組織病理学

組織病理学 · H2-045

潰瘍性大腸炎(肉眼像)

SPECIMEN - Ulcerative colitis

描出疾患
潰瘍性大腸炎

🧠 全体像:(ulcerative colitis:UC)の切除大腸では、直腸から連続する粘膜病変、浅い潰瘍、出血・粘液を伴う炎症粘膜、潰瘍間に突出するを読み取る。肉眼所見だけで異形成や活動性の程度を確定せず、へつなげる。

肉眼的特徴

所見 成り立ち 注意点
浅い 粘膜主体の炎症と上皮破壊 重症例では深部へ及びうる
潰瘍間に残った再生・浮腫性粘膜の隆起 腫瘍性ポリープとは異なる
出血・粘液 活動性を反映 血性・下痢の基盤となる
直腸から近位へ広がる 性ならなども検討
壁の状態 通常は粘膜病変が中心 著明な壁肥厚・瘻孔は典型的でない

肉眼像から組織診断へ

flowchart TD
    A["連続する発赤・脆弱粘膜"] --> B["浅い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wide-based (broad-based)'>広基性</span>潰瘍"]
    B --> C["潰瘍間粘膜の残存・再生"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pseudopolyps'>偽ポリープ</span>"]
    A --> E["代表部位を系統的に組織評価"]
    E --> F["陰窩構築異常・活動性炎症"]
    F --> G["異形成の検索"]

は炎症後の再生性隆起であり、それ自体を腺腫や癌と同一視しない。一方、長期罹患例では異形成を伴う可能性があるため、平坦部を含む系統的な組織評価が必要である。

💡 は「炎症が強かった証拠」であって、癌リスクの独立した指標ではない。 監視内視鏡を受けた1582例ので、は29.2%にみられ、より強い炎症(1.32)と広い(1.92)に結びついていた。しかし中央値4.8年の追跡で、進行の発生はの有無で差がなく(調整1.17、95%信頼区間0.59〜2.31)、独立した危険因子ではなかった。欧州のガイドラインはがあれば監視間隔を短縮するよう提案してきたが、この研究はの存在だけを理由に間隔を詰めるべきではないとしている1。が目立つ標本で警戒すべきなのは、ポリープそのものよりその背後にある炎症負荷である2。

⚠️ 「平坦部からのランダム生検」の位置づけは揺れている。 高内視鏡を用いた(VIRTUOSO)では、バーチャルクロモエンドスコピーと高白色光で腫瘍検出率に差がなく(14.9%対24.2%、p=0.14)、さらに両群あわせて6751個の非標的4分割生検から検出された上皮内腫瘍はわずか1個だった。腫瘍のほぼすべては、見えた病変への標的生検・切除で拾われている3。肉眼で異常が無い部位を闇雲に数多く採る戦略のは、高内視鏡の時代には再検討の対象になっている。ただし目視に頼る以上、丁寧な観察と的確な標的生検が前提である点は変わらない。

臨床との対応

対応する臨床像
活動性・潰瘍 血性下痢、、
、下腹部痛
広範な炎症 貧血、、全身炎症
重症炎症 、出血、穿孔の危険

組織像、診断、治療の詳細は (切除) に集約する。

まとめ

  • UCの肉眼像は、、浅い潰瘍、、出血・粘液で整理する。
  • は再生性病変であり、腫瘍性ポリープではない。
  • 肉眼像だけで異形成を除外せず、系統的な組織評価を行う。

出典

  1. 1.No Association Between Pseudopolyps and Colorectal Neoplasia in Patients With Inflammatory Bowel Diseases(Gastroenterology・2019)ニューヨークとオランダの7施設で監視大腸内視鏡を受けた炎症性腸疾患1582例の後ろ向きコホート。炎症後ポリープ(偽ポリープ)は462例(29.2%)にみられ、より強い炎症(調整オッズ比1.32、95%信頼区間1.13〜1.55)と広い罹患範囲(調整オッズ比1.92、95%信頼区間1.34〜2.74)と関連したが、原発性硬化性胆管炎の合併はむしろ少なかった(調整オッズ比0.38)。中央値4.8年の追跡で、進行大腸腫瘍の発生までの時間は偽ポリープの有無で有意差がなく、偽ポリープは進行大腸腫瘍の独立した危険因子ではなかった(調整ハザード比1.17、95%信頼区間0.59〜2.31)。大腸全摘率のみが偽ポリープ群で高かった。したがって偽ポリープがあるという理由だけで監視間隔を短縮すべきではない閲覧 2026-08-24
  2. 2.Colorectal Cancer in Inflammatory Bowel Disease: Mechanisms and Management(Gastroenterology・2022)炎症性腸疾患関連大腸癌の総説。腫瘍化を駆動するのは慢性炎症そのもので、field cancerizationにより大腸の複数箇所に異形成前駆病変が生じうる。累積炎症負荷(cumulative inflammatory burden)という概念が、経時的な組織学的炎症の蓄積を大腸癌の重要な危険因子として位置づける。異形成は大腸癌発生の最も重要な危険因子であり、内視鏡による前癌病変の検出と切除が進歩したことで外科的切除を先送りまたは回避できるようになった閲覧 2026-08-24
  3. 3.Multicentre randomised controlled trial on virtual chromoendoscopy in the detection of neoplasia during colitis surveillance high-definition colonoscopy (the VIRTUOSO trial)(Gut・2021)長期経過の潰瘍性大腸炎・クローン大腸炎188例を、高解像度バーチャルクロモエンドスコピー(94例)と高解像度白色光(94例)に無作為に割り付けた英国2施設の無作為化比較試験。腫瘍検出率は白色光24.2%対バーチャルクロモ14.9%で有意差がなかった(p=0.14)。検出された上皮内腫瘍はすべて低異型度異形成のみだった。両群あわせて6751個の非標的(4分割ランダム)生検から検出された上皮内腫瘍はわずか1個で、腫瘍のほぼすべてが標的生検または切除で検出された。非標的の4分割生検による追加的利得はごくわずかであると結論した閲覧 2026-08-24