組織病理学

組織病理学 · H1-107

冠動脈解離

Dissectio coronariae

疾患
自然冠動脈解離

🧠 全体像:は、冠動脈に血液が入り・を形成してを圧迫する病態である。特には、破裂とは異なる機序のであり、若年女性や従来の動脈硬化性危険因子をほとんど持たない人の・心筋梗塞・突然死の重要な原因として認識されている1。

冠動脈解離の機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intimal tear'>内膜亀裂</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural'>壁内</span>微小血管出血"] --> B["中膜内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural hematoma (IMH)'>壁内血腫</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='false lumen'>偽腔</span>が進展"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='true lumen'>真腔</span>を圧迫"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary blood flow'>冠血流</span>低下"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial ischemia'>心筋虚血</span>・心筋梗塞・不整脈"]

SCADの特徴

項目 内容
好発 比較的若い女性に多い
関連 、妊娠関連、全身性動脈疾患など
部位 など中遠位冠動脈に多い
重要点 通常のと治療戦略が異なる

安定してが保たれるSCADでは自然治癒が期待できるため保存的治療が選ばれることが多い。保存的方針で管理した連続45例の前向き研究では、造影で追跡できた13例中7例(54%)で解離像が自然に消失した2。また初回SCAD 189例の検討では、の手技失敗率は53%(が保たれていた例に限っても50%)に達したのに対し、保存的治療群は94例中85例(90%)が院内経過に問題なく、早期進展でを要したのは10%であった3。一方、持続虚血、、などではを個別に検討する。

大動脈解離との区別

冠動脈解離
冠動脈がを圧迫 大動脈中膜内にが進展
として発症 突然の、分枝虚血、破裂
SCADは非動脈硬化性が多い 高血圧、遺伝性大動脈疾患などが重要
は用いない を含むType Aと含まないType B

がへ波及してを起こすことはあるが、原発性冠動脈解離とはである。

ではを含むが緊急の対象となり、B型はを含まない。破裂による血心膜・心タンポナーデ、、分枝動脈閉塞によるが重大な合併症である。

まとめ

  • 冠動脈解離はによる圧迫とが本態である。
  • SCADを破裂と同一視しない。
  • のStanford/を冠動脈解離に適用しない。

出典

  1. 1.Spontaneous Coronary Artery Dissection: Current State of the Science: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association(Circulation誌)・2018)SCADが急性冠症候群・心筋梗塞・突然死の重要な原因として認識されるようになり、とくに若年女性および従来の動脈硬化性危険因子をほとんど持たない人に多いこと、女性・妊娠・身体的/精神的ストレスとの関連と線維筋性異形成をはじめとする全身性動脈症の合併が高率であること、再発率が高いこと、動脈硬化性心筋梗塞とは評価も治療も分けて考える必要があることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Spontaneous coronary artery dissection: long-term follow-up of a large series of patients prospectively managed with a conservative therapeutic strategy(JACC. Cardiovascular Interventions・2012)保存的治療を原則とする前向きプロトコルで管理した連続45例(冠動脈造影全体の0.27%)の追跡で、造影による追跡ができた13例中7例(54%)で解離像が自然消失したこと、中央値730日の追跡で心筋梗塞の再発も突然死も無く、無イベント生存率が良好であったことから、SCADの自然経過には完全な自然治癒が含まれることを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Spontaneous coronary artery dissection: revascularization versus conservative therapy(Circulation. Cardiovascular Interventions・2014)初回SCAD 189例(平均44歳、女性92%)の後ろ向き検討で、PCIを行った群の手技失敗率が53%、冠血流が保たれた症例に限っても50%であり13%が緊急バイパス術を要した一方、保存的治療群では94例中85例(90%)が院内経過に問題なく、9例(10%)だけが早期進展で血行再建を要したこと、5年時の標的血管再血行再建率と再発率は両群で差が無かったことを確認した閲覧 2026-08-24