組織病理学

組織病理学 · H2-082B

子宮内膜増殖症(異型なし)

Typical simple hyperplasia

疾患
子宮内膜増殖症

🧠 全体像:「」は旧分類名で、現在は(異型なし)(endometrial hyperplasia without atypia)として扱う1。主因はプロゲステロンで拮抗されない持続的エストロゲン刺激である。

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic anovulation'>慢性無排卵</span>・肥満・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exogenous estrogen'>外因性エストロゲン</span>"] --> B["プロゲステロン作用を欠くエストロゲン刺激"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrial gland'>子宮内膜腺</span>の過剰増殖"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic'>嚢胞状</span>に拡張した不整腺管"]
    D --> E["異型なし増殖症"]
    C --> F["細胞異型と腺密集"]
    F --> G["EIN・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical hyperplasia'>異型増殖症</span>"]

「エストロゲンとの両方が過剰」と説明しない。危険因子には、肥満、エストロゲン単独療法、エストロゲン産生などがある。

💡 旧4分類と現行2分類の対応。 旧WHO94分類は腺構築(/複合型)と細胞異型(異型なし/異型あり)を掛け合わせた4群だった。子宮摘出を受けなかった増殖症170例を平均13.4年追跡すると、癌への進展は異型なし122例中2例(1.6%)に対し異型ありでは11例(23%)で(P=0.001)、細胞異型の有無が進展を予測する最も有用な基準だった。構築で細分した1%・複合型3%・異型8%・複合型異型29%という4亜群間の差は傾向にとどまり有意ではなかったが、著者は異型に構築異常が加わる群を特に高リスクの亜群とみている2。国際婦人科病理学会が承認した 2014分類はこれに沿って構築による細分を診断名から外し、良性(異型なし)増殖症と/EINの2群へ整理した。旧「」「複合型」は消えたのではなく、異型なし増殖症の中の構築の記載に相当する(実習・試験では旧名で問われることがある)1。

項目 異型なし増殖症 EIN・
腺 不整・、間質を保つ 腺が密集し、間質が減少
細胞 様で明らかな異型なし 周囲内膜と異なる細胞異型
化生 化生などを伴いうる 化生の有無だけで診断しない
癌リスク 低いが追跡が必要 同時癌・進展リスクが高い
基本治療 原因修正と 原則は;妊孕性温存は厳密管理下

診断と治療

を評価し、適切な内膜採取で異型や併存癌を除外する。生検でと診断された289例を12週以内にした前向き研究では、摘出標本の42.6%にが併存し、その30.9%は筋層浸潤を伴っていた3。異型なし増殖症では放出または経口を用い、組織学的反応を追跡する4。

EIN・ではがである。妊孕性温存または手術不能例では、併存癌を十分に除外したうえで治療と短い間隔の内膜再評価を行う。とのは子宮内膜を参照する。

まとめ

  • 旧「」は現行では異型なし増殖症に含まれる。
  • 原因はである。
  • 異型なしとEIN・で癌リスクと治療が異なる。

出典

  1. 1.New classification system of endometrial hyperplasia WHO 2014 and its clinical implications(Przegląd Menopauzalny (Menopause Review)・2017)WHO94分類は腺の構築の複雑さと核異型により、異型なし増殖症(単純型・複合型)と異型増殖症(単純型・複合型)の4群に分けていた。国際婦人科病理学会が承認したWHO 2014分類はこれを良性増殖症と異型増殖症/子宮内膜上皮内腫瘍(EIN)の2群へ整理し、前癌病変の同定においてWHO94より優れる。異型増殖症から子宮内膜癌への進展リスクは8〜29%と見積もられている。閲覧 2026-08-24
  2. 2.The behavior of endometrial hyperplasia. A long-term study of "untreated" hyperplasia in 170 patients(Cancer・1985)抄録(PubMed)で確認した。子宮摘出を1年以上受けなかった子宮内膜増殖症170例を平均13.4年(1〜26.7年)追跡した研究で、癌へ進展したのは異型なし増殖症122例中2例(1.6%)に対し、異型増殖症では11例(23%)であった(P=0.001)。細胞異型の有無が判別因子であり、癌化の予測に最も有用な基準(the most useful criterion)であること。構築で細分した単純型1%・複合型3%・単純型異型8%・複合型異型29%の差は傾向にとどまり統計学的に有意ではなかったが、異型に構築異常が加わる群は特に高リスクの亜群とみられると著者が述べていること閲覧 2026-08-24
  3. 3.Concurrent endometrial carcinoma in women with a biopsy diagnosis of atypical endometrial hyperplasia: a Gynecologic Oncology Group study(Cancer・2006)生検で異型子宮内膜増殖症と診断され12週以内に子宮全摘を受けた289例の前向きコホートで、摘出標本に子宮内膜癌が併存したのは42.6%(123例)であり、そのうち30.9%が筋層浸潤、10.6%は筋層外側1/2に及んでいた。専門病理医3名による生検再評価では25.6%が異型増殖症未満、29.1%が既に癌と判定され、生検診断の再現性は限られていた。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Management of Endometrial Intraepithelial Neoplasia or Atypical Endometrial Hyperplasia: ACOG Clinical Consensus No. 5(American College of Obstetricians and Gynecologists・2023)EIN/異型子宮内膜増殖症に対しては子宮全摘が根治治療である。妊孕性温存を検討する際は先に子宮内膜癌の存在を除外して過少治療を避ける。手術を行わない場合はプロゲスチン療法(経口・子宮内・併用)と綿密な監視を要し、レボノルゲストレル放出子宮内システムは経口プロゲスチン単独より高い退縮率を示す。周期的投与は持続的経口投与より退縮率が低いと示唆される。閲覧 2026-08-24