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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

自然冠動脈解離

Spontaneous coronary artery dissection

別名
SCAD
臓器系
循環器
科目
Pathology (Histopathology)Obstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
組織病理 H1-107:冠動脈解離産科学 07:妊娠と心血管疾患
鑑別疾患
大動脈解離
続発疾患
MINOCA
関連疾患
線維筋性異形成内頸動脈解離
治療薬
メトプロロールアセチルサリチル酸
症状
胸痛
検査値
高感度心筋トロポニン
画像所見
血管内イメージング

🧠 全体像:(SCAD)は、動脈硬化とはに冠動脈壁の中膜内に血腫が生じ、を圧迫してを来す疾患である。若年〜中年女性、妊娠・分娩周辺期、(FMD)との強い関連という背景像はで扱った非動脈硬化性血管症の枠組みと地続きにある。もう一つの核心はが通常のと逆向きであることで、を前提とした抗血栓強化・優先の発想をそのまま当てはめると解離を悪化させかねない。

病態

SCADは、内膜のまたは中膜内の脆弱なからの出血によってが形成され、これがとしてを圧迫することでを低下させる。の破綻・という典型的なの機序とは根本的に異なる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intimal tear'>内膜亀裂</span>、または中膜内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasa vasorum'>栄養血管</span>からの出血"] --> B["中膜内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural hematoma (IMH)'>壁内血腫</span>が形成"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='false lumen'>偽腔</span>が進展し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='true lumen'>真腔</span>を圧迫"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary blood flow'>冠血流</span>の低下"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial ischemia'>心筋虚血</span>・心筋梗塞・不整脈・突然死"]

背景には、動脈壁の脆弱性をもたらす(が代表)と、血管に加わる機械的・ホルモン的ストレス(妊娠、身体的・精神的な強い誘因)の組み合わせが想定される1。

疫学・危険因子

臨床像

と同様の胸痛で発症し、上昇を伴う。・・いずれの形でも生じうるほか、や突然死の原因にもなる。造影で有意な動脈硬化性狭窄がなく、若年〜中年女性という背景があれば、MINOCAのからSCADを積極的に疑う。

診断

が確定診断の中心で、など中〜遠位冠動脈に好発する。の位置づけ論文はType 1〜4の分類を示す2。

造影分類 所見 動脈硬化性病変との鑑別
Type 1 複数の造影剤層を伴う貯留(への造影剤流入)。全体の約29〜48% 比較的容易
Type 2 中〜に多い、びまん性で平滑な長い狭窄。最も頻度が高く約52〜67%を占める 中等度
Type 3 限局性狭窄で動脈硬化性病変に類似。頻度は低い(0〜3.9%) 困難(IVUS/OCTでの確認を要することが多い)
Type 4 (に多い) 中等度

⚠️ Type 3は動脈硬化性狭窄との鑑別が難しく、(〈IVUS〉・〈OCT〉)によるの直接確認が診断を支える2。

大動脈解離との鑑別

SCADは冠動脈の解離であり、大動脈中膜内にが進展するとはである。がからへ波及して二次的にを来すことはあるが、これは原発性のSCADとは機序が異なる。で用いる・はSCADには適用しない。

⚠️ 治療:通常の急性心筋梗塞と方針が逆転する

血行動態が安定していれば保存的治療が原則である。 SCADのは多くが自然に吸収され、数週間の経過で解離が治癒する。はワイヤー通過やそのものが解離を伸展させるリスクを伴い、成功率も動脈硬化性病変より低いため、持続する虚血、、など限られた場合に検討する1。

  • ⚠️ は行わない。 血栓ではなくが本態であり、は解離を増悪させ出血性合併症のリスクを高める2。
  • は個別化する。単剤にとどめるか短期のにするかは出血・虚血リスクで判断し、動脈硬化性ACSのような一律の強化・延長の恩恵は確立していない。
  • などのβ遮断薬は再発予防に用いられることが多い。
  • が必要な場合、よりバルーンでの最小限の介入が選好されることがある(FMDにおけるの考え方と通じる)。

予後・⚠️ 再発

⚠️ SCADは再発が多い。 一度SCADと診断された患者は同一血管・別血管を問わず解離を繰り返すリスクがあり、長期の経過観察を要する1。

⚠️ の全身検索を行う。 SCADと診断したら、頭頸部・を含む全身の動脈をまたはMRAで評価し、FMDをはじめとする併存する動脈症を検索する。これはの項で述べた「FMDと診断したら頭部から骨盤までを検索する」原則と対をなす、双方向のスクリーニングである。

まとめ

  • SCADは動脈硬化を伴わない冠動脈壁の中膜内血腫によるで、若年〜中年女性、妊娠・分娩周辺期、と強く関連する。
  • はType 1〜4に分類され、Type 3は動脈硬化性病変との鑑別が難しくIVUS/OCTを要することがある。
  • 血行動態が安定していれば保存的治療が原則で、は解離を伸展させるリスクから限定的な適応にとどまり、は避ける。
  • 再発が多く、診断時にを含む全身の動脈症を頭頸部・まで検索する。

出典

  1. 1.Spontaneous Coronary Artery Dissection: Current State of the Science: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association(Circulation誌)・2018)SCADが動脈硬化や外傷、医原性によらない冠動脈解離であり、若年〜中年女性に多く、妊娠周辺期・身体的/精神的ストレスが誘因となりやすいこと、線維筋性異形成をはじめとする全身性動脈症を高率に合併すること、血行動態が安定していれば保存的治療が推奨され、PCIは解離の伸展リスクから限定的な適応にとどまること、再発率が高いことを確認した閲覧 2026-08-19
  2. 2.European Society of Cardiology, acute cardiovascular care association, SCAD study group: a position paper on spontaneous coronary artery dissection(European Society of Cardiology(European Heart Journal誌)・2018)血管造影分類でType 1〜4に分類されること(Type 1は造影剤の壁内貯留、Type 2はびまん性の長い狭窄、Type 3は限局性狭窄で動脈硬化との鑑別が難しい、Type 4は完全閉塞)、血栓溶解療法がSCADでは解離を増悪させるため避けるべきであることを確認した閲覧 2026-08-19