組織学

組織学 · 9.6

消化管:大腸

Digestive tract — Large intestine

応用トピック
大腸憩室症と憩室炎

🧠 大腸は「絨毛を失った小腸」と覚える——小腸との最大の違いは絨毛が“ない”ことただ一点。 大腸は栄養吸収ではなく水分・電解質の吸収と便の形成が主な仕事になったため、表面積を稼ぐ絨毛はし、に富む陰窩()だけが残っている。この「絨毛の有無」が小腸・大腸を組織像だけで即座に見分ける最も確実な指標になる。

大腸粘膜の基本構造:絨毛を欠く

大腸(結腸, colon・直腸, rectum)の粘膜は絨毛をもたず、からなる平坦な表面に、深く直走する腸腺(crypts of Lieberkühn)が密に並ぶ。

小腸(09-5-small-intestine) 大腸
絨毛 あり なし
陰窩(腸腺) あり(絨毛の間に開口) あり(より深く直走、密に配列)
の量 中等度 豊富(粘液で便の通過を滑らかにする)
あり(陰窩底部) 盲腸・には正常に存在し、・直腸ではまれ1
の主な役割 栄養素の吸収 水分・電解質(Na⁺など)の吸収

⭐ 「絨毛の有無」は小腸と大腸を光顕標本で鑑別する最も確実な一点——大腸は絨毛を欠く平坦な表面と、に富む深い陰窩の組み合わせで即座に同定できる。が多いのは、水分が吸収されて硬くなっていく便の通過を粘液で滑らかにするための適応。

⚠️ 「大腸にはない」という言い方は正確ではない。 ヒトでは盲腸とにが正常に存在し、・直腸へ向かって減少してまれになる——「無い/有る」ではなく盲腸から直腸への減少勾配である12。したがって遠位大腸にが現れたらそれは化生であり、の目印になる。実際、新規診断のでは13例中11例・Crohn病15例中14例の遠位大腸にが見られたのに対し、対照群では遠位大腸に1個も認められなかった2。「大腸のどのあたりの標本か」を意識しないと、正常と化生を取り違える。

大腸の固有筋層:結腸ヒモ

結腸のは、小腸のように均等なではなく、外が3本の帯状に集約したとして存在する(の間のは薄い)。の緊張により腸管が縮んでという膨らみが形成される。

虫垂と直腸・肛門管

  • 虫垂:大腸に類似した粘膜(絨毛なし、に富む陰窩)をもつが、全周にわたり(07-5-malt-tonsils)がする点が特徴
  • 直腸:大腸と同様の粘膜構造だが陰窩がより長い
  • :直腸のから、を境にへ移行する(と同様、上皮の急激な移行部)

💡 は単なる組織学的な境界にとどまらず、動脈・静脈・リンパ・神経の支配領域が上下で入れ替わる臨床的な要衝——より上(, internal hemorrhoids)は自律神経支配で無痛性、より下(, external hemorrhoids)は支配で有痛性という臨床像の違いも、この上皮の移行と対応する発生学的な境界に由来する。

まとめ

  • は絨毛を欠き、に富む深い陰窩が密に並ぶ点で小腸と区別される。
  • 大腸の主な機能は水分・電解質の吸収と便の形成である。
  • 結腸のはに集約され、を形成する。
  • は盲腸・には正常にあり、遠位大腸では稀。遠位大腸に出現すれば化生(の目印)である。
  • 虫垂は大腸型粘膜に加え全周のをもち、はで上皮がから重層扁平へ移行する。

出典

  1. 1.Paneth Cell-Derived Lysozyme Defines the Composition of Mucolytic Microbiota and the Inflammatory Tone of the Intestine(Immunity・2020)パネート細胞はC型リゾチームの主要な供給源である。ヒトでは盲腸と上行結腸にパネート細胞が正常に存在し、下行結腸と直腸ではまれである。遠位大腸でのパネート細胞化生と異所性のリゾチーム産生は炎症性腸疾患の病理像の目印になる閲覧 2026-08-24
  2. 2.Paneth cell metaplasia in newly diagnosed inflammatory bowel disease in children(BMC Gastroenterology・2014)小児の新規診断炎症性腸疾患28例と対照14例の大腸生検を6部位で数えたところ、対照・潰瘍性大腸炎・Crohn病のいずれでも盲腸から直腸へ向かうパネート細胞数の減少勾配があった。対照群では遠位大腸にパネート細胞は認められなかったが、潰瘍性大腸炎13例中11例、Crohn病15例中14例では遠位大腸に存在した。10腺あたり10個超のパネート細胞という過形成は炎症性腸疾患群にのみ見られた閲覧 2026-08-24