組織病理学

組織病理学 · H2-021

ニューモシスチス肺炎(HE染色)

Pneumocystis pneumonia (HE) – LUNG

描出疾患
ニューモシスチス肺炎

🧠 全体像:(Pneumocystis pneumonia:PCP)は、細胞性免疫が低下した患者に生じるびまん性肺感染症である。HE染色ではを満たす泡沫状好酸性滲出物が手がかりとなるが、菌体の確認には、免疫染色、などを組み合わせる。

病原体と宿主

ヒトのPCPは真菌のPneumocystis jiroveciiが起こす。Pneumocystis cariniiは現在、主にに感染する別種名であり、ヒト感染の現行名の同義語として用いない12。

💡 改名の経緯と「PCP」が生き残った理由。 宿主種ごとに塩基配列が大きく異なることが解析で示され、ヒトの病原体はFrenkel 1999にちなむPneumocystis jiroveciとして分離された。略語PCPが廃れなかったのは、Pneumocystis carinii pneumoniaではなくPneumocystis pneumoniaと読み替えられるからである1。その後2005年ウィーン規約の適用で綴りはP. jirovecii(末尾がi二つ)が有効名として再確立され、P. cariniiは寄生種としてネオタイプ指定された2。

主な背景 発症リスクにつながる要因
感染 CD4陽性T細胞の減少
・ 疾患と治療による
免疫抑制療法
副腎皮質ステロイド・ 用量、期間、併用薬に応じたリスク上昇
T細胞機能障害など

PCPは感染者では指標疾患であるが、非感染者にも発症する。非例では菌量が少なくても炎症が強く、急速に呼吸不全へ進むことがある3。連続75例のの定量では、例のほうが洗浄液中の菌量は有意に多いのに(p<0.0001)好中球は少なく(p=0.0001)は高く(p=0.008)、酸素化と生存の悪化に相関したのは菌量ではなく好中球数だった(p=0.01)。HE染色で見えているの強さは、菌量ではなく予後のほうに対応する。

HE染色の所見

所見 読み方
泡沫状好酸性肺胞内滲出物 PCPを示唆する中心的所見
の肥厚 間質性炎症や浮腫を反映
II型肺胞上皮の過形成 肺胞傷害への反応
細胞破片 肺胞傷害に伴う非特異的所見
肺胞出血や慢性うっ血なども考える非特異的所見
炭粉貪食マクロファージ 吸入炭素粒子による背景所見で、PCPの診断根拠ではない
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired cell-mediated immunity'>細胞性免疫低下</span>"] --> B["Pneumocystis jiroveciiが肺胞内で増殖"]
    B --> C["泡沫状蛋白性滲出物"]
    C --> D["ガス交換面を障害"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar septum'>肺胞隔壁</span>の炎症・傷害"]
    E --> D
    D --> F["発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry cough'>乾性咳嗽</span>・進行性呼吸困難・低酸素血症"]

診断と対応

HE染色では菌体を確実に同定しにくい。やなどで、、・免疫染色、を用いる。は高感度だが保菌も検出しうるため、症状、画像、酸素化、などと統合する。保菌をできないのは、P. jiroveciiが生涯潜伏するのではなく一過性に定着すると考えられているためである1。

治療の第一選択は・である。関連の中等症から重症例では酸素化基準に基づき副腎皮質ステロイドを併用するが、すべての患者へ一律に投与しない4。菌体形態はPCPの、病原体の全体像はPneumocystis jiroveciiを参照する。

まとめ

  • PCPのHE像は泡沫状好酸性肺胞内滲出物が中心である。
  • 炭粉貪食やは非特異的である。
  • 以外の免疫不全にも発症し、確定には・免疫染色・を組み合わせる。

出典

  1. 1.A new name (Pneumocystis jiroveci) for Pneumocystis from humans(Emerging Infectious Diseases・2002)DNA解析で宿主種ごとにPneumocystisの塩基配列が大きく異なることが示され、ヒトのPCPを起こす種はPneumocystis jiroveci(Frenkel 1999)と改名された。PCPという略語はPneumocystis pneumoniaと読み替えて使い続けられる。また生涯にわたる潜伏ではなく一過性の定着が通例と考えられる閲覧 2026-08-24
  2. 2.Pneumocystis and Trypanosoma cruzi: nomenclature and typifications(Journal of Eukaryotic Microbiology・2006)2005年ウィーン規約の適用によりヒト病原体の学名Pneumocystis jirovecii(i二つ)の有効性が1976年の記載にさかのぼって再確立され、レクトタイプ・エピタイプが指定された。Pneumocystis cariniiはラット寄生種としてネオタイプ指定され、Pneumocystis wakefieldiaeと分離された閲覧 2026-08-24
  3. 3.Pneumocystis carinii pneumonia. Differences in lung parasite number and inflammation in patients with and without AIDS(American Review of Respiratory Disease・1989)連続75例の気管支肺胞洗浄の定量で、AIDS例はAIDS以外の免疫不全例より洗浄液中の菌量が有意に多く(p<0.0001)、好中球は有意に少なく(p=0.0001)、動脈血酸素分圧は高かった(p=0.008)。酸素化と生存の悪化に相関したのは菌量ではなく洗浄液中の好中球数だった(p=0.01)閲覧 2026-08-24
  4. 4.Pneumocystis Pneumonia: Adult and Adolescent Opportunistic Infections Guidelines(National Institutes of Health・2026)HIV関連ニューモシスチス肺炎の治療期間、補助ステロイド、一次予防、抗レトロウイルス療法開始時期閲覧 2026-08-02