組織病理学

組織病理学 · H2-065B

腎細胞癌(HE染色)

Renal carcinoma (HE)

描出疾患
腎細胞癌

🧠 全体像:淡明な細胞質をもつを見たときは、(clear cell renal cell carcinoma: ccRCC)を第一に考えるが、「」だけでは確定できない。胞巣状・増殖、繊細な血管網、、分子異常、画像所見を統合する。第5版(2022年)の分類は各型に形態所見と・分子検査を組み合わせた「必須・望ましい」を置き、SMARCB1欠失、TFEB変化、ALK再構成、ELOC変異といった分子で定義される型を導入している1。

標本で確認する順序

観察点 ccRCCを支持する所見 注意点
増殖構築 胞巣状、、、未熟な管腔 構築は腫瘍内で混在しうる
細胞質 淡明または・好酸性 淡明化は脂質・グリコーゲンが抜けた結果
間質 繊細に分枝する豊富な毛細血管、間質は乏しい は––経路と対応
境界 被膜様の境界を示すことがある 被膜があっても悪性であり、外への浸潤を検索する
進展 腎洞、、への侵襲 腫瘍血栓は下大静脈・右心房へ連続しうる
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clear cell (as in clear cell carcinoma)'>淡明細胞</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kidney tumors'>腎腫瘍</span>"] --> B["胞巣状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acinar'>腺房状</span>構築を確認"]
    B --> C["繊細な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary network'>毛細血管網</span>を確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunohistochemistry (IHC)'>免疫組織化学</span>・分子所見と統合"]
    D --> E["ccRCCの診断"]
    E --> F["悪性度・壊死・肉腫様変化を評価"]
    F --> G["腎洞・脂肪・静脈・断端を評価して病期化"]

鑑別と病理報告

鑑別 区別に役立つ方向性
腎細胞腫瘍 ・構築、核の配列、。CK7とCA9がそろって強陽性、CD10・AMACR・TFE3は陰性で、変異・3p25欠失・7/17トリソミーをいずれも欠く2
明瞭な細胞境界、核周囲明庭、異なる
の 系マーカー、脂肪・血管成分
の腎内進展 解剖学的位置と副腎皮質系マーカー

病理報告では、組織型、/ISUP悪性度、腫瘍径、壊死、肉腫様・横紋筋様変化、腎洞・・、、リンパ節を記載する。/ISUPはとに適用し、には適用しない3。は3p25のであり、ccRCCでは3p欠失とが中心である。「VHL1」や特定のだけによる説明は標準的ではない。では3p欠失はほぼ全例に認められ、最も多いは3p欠失と5q増加が同時に起こる形(患者の36%、多くはchromothripsisによる)で、しかもこれは小児期〜思春期に生じる開始事象であることが多い4。

危険因子、病、診断・治療を含む正準ノートは (HE染色) を参照する。

まとめ

  • 淡明な細胞質、胞巣状増殖、繊細な血管網の組合せがccRCCを示唆する。
  • ・下大静脈への腫瘍血栓は重要な進展様式である。
  • 診断名だけで終えず、悪性度、壊死、静脈・脂肪侵襲、を報告する。

出典

  1. 1.The 2022 World Health Organization Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part A: Renal, Penile, and Testicular Tumours(European Urology・2022)WHO泌尿器・男性生殖器腫瘍分類第5版(2022年)は部位・カテゴリー・ファミリー・型の階層構造をとり、各型に「必須および望ましい診断基準」として形態所見と免疫組織化学・分子検査を組み合わせて示す。腎腫瘍では分子で定義される新しい型(SMARCB1欠失髄様腎細胞癌、TFEB変化腎細胞癌、ALK再構成腎細胞癌、ELOC変異腎細胞癌)が導入され、形態から分子解析への診断の重心移動が起きているとする。好酸性充実嚢胞性腎細胞癌は形態で定義された新規の型。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Clear-cell papillary renal cell carcinoma: molecular and immunohistochemical analysis with emphasis on the von Hippel-Lindau gene and hypoxia-inducible factor pathway-related proteins(Modern Pathology・2011)淡明細胞乳頭状腎細胞腫瘍9例では、VHL遺伝子変異も3p25欠失も7・17番染色体トリソミーもいずれも認めず、VHL mRNAはむしろ正常腎や淡明細胞型腎細胞癌より高発現していた。免疫染色はCK7・HIF-1α・GLUT-1・CA9がそろって強陽性、TFE3・CD10・AMACRは陰性で、VHL非依存的な低酸素誘導因子経路の活性化が示唆される。閲覧 2026-08-24
  3. 3.The International Society of Urological Pathology (ISUP) grading system for renal cell carcinoma and other prognostic parameters(The American Journal of Surgical Pathology・2013)WHO/ISUP核異型度分類の判定法と、淡明細胞型・乳頭状腎細胞癌への適用、嫌色素性腎細胞癌には適用しないことを確認した。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Timing the Landmark Events in the Evolution of Clear Cell Renal Cell Cancer: TRACERx Renal(Cell・2018)淡明細胞型腎細胞癌33例・95生検の全ゲノム解析で、3番染色体短腕(3p)の欠失はほぼ普遍的に認められた。最も多い構造異常は3p欠失と5q増加が同時に生じるもので患者の36%にみられ、多くはchromothripsisによる。この事象は小児期〜思春期に起こり、腫瘍の最新共通祖先が現れる数年〜数十年前の開始事象であることが多い。閲覧 2026-08-24