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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

線維筋性異形成

Fibromuscular dysplasia

別名
FMD
臓器系
循環器腎・泌尿器
科目
Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular SurgeryInternal Medicine
トピック
循環器内科 B-17:腎・内臓血管の閉塞性・動脈瘤性疾患と人工動静脈瘻・血液透析アクセス内科学 L-11:高血圧の診断・合併症・血圧目標内科学 S-25:腎動脈狭窄症
鑑別疾患
結節性多発動脈炎
合併症
脳動脈瘤
続発疾患
頸部動脈解離腎動脈狭窄症
関連疾患
自然冠動脈解離
症状
耳鳴頭痛

🧠 全体像:(FMD)は、動脈壁の非炎症性・非動脈硬化性の異形成によって血管が狭窄・拡張・する特発性の血管疾患である。の項で扱う「高齢・危険因子ありの」の対極に位置する疾患像——中年女性・非炎症性・血管の中〜——として理解するのが最短距離である。もう一つの核心は多血管性にある。FMDはとという2つのにとどまらず全身のを侵しうるため、1か所で見つけたら他部位(特に)を探しにいく姿勢が診療の骨格になる。

病態

FMDは動脈壁を構成する内膜・中膜・外膜のいずれかが異形成を来す疾患で、罹患する層によって所見が変わる。もっとも頻度が高いのはで、線維性の帯状病変と壁のがに生じることで、狭窄部と小動脈瘤様拡張が連続する「」像を作る1。

flowchart TD
    A["動脈壁の非炎症性・非動脈硬化性の異形成"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span>の型"}
    B -->|"多発性(80%超、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial fibroplasia'>中膜線維形成</span>型に多い)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beaded (moniliform, string-of-beads pattern)'>数珠状</span>"]
    B -->|"限局性"| D["単発の短い狭窄(1cm未満)"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular'>管状</span>"| E["1cmを超える長い同心性狭窄"]
    C --> F["中〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pars distalis'>遠位部</span>を好んで侵す"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal artery'>腎動脈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal carotid artery, ICA'>内頸動脈</span>が二大好発部位<br>頭蓋内動脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral artery'>内臓動脈</span>にも波及しうる"]

原因は特発性で確立していないが、・ホルモン要因(女性優位という疫学から)・血管壁への機械的ストレス(血管の伸展・)が複合的に関わると考えられている。動脈硬化のような単一の危険因子モデルでは説明できない点が、病変との本質的な違いである。

粥状硬化性病変との対比

⭐ 若年〜中年女性の非炎症性・中〜病変というFMDの像は、高齢・動脈硬化性危険因子・近位部病変というの像と鋭く対照的である。の項に挙げた2系統の対比表をここでも踏まえておく。

FMD
好発 高齢、男性に多い、喫煙・冠動脈疾患などの危険因子 若〜中年女性
病変の性質 による狭窄 非炎症性・非動脈硬化性の血管壁異形成
好発部位 起始部〜近位部 中〜、
局所の狭窄、他部位の変化を伴う (多発性)、限局性、
罹患血管の範囲 動脈硬化がある全般 多血管性:1か所で見つけたら他部位を検索
治療 薬物治療が基本、でのみ 有意なには

臨床像

FMDは無症候で画像検査中に発見されることも多いが、罹患血管によって症候が異なる。

  • FMD:若年での高血圧発症、などと同様の像を呈する。
  • 頸動脈()FMD:の、頭痛、頸部のほか、解離を来せば・の原因となる。

⭐ FMDと診断されたら、他のへの広がりを必ず検索する。 2019年の国際コンセンサスは、いずれかの部位でFMDと診断された患者に対し頭部から骨盤までの画像検査(造影CTAまたは)を少なくとも一度行うことを推奨しており、女性患者の12.9%にが見つかったと報告している2。

⚠️ 合併症

FMDに侵された動脈壁は脆弱で、狭窄だけでなく解離・動脈瘤を高頻度に合併する。

鑑別

で同様の・多発狭窄像を呈しうる(PAN)との鑑別が重要になる。PANは中型血管のであり、全身性の炎症所見(発熱、体重減少、上昇)、皮膚・神経・腎のを伴う点でFMDと異なる。FMDは非炎症性でが陰性であることが鑑別の手がかりになる。

診断

flowchart TD
    A["若年女性の高血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carotid bruit'>頸部雑音</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulsatile tinnitus'>拍動性耳鳴</span>などからFMDを疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography angiography'>CTA</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast-enhanced MR angiography'>造影MRA</span>で非侵襲的に評価"]
    B --> C{"限局性・多発性の動脈病変があるか"}
    C -->|"いいえ(動脈瘤・解離・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tortuosity'>蛇行</span>のみ)"| D["FMDの確定診断とはしない"]
    C -->|"はい"| E["FMDと診断"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheter angiography'>カテーテル血管造影</span>で解剖学的評価・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>決定"]
    E --> G["頭部から骨盤までの画像検査で多<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular lesion'>血管性病変</span>を検索"]

⚠️ 動脈瘤・解離・だけではFMDの診断は成立しない。 2019年の国際コンセンサスは、限局性または多発性の動脈病変所見を診断の必須条件とする2。非侵襲的には・が第一選択で、確定診断と治療計画にはを用いる。

治療

⚠️ 治療の基本は経皮的であり、は原則として留置しない。 と異なり、FMDの血管壁病変はのみで良好に開大し、は解離や血管破裂といった手技合併症が生じた場合に限って用いる2。臨床的に有意なを伴うFMDが良い適応で、が短いほど後にを減量・中止できる可能性が高い(の項を参照)。無症候・血行動態的に有意でないFMDは、血圧・脳血管危険因子の管理を行いながら経過観察する。

まとめ

  • FMDは動脈壁の非炎症性・非動脈硬化性の異形成で、中年女性・中〜病変・像という点で、高齢・近位部病変が主体のと対照的である。
  • とが二大好発部位で、多血管性のため1か所で見つけたら頭部から骨盤までの画像検査で他部位を検索する。
  • 合併症として動脈解離・動脈瘤・があり、SCAD()との関連が強い。は女性患者の約1割強に見られる。
  • 診断は/MRAで疑い、限局性または多発性の動脈病変所見が必須(動脈瘤・解離・のみでは診断できない)。確定と治療計画はで行う。
  • 治療は経皮的が基本で、は手技合併症への対応に限る。

出典

  1. 1.Fibromuscular Dysplasia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)FMDが非炎症性・非アテローム性の特発性血管疾患で若年〜中年女性に多く腎動脈狭窄の10〜20%を占めること、血管造影分類として多発性(数珠状、中膜線維形成に多い)・管状・限局性の3型があり数珠状像が症例の80%超で見られること、腎動脈と頸動脈がもっとも好発する血管床であることを確認した閲覧 2026-08-19
  2. 2.First International Consensus on the diagnosis and management of fibromuscular dysplasia(Society for Vascular Medicine / European Society of Hypertension(Vascular Medicine誌)・2019)FMDの診断には画像上の限局性または多発性の動脈病変所見が必須で、動脈瘤・解離・蛇行のみでは診断が成立しないこと、FMDと診断した患者には脳から骨盤までの血管を少なくとも一度はCTAまたは造影MRAで評価すべきこと、女性患者の12.9%に頭蓋内動脈瘤を認めたこと、頸動脈FMD患者の約26〜28%に頸部動脈解離を合併すること、腎動脈FMDの血行再建は原則バルーン血管形成術のみで、ステント留置は解離や破裂などの手技合併症への対応に限られることを確認した閲覧 2026-08-19