組織病理学

組織病理学 · H2-067A

腎細胞癌(淡明細胞型)

Carcinoma renis

描出疾患
腎細胞癌

🧠 全体像:(renal cell carcinoma:RCC)は由来の悪性腫瘍である。最多の(clear cell renal cell carcinoma:ccRCC)では、VHL不活化によりが蓄積し、血管豊富な腫瘍を形成する。

発生機序

flowchart TD
    A["3pの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Hippel-Lindau'>VHL</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor suppressor genes'>腫瘍抑制遺伝子</span>が不活化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxia-inducible factor (HIF)'>低酸素誘導因子</span>が分解されない"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor'>VEGF</span>などの発現増加"]
    C --> D["血管豊富な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clear cell type'>淡明細胞型</span>RCC"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal vein'>腎静脈</span>・下大静脈へ進展"]
    E --> F["肺などへ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematogenous metastasis'>血行性転移</span>"]

でも両アレルのVHL不活化が重要であり、特定のを一律の原因とはしない。では3p欠失はほぼ全例に認められ、最も多いは3p欠失と5q増加が同時に起こる形(患者の36%、多くはchromothripsisによる)で、しかもそれは小児期〜思春期に生じ、腫瘍が現れる数年〜数十年前の開始事象であることが多い1。遺伝性(von Hippel-Lindau disease)では両側性・多発性ccRCC、網膜・中枢神経系血管芽腫などを生じうる。

病理

観察点 要点
肉眼 黄色調で血管に富み、出血・壊死を伴いうる
細胞質 脂質・グリコーゲンに富む、または細胞質
構築 胞巣状・で、繊細なを伴う
進展 から下大静脈、まれに右心房まで腫瘍栓を形成
転移 肺、骨、リンパ節、肝など。転移性10,105例ではが92%を占め、その転移部位は肺70%、リンパ節45%、骨32%、肝18%、副腎10%2

RCCは60〜70歳代を中心とする中高年に多く、男性にやや多い。危険因子として最も確立しているのは高血圧・肥満・喫煙で、・も関連する3。長期透析に伴う性腎疾患もリスクで、831,804例の国際コホートではのが3.60(95%CI 3.45–3.76)と全悪性腫瘍の1.18を大きく上回り、は35歳未満で最も高かった4。「透析関連」ではなく、形成と区別する。

診断と治療

多相造影CTまたはで、腫瘍栓、転移を評価する。限局例ではが可能なら腎部分切除、必要に応じ根治的腎摘除を行う。進行例では組織型とリスクに応じ、と阻害薬などを組み合わせる5。

のHE像と病理報告の基本は(HE染色)を参照する。

まとめ

  • ccRCCではVHL--経路が重要である。
  • と繊細な血管網、黄色調腫瘤を対応させる。
  • ・下大静脈腫瘍栓と肺転移を評価する。

出典

  1. 1.Timing the Landmark Events in the Evolution of Clear Cell Renal Cell Cancer: TRACERx Renal(Cell・2018)淡明細胞型腎細胞癌33例・95生検の全ゲノム解析で、3番染色体短腕(3p)の欠失はほぼ普遍的に認められた。最も多い構造異常は3p欠失と5q増加が同時に生じるもので患者の36%にみられ、多くはchromothripsisによる。この事象は小児期〜思春期に起こり、腫瘍の最新共通祖先が現れる数年〜数十年前の開始事象であることが多い。遺伝性の淡明細胞型腎細胞癌も同様のゲノム変化で駆動される。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Evaluation of Clear Cell, Papillary, and Chromophobe Renal Cell Carcinoma Metastasis Sites and Association With Survival(JAMA Network Open・2021)国際転移性腎細胞癌データベース(IMDC)の10,105例では92%が淡明細胞型、7%が乳頭状、2%が嫌色素性だった。淡明細胞型の転移部位は肺70%、リンパ節45%、骨32%、肝18%、副腎10%の順で、肺・副腎・脳・膵は淡明細胞型に、リンパ節転移は乳頭状に、肝転移は嫌色素性に多かった。淡明細胞型の全生存期間中央値は転移部位により胸膜16か月から膵50か月まで幅がある。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Epidemiology of Renal Cell Carcinoma: 2022 Update(European Urology・2022)腎癌の罹患率・死亡率は地域・性・年齢で大きく異なり、罹患率は上昇を続ける一方で死亡率は横ばいになっている。危険因子のうち最も確立しているのは高血圧・肥満・喫煙の3つで、慢性腎臓病/末期腎不全との関連も記述されている。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Cancer in patients on dialysis for end-stage renal disease: an international collaborative study(The Lancet・1999)1980〜94年に米国・欧州・豪州・ニュージーランドで透析を受けた831,804例(延べ2,045,035人年)の追跡で、悪性腫瘍全体の標準化罹患比は1.18(95%CI 1.17–1.20)だったのに対し、腎癌は3.60(3.45–3.76)、膀胱癌は1.50(1.42–1.57)と高かった。相対リスクは35歳未満で3.68と最も高く、加齢とともに低下する。閲覧 2026-08-24
  5. 5.European Association of Urology Guidelines on Renal Cell Carcinoma: The 2022 Update(European Urology・2022)腎細胞癌の診断、限局癌の腎機能温存手術、局所療法、転移癌の免疫チェックポイント阻害薬併用を含む現行管理を確認した。閲覧 2026-08-24