組織病理学

組織病理学 · H2-103A

線維腺腫と葉状腫瘍の組織構築による鑑別

Fibroepithelial tumors

描出疾患
良性乳房疾患

🧠 全体像:同じ「腫瘍」でも、とはのレベルで見分けられる。悪性度グレードの詳細は腫瘍(・)に譲り、ここでは「顕微鏡でどう見分けるか」という構築上の着眼点を整理する。

間質増殖パターンの違い

は周囲の間質増殖として始まり、増殖が強まるとをして管内性(intracanalicular)パターンをとる。はこの管内性パターンがさらに誇張され、間質が腔へに突出して「葉状」の構築を作る点で連続的だが区別できる。

着眼点
間質と上皮の関係 上皮をするが裂隙は目立たない 間質が上皮下へに突出し葉状裂隙を作る
密度 疎で均一 不均一で、部分的に濃密な領域を伴いやすい
境界 周囲乳腺組織との境界が明瞭 境界明瞭な例が多いが、一部に浸潤性辺縁を示す
発症年齢層 10代後半〜30歳代に多い よりやや高い年代(40歳前後)に多い。切除確認例の診断時年齢中央値は23.0歳に対し39.0歳1
臨床経過 長期間ゆっくり増大し閉経後退縮 比較的急速に増大することがある

⚠️ 「葉状構築があるかどうか」は連続的な所見であり、小さなではとの区別が難しいことがある1。摘出標本全体で密度・異型・核分裂数・辺縁性状を評価して初めて確定診断できる。

💡 「連続体」という見方には分子側の裏づけもある。 46例中37例(80%)、58例中36例(62%)にMED12変異が見つかり、しかも顕微解剖ではどちらも変異が間質成分に限局していた2。に見える腫瘍の腫瘍性成分は間質側で、上皮はその増殖に対する反応性成分だという理解と合う。ただしMED12変異はのグレードによらずほぼ同頻度(良性83%・80%・悪性77%)なので、鑑別やグレード判定には使えない2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactiferous ducts'>乳管</span>周囲間質の増殖"] --> B["管周性パターン"]
    B --> C["増殖が強まる"]
    C --> D["管内性パターン(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fibroadenoma'>線維腺腫</span>の主体)"]
    D --> E["間質がさらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary'>乳頭状</span>に突出"]
    E --> F["葉状裂隙の形成(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phyllodes tumor'>葉状腫瘍</span>)"]

診断へのアプローチ

臨床的に急速増大する乳房腫瘤や、40歳以降に新規発症した様腫瘤ではを疑い、だけに頼らずで全体構築を評価する。米国乳房外科学会・乳房画像学会の2025年指針も、でが疑われる病変はで完全切除するとしている。一方、で画像・病理が一致し異型のないは、症状・患者希望・増大がなければ切除も画像フォローも不要である3。

まとめ

出典

  1. 1.Fibroadenoma versus phyllodes tumor: a vexing problem revisited!(BMC Cancer・2020)術後病理で確定した線維上皮性病変の連続症例(線維腺腫46例・葉状腫瘍24例)で、診断時年齢の中央値は線維腺腫23.0歳・葉状腫瘍39.0歳、腫瘍径の中央値は線維腺腫2.0 cm・葉状腫瘍5.0 cmであり、葉状腫瘍は線維腺腫より高齢かつ大型で発見される。細胞診で葉状腫瘍を示唆する所見は、大きく開いた折り重なる上皮シート、辺縁がほつれて不整な間質断片、紡錘形の間質細胞核、背景の紡錘形細胞と細胞異型である閲覧 2026-08-24
  2. 2.Frequent MED12 mutations in phyllodes tumours of the breast(British Journal of Cancer・2015)乳腺の葉状腫瘍46例中37例(80%)、線維腺腫58例中36例(62%)にMED12遺伝子変異を認め、葉状腫瘍では良性83%・境界悪性80%・悪性77%とグレードによらず同程度の頻度であった。線維腺腫では管内型75%・複合型67%に対し管周型は40%と有意に低かった。顕微解剖による解析では、葉状腫瘍・線維腺腫のいずれでもMED12変異は間質成分に限局しており、二相性の線維上皮性腫瘍の腫瘍性成分が間質側であることを支持する閲覧 2026-08-24
  3. 3.American Society of Breast Surgeons and Society of Breast Imaging 2025 Guidelines for the Management of Benign Breast Fibroepithelial Lesions(JAMA Surgery・2025)針生検で画像・病理が一致する異型のない線維腺腫は、症状・患者希望・一定の大きさ・経過中の明らかな増大がなければ切除不要で、画像フォローも要さず年齢相応のスクリーニングへ戻してよい。切除する場合は腫瘤を分断せず完全切除する。針生検で葉状腫瘍が疑われる線維上皮性病変は切除生検で完全切除し、良性葉状腫瘍は断端陽性でも再切除不要(腫瘤を分断した場合や残存病変が疑われる場合のみ再切除を考慮)で、切除後の画像フォローも不要閲覧 2026-08-24