Histopathology

Histopathology · H2-095A

漿液性卵巣腫瘍の良性・境界悪性・悪性スペクトラム

Cystadenocarcinoma ovarii

描出疾患
卵巣癌

🧠 全体像:漿液性は、良性(異型増殖性)漿液性腫瘍、)という一連のスペクトラムをなし、上皮の重層化・核異型・構築の複雑化・の有無で段階的に鑑別する。「」という呼称だけでは、どの段階の病変かを区別できない。

鑑別のスペクトラム

flowchart TD
    A["漿液性上皮"] --> B["良性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serous cystadenoma'>漿液性嚢胞腺腫</span>"]
    B -->|"KRAS・BRAF変異の蓄積"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='borderline malignant'>境界悪性</span>(異型増殖性)漿液性腫瘍"]
    C -->|"間質破壊性浸潤の出現"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-grade serous carcinoma'>低異型度漿液性癌</span>"]
    A -->|"TP53変異・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fimbriae (of the uterine tube)'>卵管采</span>STIC経路"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade serous carcinoma, HGSC'>高異型度漿液性癌</span>"]

から段階的に進展する経路(KRAS・BRAF経路)をとることが多く、からTP53異常を介して生じるとは異なる発生経路をたどる。の詳細な発生機序はを参照する。

組織学的鑑別点

所見 良性
上皮の重層化 なし、単層 軽度〜中等度(数層程度) 著明
核異型 軽微 軽度〜中等度 高度(特に型)
構築 単純な乳頭・嚢胞壁 階層的に分枝する乳頭、上皮の出芽 複雑な乳頭・腺管・増殖
なし なし(浸潤がないことが定義) あり
少ない 変動する 多い(特に型)
まれ 存在しうる 存在しうるが単独では診断根拠にならない

⚠️ の定義上の要点は「がないこと」である。細胞異型や乳頭の複雑さだけでと判定せず、浸潤の有無を確認する。標本では内に増殖と、良性壁を残した部分・部分が混在してみられることがある。

卵巣腫瘍・治療への接続

漿液性腫瘍を含む全般の大分類、悪性を示唆する肉眼所見、臨床・治療の接続は卵巣癌(に整理している。は多くが手術(患側付属器摘出、妊孕性温存も選択肢)で管理され、化学療法は浸潤性増殖巣を伴う場合など限られた状況で検討する。の病期・治療・病理を参照する。

まとめ

  • 漿液性は良性・癌・癌のスペクトラムで捉える。
  • の定義上の要点はがないことである。
  • はKRAS・BRAF経路、はTP53・STIC経路と発生経路が異なる。
  • の有無だけで良悪性や予後を判定しない。