組織病理学

組織病理学 · H2-006

骨髄線維症(鍍銀染色)

Myelofibrosis (reticulin)

描出疾患
真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症

🧠 全体像:は、鍍銀法で骨髄の細いを黒く可視化し、をMF-0〜MF-3に半定量する。の病期評価に重要だが、線維化の原因自体は示さない。

線維化の評価

等級 概要
MF-0 正常範囲の散在する線維
MF-1 交差の多い疎な
MF-2 びまん性で密な、限局性を伴いうる
MF-3 なとが広範に増加し、を伴いうる

💡 この4段階はどこから来たか。 MF-0〜MF-3は2005年の欧州病理医合議(EUMNET)が既存のスコアリング系を検討したうえで、とを区別する再現性の高い4カテゴリーへ簡素化したもので、分類もこの枠組みを踏襲している1。「MF」という記号は線維量の等級であって、疾患名でも病期名でもない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow biopsy'>骨髄生検</span>"] --> B["HEで細胞密度・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megakaryocyte'>巨核球</span>形態を評価"]
    A --> C["鍍<span class='jp-term jp-term-diagram' title='silver staining'>銀染色</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticulin fiber'>網状線維</span>を評価"]
    C --> D["MF-0〜MF-3"]
    D --> E["必要に応じ三色染色で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>を確認"]
    B --> F["分子所見・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>と統合"]
    E --> F

解釈の注意

  • 増加だけでPMFとは診断しない。第5版も、PV・ET・PMFの区別は末梢血所見・分子所見・骨髄形態の統合によるもので単独のでは診断特異度が足りないとする2。
  • 急性白血病、、、感染症などでも二次性線維化が生じる。
  • 採取部位や標本品質によるを考慮する。
  • 変異はPMFのドライバーとなりうるが、自体はチロシンキナーゼではなく小胞体のである3。

⚠️ 線維の密度は「造血組織との比」で読む。 EUMNETの合議では、線維の量を絶対量ではなく造血組織との関係で評価することが明記された。治療後に・浮腫が進んだ骨髄では、線維量が変わらなくても減ったように見える——治療効果の判定でここを取り違える1。

⚠️ 再現性は等級によって違う。 のグレード判定は病理医の経験に強く依存する。Ph陰性86例で自動判定と専門血液病理医を比べた研究では、全体のCohenのκは0.831だったが、内訳はMF0(κ 0.918)とMF3(κ 0.886)で高く、中間のMF1・MF2では一致度が落ちる4。MF-1とMF-2の境界を単独の根拠に使わない。

💡 等級は一点ではなくで読む。 第5版も、とくに/2阻害薬の治療下では、再現性のある標準化基準でと脾サイズを繰り返し評価する重要性が続くとしている2。

HE形態の詳細は で確認する。

まとめ

  • 鍍は細いを可視化する。
  • MF等級は線維量であり、病因の診断名ではない。
  • 形態、分子異常、と統合する。

出典

  1. 1.European consensus on grading bone marrow fibrosis and assessment of cellularity(Haematologica・2005)欧州の病理医パネル(EUMNET)が多頭顕微鏡で骨髄線維症の生検標本を合議判定し、既存のスコアリング系を批判的に検討したうえで、骨髄線維化のグレードを細網線維と膠原線維を区別する再現性の高い4段階へ簡素化したこと、線維の密度は造血組織との比で評価しなければならないという合意に達したこと、これは治療後の脂肪化・浮腫を伴う骨髄で線維量が減ったように見える誤りを避けるために特に重要であることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms(Leukemia・2022)WHO分類第5版(2022年)が原発性骨髄線維症の線維化期に増える線維芽細胞をポリクローナルな増加と位置づけ二次的な細網線維・膠原線維の線維化をもたらすとしていること、JAK1/2阻害薬治療下では再現性のある標準化基準で骨髄線維化と脾サイズを経時的に評価することの重要性が続くとしていること、PV・ET・PMFの鑑別は末梢血・分子・骨髄形態の統合によるもので単独のパラメータでは十分な診断特異度が得られないことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Somatic CALR mutations in myeloproliferative neoplasms with nonmutated JAK2(New England Journal of Medicine・2013)CALRが小胞体のシャペロンであること、その体細胞変異がJAK2非変異の骨髄増殖性腫瘍の70〜84%に見つかりエクソン9の+1塩基フレームシフトで新規C末端をもつ変異蛋白を生じることを確認した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Development of an automated artificial intelligence-based tool for reticulin fibrosis assessment in bone marrow biopsies(Virchows Archiv・2026)細網線維染色・三色染色による骨髄線維化のグレード判定が病理医の経験に強く依存し解釈のばらつきが問題であること、Ph陰性骨髄増殖性腫瘍86例の全スライド画像で学習した自動判定モデルと専門血液病理医の一致がCohenのκ 0.831であった一方、一致度はMF0(κ 0.918)とMF3(κ 0.886)で高く中間のMF1・MF2では相対的に低い(substantial止まり)こと、複数施設・複数スキャナでの全体一致度が0.816であったことを確認した閲覧 2026-08-24