」から格上げされている。 リソソームは長く細胞内消化の終着点として教えられてきたが、現在は細胞のを感知してとを切り替える動的な制御装置と理解されている4。実体としては、アミノ酸が足りているとRag GTPase-Ragulator複合体が増殖のマスタースイッチであるmTORC1を表面へ引き寄せて活性化する——リソソーム表面へ移動すること自体がアミノ酸シグナルの本体である2。も「H₂O₂の後始末」にとどまらず、分枝脂肪酸(フィタン酸)の、神経髄鞘に多いプラズマローゲンの合成、胆汁酸の合成という合成側の仕事を担い、これらが破綻する(などの)が知られている3。

まとめ

  • はタンパク質合成、は・解毒・Ca²⁺貯蔵を担う。
  • はrER由来のタンパク質を修飾・選別し、としてに送り出す。
  • ミトコンドリアはをもつ二重膜構造でATP産生を担い、内部に由来する独自のをもつ。
  • リソソームはによる細胞内消化、はとの解毒を担う。
  • ただし位置づけは分解装置にとどまらず、リソソームはmTORC1を載せてを感知する代謝シグナル拠点、はプラズマローゲン・胆汁酸を作る合成の場でもある。

出典

  1. 1.Newly born peroxisomes are a hybrid of mitochondrial and ER-derived pre-peroxisomes(Nature・2017)ペルオキシソームは既存の小器官の成長と分裂で増えるほか de novo にも生じる。哺乳類細胞では新生ペルオキシソームがミトコンドリア由来の前駆小胞と小胞体由来の前駆小胞の融合体として作られる閲覧 2026-08-24
  2. 2.Ragulator-Rag complex targets mTORC1 to the lysosomal surface and is necessary for its activation by amino acids(Cell・2010)アミノ酸はmTORC1をリソソーム膜へ移動させ、そこに常在するRag GTPaseとRagulator複合体がmTORC1を捕捉して活性化する。リソソーム表面への移動そのものがアミノ酸シグナル伝達の中心的事象である閲覧 2026-08-24
  3. 3.Human disorders of peroxisome metabolism and biogenesis(Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Cell Research・2016)ペルオキシソームは脂肪酸のα酸化・β酸化に加えてプラズマローゲンと胆汁酸の合成という同化経路も担う動的な小器官であり、その障害は個々の酵素欠損症とペルオキシソーム形成異常症の2群からなる疾患群を生じる閲覧 2026-08-24
  4. 4.Lysosomes as dynamic regulators of cell and organismal homeostasis(Nature Reviews Molecular Cell Biology・2020)リソソームは細胞の老廃物処理・再利用に専従する静的な小器官という見方から、細胞代謝を環境に適応させる高度に動的な構造という見方へ転換した。リソソーム由来のシグナル伝達と転写プログラムが同化と異化の切り替えを制御する閲覧 2026-08-24