組織病理学

組織病理学 · H2-044

クローン大腸炎

Crohn colitis

描出疾患
クローン病

🧠 全体像:(Crohn disease)は口腔から肛門までの消化管を侵しうる慢性性炎症性疾患で、と大腸が好発部位である。性の、深い状潰瘍、と線維化を、狭窄・瘻孔・膿瘍へ至る一連の病態として理解する。

分布と形態

所見 での意味
病変部と正常部が明瞭にする性分布
性・状潰瘍 腸管長軸に沿う深い潰瘍で、粘膜を形成しうる
腸壁全層へ炎症が及び、壁肥厚や癒着の基盤となる
やからなりうる。診断を支持するが、認めなくても除外できない1
線維化・瘢痕 と閉塞を来す
の壁外進展 瘻孔、穿通、へ進展する

💡 肉芽腫は「あれば強い」が、半分は出ない。 とを同時に行った小児282例の検討で、肉芽腫が同定されたのは全体の48%にすぎない。未治療のまま検査された群では61%だったのに対し、すでに治療が入っている群では24.5%まで落ちた。つまり「肉芽腫が無い」ことは、疾患が無いことよりも採取部位が足りない・すでに治療が効いていることを意味しうる。肉芽腫の検出率は年齢によらず、盲腸までのだけでは診断に届かなかった患者が相当数含まれていた1。

若年成人で発症しやすいが、年齢や性別だけで診断しない。生検では粘膜の局在性慢性炎症や肉芽腫を評価できる一方、は切除材料や画像所見との統合が必要である。組織診断のコンセンサスも、で使える所見とで使える所見を別立てで整理している2。

合併症への進展

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discontinuous (skip lesions)'>非連続</span>性の慢性炎症"] --> B["深い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fissure'>裂溝</span>状潰瘍"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural inflammation'>全層性炎症</span>"]
    C --> D["線維化・瘢痕"]
    D --> E["狭窄・腸閉塞"]
    C --> F["穿通"]
    F --> G["瘻孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intra-abdominal abscess'>腹腔内膿瘍</span>"]

臨床像

下痢、差し込むような腹痛、発熱、体重減少が反復し、無症状期を挟んでする。は起こりうるが、ほど血性下痢が前景に立つとは限らない。「約半数に」という説明は不適切であり、があればを含む別の出血源も評価する。現行の総説が挙げる典型像は、腹痛・・体重減少・を呈する若年患者であって、は典型像に入っていない3。

ぶどう膜炎、、などの腸管外病変を伴うことがある。肛門周囲病変、瘻孔、膿瘍、狭窄はに直結する。

潰瘍性大腸炎との比較

項目
部位 消化管全域、が好発 結腸に限局
分布 性 直腸から
深さ 粘膜主体
潰瘍 深い状・性 ・浅いことが多い
肉芽腫 を認めることがある 典型的には認めない
狭窄・瘻孔 重要な合併症 通常は目立たない

診断と治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic diarrhea'>慢性下痢</span>・腹痛・体重減少"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool examination'>便検査</span>で感染症を除外"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal ileum'>回腸末端</span>を含む内視鏡・生検"]
    C --> D["小腸画像で範囲・狭窄・瘻孔を評価"]
    D --> E["炎症性か線維性かを判断"]
    E --> F["薬物療法を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disease activity (course)'>病勢</span>とリスクで選択"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abscess drainage'>膿瘍ドレナージ</span>・狭窄や瘻孔の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgery'>外科治療</span>"]

軽症から重症まで病変部位とリスクに応じ、ステロイドは寛解導入に限定し、免疫調節薬、生物学的製剤、などでステロイド非依存の寛解を目指す。高リスク例では従来治療の失敗を待たずに生物学的製剤を早期導入する方針へ転換しており、経口はの寛解導入・維持には用いない43。膿瘍はを優先し、、難治性瘻孔、穿孔などでは内視鏡・を検討する。手術は合併症を治療するが、そのものを治癒させるとは限らない。

⚠️ 切除しても病変はのに戻ってくる。 を受けた89例の前向き追跡では、術後1年以内に新しいへ内視鏡的再発が生じたのが73%、3年で85%に達した。一方で症状が出たのは1年で20%、3年で34%にとどまる。つまり内視鏡で見える再発が症状に数年先行する。手術時に肉眼・組織とも正常だった腸管でも術後6か月の回腸鏡で回腸炎が生じており、再発は「切り残し」ではなく新たに起こる5。

まとめ

出典

  1. 1.Frequency and clinical correlations of granulomas in children with Crohn disease(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2008)小児クローン病376例のうち上部消化管内視鏡と大腸内視鏡を同時に受けた282例の検討で、肉芽腫が同定されたのは全体の48%(136/282)にとどまり、未治療例では61%(112/184)、既治療例では24.5%(24/98)と有意に低かった(P<0.0005)。肉芽腫の頻度は年齢の影響を受けず、盲腸までの大腸内視鏡だけでは診断に不十分だった患者が相当数含まれていた。診断時の肉芽腫の存在は肛門周囲病変・胃炎・低アルブミン血症・抗Saccharomyces cerevisiae抗体・インフリキシマブ治療と関連した閲覧 2026-08-24
  2. 2.European consensus on the histopathology of inflammatory bowel disease(European Crohn's and Colitis Organisation / European Society of Pathology・2013)炎症性腸疾患の組織診断の標準を定めたECCO・欧州病理学会の合同コンセンサス。内視鏡生検で使える所見と切除標本で使える所見を別々に整理したうえで、潰瘍性大腸炎とクローン病、および非炎症性腸疾患性の腸炎との鑑別、確実な診断に必要な所見の数、異形成の検索における組織診の役割、活動性評価に使える所見を扱う閲覧 2026-08-24
  3. 3.Crohn's disease(The Lancet・2017)成人クローン病の総説。典型的な臨床像は、腹痛・慢性下痢・体重減少・易疲労感を呈する若年患者であるとし、消化管出血や黒色便を典型像として挙げていない。病変範囲と合併症の予後因子の評価が治療方針を決め、現在の戦略は深く持続する寛解を目標に、高リスク例では早期から免疫抑制薬または生物学的製剤の併用を導入し、炎症を頻回かつ厳密に評価して治療を調整する目標達成型治療である閲覧 2026-08-24
  4. 4.ACG Clinical Guideline: Management of Crohn's Disease in Adults(American College of Gastroenterology・2025)中等症〜重症の生物学的製剤導入をチオプリン等の従来治療の失敗を待たない早期導入へ転換したこと、経口メサラジンをクローン病の寛解導入・維持に用いないこと、スルファサラジンは軽症結腸型に限定することを確認した。閲覧 2026-08-24
  5. 5.Predictability of the postoperative course of Crohn's disease(Gastroenterology・1990)クローン病に対する回腸切除を受けた89例の前向きコホートで、術後1年以内に新しい終末回腸に内視鏡的再発病変を認めたのは73%だったが、症状があったのは20%にすぎなかった。術後3年では内視鏡的再発85%、症候性再発34%へ増加した。その後の経過を最もよく予測したのは術後早期の内視鏡所見の重症度であった。また「根治的」回腸切除を受けた別の22例では、手術時に新終末回腸となる腸管が肉眼的に正常で19例は生検も完全に正常だったにもかかわらず、術後6か月の回腸鏡で21例に長さ中央値15cmの回腸炎が生じていた閲覧 2026-08-24