組織病理学

組織病理学 · H2-043

潰瘍性大腸炎(生検)

Ulcerative colitis BIOPSY

描出疾患
潰瘍性大腸炎

🧠 全体像:(ulcerative colitis:UC)の生検では、した表面、強い症、という活動性所見に加え、陰窩構築異常などの慢性所見を確認する。単一所見で確定せず、複数部位の分布と感染症除外を組み合わせる1。

活動性と慢性変化

分類 主な所見 解釈
活動性 内の好中球、、表面びらん・潰瘍 現在進行中の上皮傷害
慢性 陰窩分岐、短縮、配列不整、形質細胞増加 慢性炎症性腸疾患を支持
重症度 広範な潰瘍、著明な 臨床・内視鏡所見と併せて評価
異形成 核異型、極性消失、成熟異常 活動性再生変化との鑑別が必要

は重要な活動性所見だが、UCに特異的ではない。や薬剤性傷害でも生じるため、陰窩構築異常、直腸からの、臨床経過を合わせて判断する。組織診断のコンセンサスでも「確実な診断のためにいくつの所見が必要か」が正面から論点になっており、単一所見では足りないという立場が明示されている2。生検の読みが成立する前提は、臨床・内視鏡・検査の情報が病理医に伝わっていることと、適切な部位から十分な数を採ってあることである1。

生検診断の流れ

flowchart TD
    A["複数部位からの生検"] --> B["表面潰瘍・好中球性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryptitis'>陰窩炎</span>を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crypt abscess'>陰窩膿瘍</span>の有無"]
    C --> D["陰窩分岐・短縮など慢性変化を評価"]
    D --> E["感染・薬剤・虚血を除外"]
    E --> F["内視鏡分布と統合"]
    F --> G["活動性・慢性度・異形成を報告"]

鑑別の要点

疾患 生検で重視する所見
UC びまん性・の慢性活動性大腸炎
(Crohn disease) 局在性炎症、を認めることがある
が主体で、慢性構築異常に乏しいことが多い
虚血性腸炎 ・脱落、のなど
薬剤性腸炎 薬剤に応じた多様な傷害像

⚠️ 生検だけでUCとを確定できないことがある。 これは読み手の未熟さではなく、疾患側に決着のつかない領域があるためで、そこには名前が付いている。大腸まで見てもUCともとも決められない症例は、もともとの10〜15%を占めるとされ、この状態を病理医は indeterminate colitis と呼ぶ。現在この語は内視鏡・生検の段階でも使われるようになり、報告頻度が施設間でばらつく一因になっている。血清学的マーカーは感度が低く鑑別の助けにならず、大半の症例は経過観察のうちにどちらかへ確定していく3。

💡 用語は2つあり、使う場面が違う。 は、病歴・内視鏡・・画像を踏まえてもなお決められない大腸限局のを「-unclassified(IBDU)」という臨床診断名とし、を検討してもなお決められない場合に病理医が用いる indeterminate colitis とは別語として区別している4。IBDUと分類された37例を中央値79か月追跡した研究では、24.3%がUCへ、21.6%がへ再分類された。つまり「分類不能」は暫定的な札であり、時間が答えを出すことが多い5。

生検は粘膜を評価する検査であり、腸壁全層の炎症や瘻孔を直接評価できない。UCの切除病理と治療上の注意は (切除) に集約する。

まとめ

  • 潰瘍表面、強い症、は活動性を示す。
  • 陰窩構築異常などの慢性所見を同時に評価する。
  • 単一生検・単一所見では確定せず、分布、感染症除外、臨床経過を統合する。

出典

  1. 1.Histopathology of IBD Colitis. A practical approach from the pathologists of the Italian Group for the study of the gastrointestinal tract (GIPAD)(Pathologica・2021)炎症性腸疾患大腸炎の組織診断の実務指針。クローン病と潰瘍性大腸炎を適切に診断し区別できるのは、臨床・内視鏡・検査の情報を病理医へ十分に伝え、適切な数と部位の生検を行ったうえで、陰窩構築・炎症の分布・(あれば)肉芽腫という形態指標を読むという方法論が成立している場合であるとする。発症初期ほど非炎症性腸疾患性の腸炎との区別が問題になる閲覧 2026-08-24
  2. 2.European consensus on the histopathology of inflammatory bowel disease(European Crohn's and Colitis Organisation / European Society of Pathology・2013)炎症性腸疾患の組織診断の標準を定めたECCO・欧州病理学会の合同コンセンサス。内視鏡生検と切除標本で使える所見をそれぞれ分けて示し、潰瘍性大腸炎とクローン病、および非炎症性腸疾患性の腸炎との鑑別、確実な診断に必要な所見の数、異形成の検索における組織診の役割、活動性評価に使える所見を扱う。粘膜治癒をもたらす新しい治療が診断所見を変えうる点にも注意を促し、複数の領域で根拠の空白が残ると明記している閲覧 2026-08-24
  3. 3.Indeterminate colitis(Journal of Clinical Pathology・2004)indeterminate colitisは元来、大腸切除標本でも潰瘍性大腸炎とクローン病を区別しがたい炎症性腸疾患の10〜15%を指す語だった。現在は大腸内視鏡・大腸生検・切除標本のいずれでも確定診断に至らない場合に広く使われるようになり、報告される頻度が施設間でばらつく一因になっている。臨床的には大半の症例が経過観察のうちに潰瘍性大腸炎かクローン病の確定診断へ移行する。血清学的マーカーは感度が低く鑑別の役に立たず、indeterminate colitisの定義は切除標本のみに基づく純粋な組織学的定義ではなく臨床病理学的な定義とみるべきである閲覧 2026-08-24
  4. 4.Third European Evidence-based Consensus on Diagnosis and Management of Ulcerative Colitis. Part 1: Definitions, Diagnosis, Extra-intestinal Manifestations, Pregnancy, Cancer Surveillance, Surgery, and Ileo-anal Pouch Disorders(European Crohn's and Colitis Organisation (ECCO)・2017)病歴・内視鏡所見・多部位生検の組織所見・画像を踏まえても潰瘍性大腸炎ともクローン病とも判別できない大腸限局の炎症性腸疾患を「IBD-unclassified(IBDU)」と呼ぶ臨床診断名とし、切除標本を検討してもなお判別できない場合に病理医が用いる「indeterminate colitis(IC)」とは別の用語として区別する閲覧 2026-08-24
  5. 5.Clinical features of inflammatory bowel disease unclassified: a case-control study(BMC Gastroenterology・2024)IBDU患者37例の中央値79か月の追跡で、24.3%が潰瘍性大腸炎へ、21.6%がクローン病へ再分類され、UCへの再分類は発症から約50か月以内、CDへの再分類は約90か月以内に起こる傾向があった閲覧 2026-08-24