組織病理学

組織病理学 · H2-080B

卵巣成熟嚢胞性奇形腫

Teratoma maturum cysticum cysta dermoides ovarii

描出疾患
卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍

🧠 全体像:は、成熟した体細胞組織からなる良性で、皮膚・が優位なため皮様(dermoid cyst)とも呼ばれる。

成立と構成組織

flowchart TD
    A["卵巣生殖細胞"] --> B["単為発生性に体細胞分化"]
    B --> C["外胚葉系組織"]
    B --> D["中胚葉系組織"]
    B --> E["内胚葉系組織"]
    C --> F["皮膚・毛包・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous gland'>脂腺</span>・神経組織"]
    D --> G["骨・軟骨・脂肪"]
    E --> H["気道・消化管・甲状腺組織"]
組織 病理所見
角化 嚢胞壁を被覆し、を形成
毛包・・汗腺 毛髪と性内容の由来
神経・様組織 成熟外胚葉成分
軟骨・骨・脂肪 成熟中胚葉成分
気道・消化管・甲状腺組織 成熟内胚葉成分

は第一減数分裂を終えた単一の生殖細胞に由来する単為発生性腫瘍で、腫瘍組織は宿主の正常組織と異なり近傍多型が一様にホモ接合となる1。すべての確認は必須ではない。成熟組織が異所性に組み合わさることが重要で、内容漏出時には・異物型反応を伴いうる。

臨床

生殖年齢で多く、多くは片側性である。超音波で脂肪、石灰化、毛髪を含むを評価する。無症候で良性らしいは経過観察できる場合があり、症状、増大、診断不確実性、捻転リスクに応じて摘出またはを選ぶ。

主な合併症は(3〜21%)、破裂(1〜4%)による、感染(1〜4%)である。はまれで、報告により0.17〜2%と幅がある23。そのうち扁平上皮癌が約半数を占める。

⚠️ を疑う背景は「閉経後」と「大きい」。 654例の系統的レビューでは、した扁平上皮癌の多くが閉経後患者で腫瘍径10cm超として発見され、病期が上がるほどが有意に悪化した。化学療法・放射線療法の追加は生存改善と関連しなかった4。「成熟」だけを根拠に、年齢・画像・増大をしない。精巣を含むの基本分類は、としての評価は良性を参照する。

まとめ

  • 皮膚、毛包、、毛髪、が典型である。
  • すべてが一切片にそろう必要はない。
  • 捻転、破裂、まれなを臨床背景とともに評価する。

出典

  1. 1.Parthenogenic origin of benign ovarian teratomas(The New England Journal of Medicine・1975)5例の良性嚢胞性奇形腫で染色体バンド分析を行うと、同一患者の正常組織が17か所の動原体近傍多型でヘテロ接合であったのに対し、奇形腫は一様にホモ接合であった。卵巣奇形腫は第一減数分裂後の単一生殖細胞に由来する単為発生性腫瘍である。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Squamous cell carcinoma transformation in mature cystic teratoma of the ovary: a systematic review(BMC Cancer・2019)成熟嚢胞性奇形腫の扁平上皮癌への悪性転化の頻度は既報全体で0.17〜2%と幅がある。扁平上皮癌転移例の5年生存率は病期I期の85.8%からIV期の0%まで病期依存性に低下し、白金製剤ベースの化学療法や子宮全摘が生存と関連した。早期の若年患者では妊孕性温存手術が可能である。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Cystic Teratoma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)成熟嚢胞性奇形腫は成人の全卵巣腫瘍の約20%、小児の卵巣腫瘍のおよそ半数を占め、好発年齢は20〜40歳である。悪性転化は全体で1〜2%に生じ、そのうち扁平上皮癌が50%を占める。合併症の頻度は茎捻転3〜21%、破裂1〜4%、感染1〜4%である。閉経前で5〜6cm未満なら腹腔鏡下嚢胞摘出術で卵巣温存を図り、それを超える病変や閉経後例では付属器切除を選ぶ。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Malignant Transformation of Squamous Cell Carcinoma in Mature Cystic Teratoma of the Ovary: A Systematic Review and Meta-Analysis of Data(Gynecologic and Obstetric Investigation・2025)155研究654例の系統的レビューで、成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化のうち扁平上皮癌が最も多い組織型であり、多くは閉経後で腫瘍径10cm超で発見された。FIGO I期は予後が良く、病期が上がるほど全生存が有意に悪化した。化学療法・放射線療法の追加は生存改善と関連しなかった。閲覧 2026-08-24