組織病理学

組織病理学 · H2-038

胃・十二指腸消化性潰瘍

Ulcer – gastric and duodenal

描出疾患
消化性潰瘍

🧠 全体像:胃・十二指腸消化性潰瘍(gastric and duodenal peptic ulcer)は共通してH. pyloriやを背景に生じるが、の除外と合併症の現れ方が異なる。このノートでは部位別の臨床病理を比較する。

比較

項目
好発 ・側など
H. pylori 関連しうる 強く関連することが多い
重要 重要
潰瘍型胃癌を生検で除外 原発性十二指腸癌はまれだが非典型例は評価
穿通 膵などへ達しうる 後壁病変は膵へ穿通しうる
出血 胃血管を侵食 後壁では侵食が典型
flowchart TD
    A["消化性潰瘍"] --> B["出血"]
    A --> C["穿孔"]
    A --> D["穿通"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cicatricial stenosis'>瘢痕性狭窄</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematemesis'>吐血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melena'>黒色便</span>・循環不全"]
    C --> G["腹膜炎"]
    D --> H["膵など隣接臓器へ進展"]

の大量出血源を枝だけに固定せず、典型的には後壁に接するを考える。消化性潰瘍そのものが癌へ「変化する」と一般化しない1。

💡 「潰瘍が癌化する」ではなく「同じ背景胃炎を共有する」。 日本人1,526例を平均7.8年追跡した前向き研究では、胃癌のは非潰瘍性445例中21例(4.7%)、297例中10例(3.4%)、胃229例中5例(2.2%)に対し、275例からは1例も出なかった1。潰瘍という病変そのものが癌へ移行するならからも出るはずで、そうならない。で癌が問題になるのは、・という背景を共有しているからであり、だからこそでは生検と治癒確認が要り、では要らない。

組織学的なの四層は 胃消化性潰瘍 で確認する。

診断と治療

内視鏡で出血・穿孔リスクと悪性所見を評価し、H. pylori検査、酸分泌抑制、除菌、調整を行う。活動性出血にはを基本とし、失敗例ではまたは手術を検討する2。

💡 「または手術」には順番がある。 ESGE 2021では、に失敗した再出血例に対しまずover-the-scope clipによる2回目の、それも失敗すれば(TAE)、手術はTAEが施行できないか、TAEが失敗した場合という順に位置づけられている。内視鏡のタイミングも、を立て直したうえで24時間以内が推奨で、12時間以内の緊急内視鏡は転帰を改善しないため推奨されない。ではエピネフリン単独では不可で、接触か機械的止血を併用する。止血後は高用量(80 mg後8 mg/時を72時間)を用いる2。

まとめ

  • では胃癌除外が重要である。
  • 十二指腸後壁潰瘍では出血に注意する。
  • 出血、穿孔、穿通、狭窄を重大合併症として評価する。

出典

  1. 1.Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer(New England Journal of Medicine・2001)日本人1,526例を平均7.8年追跡し、胃癌はH. pylori感染者36例(2.9%)にのみ発生し非感染280例では0例。内訳は非潰瘍性ディスペプシア445例中21例(4.7%)、胃潰瘍297例中10例(3.4%)、胃過形成性ポリープ229例中5例(2.2%)で、十二指腸潰瘍275例からは0例だった閲覧 2026-08-24
  2. 2.Endoscopic diagnosis and management of nonvariceal upper gastrointestinal hemorrhage (NVUGIH): European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Guideline - Update 2021(European Society of Gastrointestinal Endoscopy・2021)循環動態の安定化後24時間以内の早期内視鏡を推奨し、12時間以内の緊急内視鏡は転帰を改善しないため推奨しない。活動性出血潰瘍(Forrest Ia/Ib)にはエピネフリン局注単独ではなく接触熱凝固または機械的止血との併用を推奨。再出血例ではover-the-scope clipを検討し、2回目の内視鏡的止血が失敗したら経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を、TAEが施行できないか失敗した場合に手術を行う。内視鏡的止血後は高用量PPI(80 mgボーラス後8 mg/時を72時間)を推奨閲覧 2026-08-24