組織病理学

組織病理学 · H2-039

食道静脈瘤

Esophageal varices

描出疾患
肝硬変
疾患
食道静脈瘤

🧠 全体像:は、門脈圧亢進により下部食道の門脈—体循環吻合が拡張・した病変である。破裂すると大量、、を起こしうる。

側副血行路

flowchart TD
    A["肝硬変などで門脈圧上昇"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left gastric vein'>左胃静脈</span>へ圧が伝わる"]
    B --> C["下部食道<span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal vein'>粘膜下静脈</span>が拡張"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal varices'>食道静脈瘤</span>"]
    D --> E["食道静脈系から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azygos system'>奇静脈系</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior vena cava (SVC)'>上大静脈</span>へ還流"]
    D --> G["破裂"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematemesis'>吐血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melena'>黒色便</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic shock'>出血性ショック</span>"]

食道はからへ入る。下大静脈へ直接還流すると説明しない。

病理とリスク

所見・因子 意味
の拡張静脈 静脈瘤の本体
薄い被覆粘膜 破裂しやすい
大きな静脈瘤・赤色徴候 出血リスク上昇
高い門脈圧・肝機能低下 出血と予後に関与

💡 破裂予測因子は「大きさ・赤色徴候・肝機能」の3つに絞られる。 出血歴のない肝硬変・321例を中央値23か月追跡した多施設前向き研究(NIEC)では、85例(26.5%)が出血し、Cox比例で有意に残ったのは改変Child分類(肝機能)、静脈瘤の大きさ、赤色線条(red wale markings=鞭の跡のような縦走拡張)の3つだけだった。この3で作った予後指標は1年出血率6%から76%まで層別でき、1年で65%を超えて出血する集団を切り出せる1。赤色徴候は「あれば怖い」という印象ではなく、多変量で生き残った独立因子である。

⚠️ HVPG 12 mmHgは「連続量」ではなく「閾値」。 アルコール性肝硬変93例のカテーテル検査では、歴のある49例にHVPG 12 mmHg未満は1例もいなかった(平均20.4±5.1 mmHg、非出血44例は16.0±5.2 mmHg)。内視鏡で静脈瘤が確認された72例も全例が12 mmHg超である。ところが大きい静脈瘤40例と小さい静脈瘤28例で平均HVPGに差はない(19.8±4.8 vs 18.3±5.0 mmHg)2。12 mmHgはこれを下回れば静脈瘤も出血も生じないという下限であって、超えた先で圧が高いほど比例して危ないと読むことはできない。大きさと赤色徴候は内視鏡でしか評価できない。

出血時の対応

循環・気道を安定化し、、予防的抗菌薬、緊急内視鏡的を組み合わせる。止血困難例では一時的な圧迫・や()を検討する。輸血は過剰に門脈圧を上げないよう個別化する3。重症急性921例の(肝硬変の有無で層別化)では、ヘモグロビン7 g/dL未満で輸血する制限戦略が9 g/dL未満で輸血する自由戦略より転帰を有意に改善し、制限戦略群の51%は輸血を受けずに済んだ(自由戦略群では14%)3。なお、この試験は大量の失血性出血(輸血が救命的になりうる)、・症候性・脳卒中・、90日以内の輸血、最近の外傷・手術、再出血リスクの低い例(0かつHb 12 g/dL超)を除外しており、これらの患者には結果をそのまま当てはめない3。

一次・ではや内視鏡的を、肝疾患・静脈瘤リスクに応じて用いる。

まとめ

  • は門脈圧亢進による拡張である。
  • から・へのを理解する。
  • 破裂出血は蘇生、薬物、抗菌薬、を同時に進める救急病態である。

出典

  1. 1.Prediction of the first variceal hemorrhage in patients with cirrhosis of the liver and esophageal varices. A prospective multicenter study(New England Journal of Medicine / North Italian Endoscopic Club・1988)出血歴のない肝硬変・食道静脈瘤321例を中央値23か月(1-38か月)追跡し85例(26.5%)が出血。Cox比例ハザードで出血リスクに有意に関連したのは改変Child分類(血清アルブミン・ビリルビン・プロトロンビン時間・腹水・肝性脳症)、静脈瘤の大きさ、赤色線条(red wale markings)の3因子で、この3変数による予後指標は1年出血率6%から76%まで層別でき、1年で65%を超える高リスク群を同定した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Portal pressure, presence of gastroesophageal varices and variceal bleeding(Hepatology・1985)アルコール性肝硬変93例の肝静脈カテーテル検査で、静脈瘤出血歴のある49例の平均HVPGは20.4±5.1 mmHgと非出血44例の16.0±5.2 mmHgより高く、出血した49例に1例もHVPG 12 mmHg未満はいなかった。内視鏡で静脈瘤が確認された72例も全例HVPG 12 mmHg超。一方、大きい静脈瘤40例と小さい静脈瘤28例の平均HVPGには差がなかった(19.8±4.8 vs 18.3±5.0 mmHg)閲覧 2026-08-24
  3. 3.Transfusion strategies for acute upper gastrointestinal bleeding(New England Journal of Medicine・2013)重症急性上部消化管出血921例を、ヘモグロビン7 g/dL未満で輸血する制限戦略461例と9 g/dL未満で輸血する自由戦略460例に無作為化(肝硬変の有無で層別化)。制限戦略群では51%が輸血を受けずに済み(自由戦略群14%)、制限戦略は自由戦略に比べ転帰を有意に改善した。全文(Wayback 保存版)の Methods で、除外基準に大量の失血性出血(massive exsanguinating bleeding)、急性冠症候群・症候性末梢血管疾患・脳卒中・一過性脳虚血発作・90日以内の輸血、最近の外傷・手術、下部消化管出血、Rockallスコア0かつHb 12 g/dL超が含まれることを確認した(2026-09-24)閲覧 2026-08-24