組織学

組織学 · 6.5

循環器:心臓

Circulatory system — Heart

応用トピック
炎症性心疾患と心筋症

🧠 心臓壁は血管の3層構造(内膜・中膜・外膜)が「心内膜・・」という名前に変わっただけ、と対応づけて覚える。 (中膜に相当)が特に発達しているのは心臓がポンプそのものだから、という単純な理由づけに加え、心臓固有の構造として「線維性の骨格(弁を支える)」と「(自動的に興奮を作り伝える)」の2つをする。

心臓壁の3層

flowchart TD
  A["心内膜:内皮+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subendothelial CT'>内皮下結合組織</span><br>血管の内膜に相当"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardium'>心筋層</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte (cardiac myocyte)'>心筋細胞</span>の層<br>血管の中膜に相当、心臓で最も厚い"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epicardium'>心外膜</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesothelium'>中皮</span>+結合組織+脂肪組織<br>血管の外膜に相当"]
層 血管の対応層 構成
心内膜 内皮(06-1-general-plan)+、心室では(04-2-cardiac-muscle)を含むことがある
中膜 (で連結、04-2-cardiac-muscle)が層状に配列、心房より心室で厚い(特に左心室)
外膜 (漿膜)+結合組織+脂肪組織、冠状血管・神経を含む。を挟んでと向かい合う

心臓線維性骨格

心房と心室の境界、および各の周囲にはからなるが存在し、以下の機能を担う。

  • (弁の付着部)を支持し、弁の構造を維持する
  • の付着部として機能する
  • 心房と心室の心筋を電気的に絶縁し、を介した興奮伝導路以外からの興奮伝播を防ぐ

⭐ による心房・心室のは、興奮がという単一の“関所”を通らなければ心室に伝わらないことを保証する構造的基盤——これが破綻する(が形成される)と症候群のような不整脈の原因になる、という臨床的な意味づけを押さえておく。

刺激伝導系

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinoatrial (SA) node'>洞房結節</span>:右心房、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pacemakers'>ペースメーカー</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial muscle'>心房筋</span>を興奮が伝播"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrioventricular (AV) node'>房室結節</span>:心房・心室間の唯一の伝導路"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AV bundle (of His)'>His束</span>(bundle of His)→左脚・右脚"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Purkinje fiber'>プルキンエ線維</span>:心室筋を高速に興奮させる"]

は通常のより大型でグリコーゲンに富み、が少なく、電気伝導に特化した細胞である(04-2-cardiac-muscle)。

💡 「グリコーゲンに富む」は染色像だけの話ではなく、代謝の実体がある。 イヌのを微小解剖して測ると、とUDPグルコースピロが心筋より平均47%・70%高く、そのものが遅いことが高いグリコーゲン量の理由と考えられている。その結果、虚血2分の時点で心筋ではが75%低下するのに対し、ではもATPも高いまま保たれる1——虚血に強い(=梗塞後も生き残っての起源になりうる)という臨床的な性質は、この代謝上のから説明できる。

💡 心房のはでもある。 細胞の細胞質には核周囲を中心にがあり、ヒト心臓の免疫(二重免疫金法)では細胞のほぼすべてのにANP()が局在し、一部の顆粒にはが共存する。でははごくわずかしか見られないが、局在の仕方は心房と同じである2。心房が伸展されると顆粒からANPが放出され、利尿・と血管拡張を起こす——「心臓=ポンプ」だけでなく「心臓=内分泌器官」という側面を、顆粒という形態所見と結びつけて押さえる。

まとめ

  • 心臓壁は心内膜(内膜相当)・(中膜相当、最も厚い)・(外膜相当)の3層からなる。
  • はを支持し、心房・心室の心筋を電気的に絶縁する。
  • は→→→→の順に興奮を伝える。
  • は通常のより大型でグリコーゲンに富み、伝導に特化している。能が高くが遅いため虚血に比較的強い。
  • 心房のはをもち、そのほぼすべてにANPが含まれる(では顆粒はごくわずか)。心臓は内分泌器官でもある。

出典

  1. 1.Enzymes and metabolites of glycogen metabolism in canine cardiac Purkinje fibers(American Journal of Physiology・1985)イヌのプルキンエ線維はグリコーゲン量が非常に高く、グリコーゲン合成酵素とUDPグルコースピロホスホリラーゼは心筋よりそれぞれ平均47%・70%高い。虚血2分でも心筋ではクレアチンリン酸が75%低下するのに対し、プルキンエ線維ではクレアチンリン酸とATPが高値のまま保たれる閲覧 2026-08-24
  2. 2.Atrial natriuretic peptide and brain natriuretic peptide coexist in the secretory granules of human cardiac myocytes(American Journal of Hypertension・1991)ヒト心臓の二重免疫金法で、心房筋細胞ではANPがほぼすべての分泌顆粒に局在し、一部の顆粒ではBNPが共存する。心室筋細胞では分泌顆粒がごくわずかしか観察されないが、その局在様式は心房と基本的に同じ閲覧 2026-08-24