脳神経内科・脳神経外科

脳神経内科・脳神経外科 · 01

神経学的診察総論:診察の原則・意識レベル評価(GCS)・頭蓋/脊椎の診察

Neurological examination: general principles, consciousness (GCS), and skull/spine examination

前提:正常
網様体とモノアミン作動系
症状
亀背脊柱側弯症

🧠 全体像:の目的は「病変の有無」ではなく「病変の局在」を決めることにある。意識→頭蓋・脊椎→→脳神経→運動→反射→感覚→小脳、という頭側から尾側・中枢から末梢へ向かう決まった順序で系統的に診察し、左右差を必ず比較することで、末梢神経・脊髄・脳幹・大脳のどのレベルに異常があるかを絞り込む。

このノートは「」PDFを7つのテーマに分けたシリーズの第1回で、・評価・頭蓋/脊椎の診察を扱う。他の回は以下の通り。

回 テーマ
1(本ノート) ・・頭蓋/脊椎の診察
2
3 脳神経の診察(CN I〜XII)
4 運動系の診察
5 反射の診察
6 の診察
7 小脳機能の診察

診察の目的と順序

を終えたとき、以下の4つの問いに答えられる必要がある。

  1. は疑われるか
  2. 疑われるなら、神経系のどの部位が障害されているか
  3. その局在で生じうるは何か
  4. その患者で最も可能性が高い疾患はどれか

💡 の基本原則は必ず左右を比較することである。側に立って診察するのが一般的とされる(右利きなら患者の右側に立つ)。

診察は以下の順序で行う。

flowchart TD
    A["1. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span>"] --> B["2. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='level of consciousness'>意識レベル</span>評価(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Glasgow Coma Scale'>GCS</span>)"]
    B --> C["3. 頭蓋の診察"]
    C --> D["4. 脊椎の診察"]
    D --> E["5. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='meningeal signs'>髄膜刺激徴候</span>"]
    E --> F["6. 脳神経の診察(CN I〜XII)"]
    F --> G["7. 運動系の診察<br>(筋緊張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle wasting (muscle atrophy)'>筋萎縮</span>・筋力)"]
    G --> H["8. 反射の診察<br>(深部反射・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathological reflex'>病的反射</span>・表在反射)"]
    H --> I["9. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory system'>感覚系</span>の診察"]
    I --> J["10. 小脳機能の診察"]
    J --> K["11. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='autonomic nervous system (ANS)'>自律神経系</span>の診察"]
    K --> L["12. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='higher order'>高次</span>脳機能の診察"]

⚠️ 原資料には(項目11)と脳機能(項目12)の具体的な診察手技の記載がなく、小脳機能の評価で本文が終了している。この2項目は本シリーズでは扱わず、他の資料で補うこと。

意識レベルの評価:Glasgow Coma Scale(GCS)

は Glasgow Coma Scale()で評価する。(E)・言語(V)・運動(M)の3項目を採点し合計する(最低3点〜最高15点)。

重症度 合計点 注意点
軽症 13〜15 古典的区分では軽症は14〜15。13を軽症へ含めたのはによる修正で、異論がある
中等症 9〜12 古典的区分では9〜13
重症 3〜8 合計点だけで「重症」と決めず、必ずE・V・Mの内訳を併記する

⚠️ 合計点の三分類だけで重症度を言い切らない。 この3区分は慣用として今も使われるが、2024年のNINDS分類イニシアチブは、各区分の中に損傷程度・治療必要度・予後の大きなばらつきが埋もれるため三分類だけでは不十分としている。は評価の中心であり続けるが、合計点ではなくE・V・Mの内訳で記録し(例:E3V4M6=13)、挿管・眼窩腫脹などで採点できない項目は「評価不能」と明記する。も全例で記録するが、-Pのように合計点へ組み込まず、とは別建てで書く1。

💡 境界の13点はもともと中等症側だった。 古典的区分は軽症14〜15・中等症9〜13であり、13を軽症へ移したのはによる修正である。ペンシルベニア州の外傷登録の解析では、13を中等症に置く古典的モデルの方がの予測能が高く( 0.922 vs 0.908)、適合度も勝っていた2。13点は「軽症の下限」ではなく中等症寄りの境界として扱う。

💡 同じ点数でも年齢で意味が変わる。 米国の外傷データベース539,032例では、年齢を10歳刻みで組み込んで区分し直したの方がをよく予測し( 0.800 vs 0.755)、標準の3〜8/9〜12/13〜15とほぼ一致したのは50歳代だけだった3。高齢者では同じでも転帰は重症側へずれる。

点数 所見
4 自発的に
3 呼びかけで
2 痛み刺激で
1 なし(no response)

点数 所見
5
4 混乱した会話だが質問に答えられる(confused conversation)
3 不適切な単語
2 理解不能な発声
1 なし(no response)

点数 所見
6 命令に従う(obeys command)
5 痛み刺激の局在化ができる(localises pain)
4 痛みからする(withdraws from pain)
3 異常屈曲・
2 異常伸展・
1 反応なし(no response)

頭蓋の診察

  • 触診:瘢痕、腫瘤(血腫)、陥凹、変形の有無、圧痛の有無を確認する。
  • :頭蓋骨折があると左右で音が異なる。まれに「ひび割れた壺」様の濁った音が聞かれることがあり、水頭症を示唆する。
  • :があるとが聴取されることがある。

脊椎の診察

  • :・の消失、、(scoliosis:正中からの偏位、責任椎体を特定する)を評価する。の上を指でなぞると偏位を触知できる。
  • ・:触診と反射ハンマーによるで、圧痛の有無・放散の有無・局在性かかを確認する。
  • ・:・でのを指示し、可動域制限を評価する。

まとめ

  • は「意識→頭蓋・脊椎→→脳神経→運動→反射→感覚→小脳」の順で系統的に行い、必ず左右を比較する。
  • はE・V・Mの合計(3〜15点)でを定量化し、13〜15を軽症、9〜12を中等症、3〜8を重症と分類する。ただし三分類は目安にすぎず、合計点ではなくE3V4M6のように内訳で記録し、瞳孔所見はとは別に書く。13点は中等症寄りの境界、高齢者は同じ点数でも重い側として扱う1。
  • 頭蓋・脊椎の診察では、音の左右差(骨折)や「ひび割れた壺」様の音(水頭症)、脊柱異常(・)を見逃さない。
  • 続く・脳神経・運動・反射・感覚・小脳の診察は次のノート以降で扱う。

出典

  1. 1.Clinical Assessment on Days 1-14 for the Characterization of Traumatic Brain Injury: Recommendations from the 2024 NINDS Traumatic Brain Injury Classification and Nomenclature Initiative Clinical/Symptoms Working Group(Journal of Neurotrauma・2025)GCS合計点による軽症13〜15・中等症9〜12・重症3〜8の三分類は、各区分内の損傷程度・治療必要度・予後のばらつきを見落とすため不十分。GCSは外傷性脳損傷の特徴づけの中心であり続けるが、E・V・Mの内訳を詳細に採点し、評価不能な項目と交絡因子を明記することが必須。瞳孔反応は全例で記録するが、GCS-Pとして統合せずGCSとは別に記録する(NINDS 2024のCBI-M枠組み)閲覧 2026-08-22
  2. 2.Effect of the modified Glasgow Coma Scale score criteria for mild traumatic brain injury on mortality prediction: comparing classic and modified Glasgow Coma Scale score model scores of 13(The Journal of Trauma・2011)GCSの古典的区分は軽症14〜15・中等症9〜13で、13を軽症へ移したのはATLSによる修正。ペンシルベニア州の外傷登録データでは、13を中等症に置く古典的モデルの方が院内死亡の予測能が高く(AUC 0.922 vs 0.908)、適合度も良好だった閲覧 2026-08-22
  3. 3.Incorporating age improves the Glasgow Coma Scale score for predicting mortality from traumatic brain injury(Trauma Surgery & Acute Care Open・2021)米国NTDBの外傷性脳損傷539,032例で、年齢を10歳刻みで組み込んで区分し直したGCSは標準の三分類より院内死亡の予測能が高い(AUC 0.800 vs 0.755)。標準区分(3〜8・9〜12・13〜15)とほぼ一致したのは50歳代のみで、他の年代では区分が大きくずれる閲覧 2026-08-22