組織学

組織学 · 7.5

免疫・リンパ系:MALTと扁桃

Lymphoid & immune system — MALT & tonsils

応用トピック
鼻炎、アデノイド炎、扁桃炎、気管支炎口腔・咽頭疾患

🧠 リンパ性器官の鑑別は「被膜があるか」「上皮に覆われているか」の2つの有無だけで大枠が決まる、と覚える。 被膜をもつのはリンパ節・脾臓(=独立した臓器)、上皮性の被覆をもつのは扁桃・・虫垂などの(=粘膜に埋め込まれた組織)——この2軸のマトリクスに当てはめれば、名前だけを見てもどのタイプかを判定できる。

粘膜関連リンパ組織

消化管・呼吸器・泌尿生殖器の粘膜にびまん性に分布する免疫組織をと呼ぶ。粘膜表面から侵入する病原体に対する最前線のを担う。

flowchart TD
  A["MALT(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosa-associated lymphoid tissue (MALT)'>粘膜関連リンパ組織</span>)"]
  A --> B["扁桃:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fauces (isthmus of fauces)'>口峡</span>・咽頭周囲"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Peyer patch'>パイエル板</span>:回腸"]
  A --> D["虫垂"]

扁桃の4種

扁桃はいずれもをもつが、覆う上皮の種類・被膜の有無が部位ごとに異なる。

扁桃 被覆上皮 特徴
(非角化型) 深い陰窩、上皮の浸潤、周囲組織とを隔てる被膜をもつ
(非角化型) 浅い陰窩、粘液腺・骨格筋・脂肪組織を伴い上皮浸潤がある
(型) 浅い陥凹
(型) 耳管の軟骨が近接する

⭐ ・は(口腔と連続)、・は(呼吸器と連続)という被覆上皮の違いは、それぞれの扁桃が接している粘膜の種類(口腔粘膜かか)をそのまま反映している——上皮の種類から扁桃の部位をできる。

パイエル板と虫垂

虫垂
被覆上皮 +(, 09-5-small-intestine)。ただし濾胞の真上だけは濾胞被覆上皮(上皮)に置き換わり、絨毛もも乏しくを含む +(, 09-6-large-intestine)
の分布 回腸の腸間膜対側にのみ 全周にわたり

💡 の真上の上皮は、周囲の吸収上皮とは別物になっている。 の状の隆起を覆う濾胞被覆上皮では、絨毛が平坦化しがほとんど無く、その約5%を(microfold cell)が占める。はが短く不規則で、()と粘液のバリアがきわめて薄いため、管腔の粒子・微生物が上皮に直接接触できる1。はこれを取り込んで細胞を貫通させ()、直下のへ受け渡す。を選択的に除去したマウスでは、経口曝露したのへの蓄積が起こらず、神経侵入も発症も阻止された2——MALTの「上皮に覆われている」という特徴は、ただ埋め込まれているという意味ではなく、抗原を取り込むための専用の入口が上皮側に用意されているという意味である。

リンパ性器官の鑑別表

リンパ性器官 被膜 被覆上皮
胸腺(07-2-thymus) なし あり なし
リンパ節(07-3-lymph-node) あり あり なし
脾臓(07-4-spleen) あり(を伴う) あり なし
扁桃 あり のみあり あり
あり なし あり
虫垂 あり なし あり

💡 この表を機械的に埋められるようになると、リンパ性器官の分類問題はほぼすべて解ける——「濾胞の有無」で胸腺だけをまず除外し、「被膜の有無」でリンパ節・脾臓(臓器として独立)とMALT系(粘膜に埋め込まれ被膜なし)を分け、「被覆上皮の有無」で(上皮なし)とMALT系(上皮あり)を確認する、という3段階のふるい分けとして扱うと迷わない。

まとめ

  • MALTは粘膜にびまん性に分布する免疫組織で、扁桃・・虫垂を含む。
  • ・は、・はに覆われ、それぞれ隣接する粘膜の種類を反映する。
  • は回腸の腸間膜対側に、虫垂は全周にが分布する。
  • の濾胞直上は濾胞被覆上皮(上皮)で、に乏しくが抗原の取り込み口として働く。
  • リンパ性器官の鑑別は「濾胞の有無」「被膜の有無」「被覆上皮の有無」の3軸で整理できる。

出典

  1. 1.Mucosal barrier, bacteria and inflammatory bowel disease: possibilities for therapy(Digestive Diseases・2014)パイエル板を覆うドーム上皮ではその約5%がM細胞で細菌の主要な侵入門となる。ドーム上皮には杯細胞が無く、M細胞の糖衣(グリコカリックス)はきわめて薄い閲覧 2026-08-24
  2. 2.M cell-depletion blocks oral prion disease pathogenesis(Mucosal Immunology・2012)パイエル板を覆う濾胞被覆上皮のM細胞を除去すると、経口曝露後のパイエル板濾胞樹状細胞へのプリオン蓄積が阻止され、神経侵入と発症も阻止された。M細胞が管腔から粘膜リンパ組織への粒子の入口であることを機能的に示す閲覧 2026-08-24