組織病理学

組織病理学 · H1-036

慢性受動性肝うっ血の晩期

Late stage

描出疾患
慢性心不全
画像所見
ニクズク肝

🧠 全体像:本標本は の晩期像である。長期のによっての・萎縮が進み、どうしを結ぶ(central-central bridging fibrosis)が形成される。

早期から晩期への進展

flowchart TD
    A["右心不全・静脈圧上昇"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central vein'>中心静脈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinusoids'>類洞</span>うっ血"]
    B --> C["zone 3の反復性低酸素"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericentral (perivenular)'>中心静脈周囲</span>肝細胞の壊死・萎縮"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericentral (perivenular)'>中心静脈周囲</span>線維化"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central vein'>中心静脈</span>間の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bridging fibrosis'>架橋性線維化</span>"]
    F --> G["小葉構築の改変"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac cirrhosis'>心臓性肝硬変</span>"]

標本で確認する所見

部位 所見 読み方
の脱落、壊死、萎縮 最も低酸素に弱いzone 3の障害
間 慢性うっ血に特徴的なcentral-central bridging
比較的保たれた肝細胞、 初期にはが保たれやすい
、、胆管 との位置関係を決める目印

「逆転した小葉構築」

一般的なではを起点とする間(portal-portal)または—間の線維化が目立つ。ではから線維化が始まり、間をつなぐため、通常と異なる「逆転した小葉構築(reversed lobulation)」と表現される。

💡 この起点の違いは、線維化の分類が別立てになっている理由でもある。 用のMETAVIRはを基準にし、用のスコア(congestive hepatic fibrosis score)はを基準にする。Fontan術後38例の比較では全体の一致は高い(重み付きκ0.92)ものの、軽度線維化の段階だけ一致が落ち(κ0.70)、その差はこの着目部位の違いに由来すると解釈された1。

原病変はにあるため、「の壊死巣どうしが橋を作る」と解釈しない。

心臓性肝硬変の注意点

  • 長期の重症右心不全、、などで進展しうる。
  • 線維化があっても、通常の炎症性肝疾患ほど炎症が強いとは限らない。拡張と線維化がの指標であり、まで線維化が及んだ段階でようやくが有意に高くなる2。
  • 「心臓性肝硬変(cardiac cirrhosis)」は高度な線維化・を示す段階に用い、すべてのを肝硬変と呼ばない。
  • 線維化の程度は血行動態からは読めない。Fontan術後42例の検証では、高線維化(3・4)は術後経過が長い例に多かった一方、血行動態指標には低群との有意差がなく、評価はに依存した3。

まとめ

  • この標本の実体は、/の晩期像である。
  • の壊死・萎縮と、間のが中心所見である。
  • は初期に比較的保たれ、脂肪変性を伴うことがある。
  • 長期化すると小葉構築が改変され、へ進展しうる。

出典

  1. 1.A Tale of METAVIR and Congestive Hepatic Fibrosis Score: Evaluating Liver Fibrosis Assessment in Fontan Patient(Pediatric Cardiology・2026)Fontan術後38例の肝生検でMETAVIRスコアとうっ血性肝線維化スコアを比較すると全体の重み付きκは0.92と高一致だったが、低度線維化群ではκ0.70にとどまり(高度線維化群はκ0.90)、この差は両者の着目する構築の違い、すなわちMETAVIRが門脈域基準であるのに対しうっ血性肝線維化スコアが中心静脈周囲基準であることに由来すると考えられた。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Congestive hepatic fibrosis score: a novel histologic assessment of clinical severity(Modern Pathology・2014)慢性心不全42例の肝生検で提案されたうっ血性肝線維化スコアは右房圧と相関した(傾向のP<0.001)。類洞拡張と中心静脈周囲線維化がうっ血肝の指標であり、門脈域の線維化を伴う段階(スコア2・3)は線維化なし(P<0.001)や中心静脈周囲線維化のみ(P=0.02)より右房圧が有意に高く、より進行した病変を示す。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Validation of Congestive Hepatic Fibrosis Score in Pediatric and Adult Fontan-Associated Liver Disease(The American Journal of Surgical Pathology・2025)Fontan術後の小児・成人42例の肝生検を3名の病理医が評価した検証研究で、うっ血性肝線維化スコアとMETAVIRは低ステージ(0・1・2)と高ステージ(3・4)で同一の分類を与え、観察者間一致は中等度であった。高ステージ線維化はFontan術後期間が長いほど多かった一方、血行動態指標には両群間で有意差がなく、線維化の評価は肝生検に依存する。閲覧 2026-08-24