組織病理学

組織病理学 · H2-066B

慢性腎盂腎炎

Chronic pyelonephritis

描出疾患
急性腎盂腎炎・腎膿瘍

🧠 全体像:は、反復性または持続性の尿路感染に尿流障害やが関与し、の変形を伴う不均一な尿細管間質性瘢痕を形成した状態である。瘢痕だけから現在も細菌感染が活動性とは断定しない。

二つの主要経路

型 背景 瘢痕の特徴
逆流関連 先天性または機能性のに、が重なる 先端から皮質へ伸びる極性の瘢痕。として理解する
閉塞関連 結石、、腫瘍、などによると感染 閉塞部位・程度に応じた不均一な瘢痕と水腎症

💡 逆流があるとしやすいが、逆流だけで瘢痕が決まるわけではない。 初回尿路感染の小児を集めた33研究のレビューでは、急性期シンチの57%にの変化があり、5か月以降の追跡でが残ったのは15%だった。VURがあると腎盂腎炎のは1.5、瘢痕のは2.6、grade III以上ではより低いgradeに比べ瘢痕のが2.1だった1。

⚠️ 抗菌薬予防は再発を減らしても瘢痕は減らさなかった。 VURをもつ小児607例のRIVUR無作為化試験では、ST合剤の予防投与で尿路感染の再発はほぼ半減した(0.50)が、の発生は予防群11.9%・プラセボ群10.2%で差がなく、再発時の大腸菌のST合剤耐性率は予防群63%・プラセボ群19%だった2。小児期のVUR治療でによるが減ったという証拠も、登録データの解析では得られていない3。「逆流を見つけて予防投与すれば瘢痕は防げる」と単純化しない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vesicoureteral reflux (VUR)'>膀胱尿管逆流</span>"] --> C["反復性上行性尿路感染"]
    B["尿路閉塞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary stasis'>尿流停滞</span>"] --> C
    C --> D["尿細管・間質傷害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular atrophy'>尿細管萎縮</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial fibrosis'>間質線維化</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal calyx'>腎杯</span>の鈍化・変形を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical scarring'>皮質瘢痕</span>"]
    F --> G["高血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease, CKD'>慢性腎臓病</span>"]

肉眼・組織像

所見 意味
不均一な皮質陥凹瘢痕 に対応する局所的な尿細管間質傷害
の鈍化・変形 単なる血管性萎縮との鑑別に重要
腎盂壁の 長期の炎症・閉塞を反映
被膜の癒着 表層まで及ぶ慢性瘢痕
不可逆的な実質喪失
リンパ球・ 慢性炎症だが、活動性細菌感染の証明そのものではない
拡張・萎縮尿細管内の好酸性円柱
二次性 喪失に続く・

診断と治療

、発熱、側腹部痛、の既往を確認し、尿検査・尿培養でを評価する。ただし感染の既往が無いことはを否定しない。末期で透析・移植に至った42例では、尿路感染が記録されていたのは男性18例中4例、女性24例中14例にとどまり、多くは高度の腎機能低下・高血圧・蛋白尿で初めて見つかっている(42例中35例が高血圧で、うち22例は受診時まで未指摘)4。超音波やで結石、水腎症、閉塞、腎の左右差と瘢痕を調べ、小児では病歴と所見に応じてVUR評価を行う。

尿細管間質障害によりが低下すると、多尿・夜間尿が先行することがある。にはと重症度に応じた抗菌薬を用い、同時に閉塞を解除する。では結石、、逆流などの原因を是正し、血圧、蛋白尿、を継続管理する。高度な両側性瘢痕では(chronic kidney disease: )から腎不全へ進行しうる。

鑑別上の補正

のキンメルスティール・結節(Kimmelstiel–Wilson nodule)はであり、や一般的なの所見ではない。による虚血腎で糖尿病性性病変が相対的に乏しく見えることがあっても、は腎機能低下と心血管リスクをもたらす病態であり、「糖尿病腎を保護する」と解釈しない。

関連病理は 急性・ を参照する。

まとめ

  • 変形に対応する不均一なが、の形態的な鍵である。
  • 甲状腺様変化は高度な慢性尿細管間質傷害を示す。
  • 、閉塞・逆流、を別々に評価して治療へつなげる。

出典

  1. 1.Risk of renal scarring in children with a first urinary tract infection: a systematic review(Pediatrics・2010)初回尿路感染の小児(0〜18歳)を対象とした33研究のシステマティックレビューで、急性期(15日以内)のDMSAシンチでは57%(95%CI 50–64)に急性腎盂腎炎に一致する変化があり、5か月以降の追跡DMSAでは15%(11–18)に腎瘢痕が残った。膀胱尿管逆流があると腎盂腎炎の相対リスクは1.5(1.1–1.9)、腎瘢痕の相対リスクは2.6(1.7–3.9)で、grade III以上ではより低いgradeに比べ瘢痕の相対リスクが2.1(1.4–3.2)だった。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Antimicrobial prophylaxis for children with vesicoureteral reflux(The New England Journal of Medicine・2014)初回または2回目の有熱性・症候性尿路感染後に膀胱尿管逆流と診断された小児607例の2年間の無作為化プラセボ対照試験(RIVUR)で、ST合剤の予防投与は尿路感染の再発を有意に減らした(39/302対72/305、相対リスク0.55、ハザード比0.50)が、腎瘢痕の発生率は予防群11.9%・プラセボ群10.2%で差がなかった。再発時に分離された大腸菌87株のST合剤耐性率は予防群63%・プラセボ群19%だった。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Does treatment of vesicoureteric reflux in childhood prevent end-stage renal disease attributable to reflux nephropathy?(Pediatrics・2000)1971〜1998年にオーストラリア・ニュージーランドの透析移植登録へ登録された5〜44歳の末期腎不全患者を年齢別に解析したところ、小児期の膀胱尿管逆流に対する長期抗菌薬・尿管再移植という積極的治療の導入後も、逆流性腎症による末期腎不全の発生率は期待された減少を示さなかった。若年ほど発生率が下がる傾向は診断慣行の変化で調整すると消えた。閲覧 2026-08-24
  4. 4.End-stage reflux nephropathy(Renal Failure・1994)透析・移植プログラムへ入った371例のうち42例(11.3%)が末期逆流性腎症だった。尿路感染の記録があったのは男性18例中4例、女性24例中14例にとどまり、多くは高度の腎機能低下・高血圧・蛋白尿で発見された。42例中35例が高血圧で、うち22例は受診時まで指摘されていなかった。感染の既往が明らかでなくても逆流性腎症は否定できない。閲覧 2026-08-24