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Imaging findings · Published

ニクズク肝

Nutmeg liver

別名
肉荳蔲肝ナツメグ肝
臓器系
肝胆膵循環器
科目
HistopathologyPathology
トピック
組織病理 H1-035:脂肪変性を伴うニクズク肝組織病理 H1-036:慢性受動性肝うっ血の晩期病理学 C/46:肝の循環障害

🧠 全体像で見つけたときに決めるべきことは、肝そのものの診断ではない。「肝を追うのをやめて心臓を見に行け」という方向転換である。この所見は原発性の肝疾患ではなくのうっ血を肝が映し出しているだけなので、見つけたら心エコーと頸静脈の評価(を含む)へ進む。身体所見としてのと合わせて評価すると、触診と画像の両輪でうっ血の程度を追える。

所見の定義

(ナツメグ)の断面に似たまだら模様を指す。)はうっ血・出血で暗赤色に、)は比較的保たれた肝細胞が淡黄色に見え、この対比が斑紋を作る。

が先に傷むのは、肝が門脈()と)の混合血を受けたあと、を経て最後にへ流れ込む構造上、がもっとも低い部位だからである。右心不全(などを来す病態)単独ではのうっ血にとどまるが、・ショックが加わり虚血が重なると、へ進む。

モダリティと写り方

見え方
造影CT のうっ血で造影剤の流入が周辺部から妨げられ、網状・モザイク状の不均一な低パターンとして写る。時間が経つほどは均一に近づく。・下大静脈の拡張を伴い、注入速度によっては造影剤が下大静脈・へ逆流する所見(・肺高血圧・を反映)を伴うことがある12
超音波 下大静脈・の拡張、の減少、の異常(収縮期・拡張期成分の関係の変化)がみられる1
MRI を示す。を使う場合、)で拡張したが造影剤を取り込まずT1低信号としてより明瞭に描出される1
肉眼・組織 のうっ血・出血と・壊死、の比較的保たれた肝細胞と脂肪変性による対比

リスクを上げる形態

うっ血が慢性化すると、の壊死・萎縮に線維化が続き、どうしを結ぶを経て、肝硬変へ進展しうる1の術後(後など)は数十年単位の長期経過で線維化・に至る例も報告されており、原疾患が長期に及ぶほど注意を要する1

評価の進め方

flowchart TD
    A["造影CTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>の網状・モザイク状の不均一<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperchromasia; strong (contrast) enhancement'>濃染</span>"] --> B["過去画像と比較<br>新規か、既存のうっ血所見からの変化か"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic vein'>肝静脈</span>・下大静脈の拡張と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast reflux'>造影剤逆流</span>の有無を確認"]
    C --> D{"下大静脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic vein'>肝静脈</span>の拡張があるか"}
    D -->|"あり"| E["心エコー・頸静脈評価へ<br>右心不全・心タンポナーデ等を検索"]
    D -->|"なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic vein'>肝静脈</span>側の閉塞を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Budd-Chiari syndrome'>Budd-Chiari症候群</span>を精査"]
    E --> G["慢性例では線維化の進行度を評価<br>肝硬変への進展を追跡"]

紛らわしいもの

紛らわしいもの 見分けるポイント
造影のタイミングによる一過性の不均一 に限られる生理的な不均一で、静脈相・では均一化する。・下大静脈の拡張を伴わない
びまん性肝疾患の 脂肪の斑状分布による低で、血管周囲を避けるように分布することが多い。・下大静脈は拡張しない
側の閉塞そのものが原因で、直接下大静脈へ短絡するが代償性に腫大するのが特徴3のうっ血がより上流()に及んだ結果で、自体は開存していることが多い
肝の 血管を・置換する浸潤性のパターンで、・下大静脈の拡張という血行動態の変化を伴わない

まとめ

  • は原発性の肝疾患ではなくのうっ血の結果であり、見つけたら次にすべきは肝の精査ではなく心エコー・頸静脈評価である。
  • 名前の由来は肉眼の斑紋だが、CTでも同じ対比が網状・モザイク状の不均一として写り、肉眼所見の比喩と画像所見の名前が同じ語で重なっている。
  • が先に傷むのはが最も低い部位だからで、右心不全単独ではうっ血にとどまるが・ショックが重なるとへ進む。
  • 慢性化するとを経てへ進展しうる。
  • 側の閉塞、)、一過性の不均一と鑑別する。

出典

  1. 1.Congestive Hepatopathy: Pathophysiology, Workup, and Imaging Findings with Pathologic Correlation(RadioGraphics (Radiological Society of North America)・2024)うっ血肝のCT所見は類洞のうっ血・拡張により造影剤の流入が周辺部で妨げられ、遅延相にかけて濃染が均一化していく網状・モザイク状の低濃染パターンとして描出されること、超音波では下大静脈・肝静脈の拡張と肝静脈波形の異常(心収縮期・拡張期成分の関係の変化)がみられること、MRIではT1短縮・T2延長を示し肝胆道相の遅延相で拡張した類洞がT1低信号としてより明瞭に描出されること、慢性うっ血が中心静脈周囲の類洞圧上昇・うっ血性浮腫・出血・血栓を経て肝細胞萎縮と線維化に至り、中心静脈間を結ぶ架橋性線維化を形成すること、Fontan術後などでは20年以上を経て線維化・肝細胞癌に至りうることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Clinical Relevance of Retrograde Inferior Vena Cava or Hepatic Vein Opacification During Contrast-Enhanced CT(American Journal of Roentgenology・2004)造影CTで下大静脈・肝静脈へ造影剤が逆流する所見は、三尖弁逆流・肺高血圧・右室収縮不全を独立した予測因子とする右心系機能不全の所見であり、低速注入時は感度31%・特異度98%、高速注入時は感度81%・特異度69%と、注入速度によって感度・特異度が変わることを確認した(PubMed抄録を取得。本文は取得できず)。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Budd-Chiari Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Budd-Chiari症候群では肝静脈血が直接下大静脈へ短絡する尾状葉が最も血流の影響を受けやすく、肝静脈が閉塞すると尾状葉が代償性に腫大すること、超音波の典型所見として尾状葉の腫大が挙げられることを確認した。閲覧 2026-08-04